第十一幕『提示』
「言ってしまえば、僕らは食事に毒を仕込む事も出来るんです。監視は必要では?」
「……それでその男が目覚めなくても良いのか?」
「魔法と言うのは術者によってかけられるもの。術者より強い力であれば打ち消す事も可能です」
大魔道士と名乗る輩は世界各地にいる。大金を積んでも相殺解除させる事はいくらでも可能なはずだ。例えばあの海神ニコラスも魔法には長けると聞く。条件次第になるが、彼なら話が早い。
「……人命を天秤に載せても、まだ軽いな。俺は別に収穫なく帰島しても良いんだ。適当に見つける事が出来なかったと報告すれば良い」
「貴方は、確か料理が得意だと伺ってますが」
「何の話だ?」
交渉の話ですよ、と僕はコートのポケットから小さな手帳を取り出した。
「先日、海神にある依頼を受けた対価に、僕の血族の残した航海日誌の山を貰いましてね。その中に、僕が読んでもちっとも面白くない記述が並んでいる本がありました。ただ、料理人にとっては興味深い話です。それを訳して纏めた物がコレです」
有体に言えば、それは献立表だ。ただし主な食材は全て保存食で作られると言う献立。そして保存食に関する記述がどんな料理書よりも豊富に記載されていた。それも十数日や数ヶ月と言う時間の保存方法ではない。五年、十年と言う長い期間保存出来る食材の調理方法が記されていたのだ。
「我々のように海洋生活が長い者たちには、欲しい情報だと思いますが?」
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