第十七幕『種明かし』

「マリーベル様が一番気に入っていらした絵です。私はマリーベル様にお願いをして魔法の空間を作って頂きました。侵入者はみなこの絵に触れて、この空間で彷徨い死んで行きます。私はその血液を絵の具に骸骨兵を描き上げました。血液の保存食ですね」


 何を言っているのかさっぱり分からない!どう言う神経の話なんだ?


「じゃあ何でアイツら襲って来たの?」

「命の最期に強い後悔や恨みの念を抱いたからでしょう。負の感情はより強く魂に残ります。ですから、彼らは此処で新たに人を襲い、私に食事と画材を用意してくれたと言う訳ですね」


 俺自身がやっている事は全部棚に上げておくけど、魔族怖い!キャンバスに描いた血は乾くだろうが、命の対価としての価値は失われない、と言う事らしい。


「我々吸血鬼は命の対価として血を飲みます。アナタ方も獣や家畜を殺して命を喰らうでしょう?我々のそれは血液として細分化されているだけです」

「良し、分からん。さっさと支度を済ませてくれ!」


 これ以上の説明は俺の頭が爆発する!


「悪知恵は働く頭なのに、種の法則は理解出来ないのか?」


 ふん、と鼻で笑うメーヴォに苛立ちを覚えたところで反論は出来ないから、その代わりにぶっと頬を膨らませた。そう言う小難しい事は専門外だ!

 棺桶に魔法を掛けたコルネリオスがこれで大丈夫です、と言うのを合図に、レヴが壁の鍵穴に鍵を通した。鍵穴しかなかった壁に線が入り、白い扉が浮かび上がった。鍵を回して扉を押せば、その先に広がっていたのはあの図書室だった。図書室の中央でマルトとジョン、エトワールまで屈んで絵画を眺める後姿に遭遇する。どうやら絵画の中から繋がっていたのは、図書室の入り口だったようだ。


「あれ、船長?」

「なんや?何でそないな所から出て来よったん?」


 振り返った三人が絵画と俺たちを交互に見返す。


「あれ、消えた……絵の中の三人が消えてます」

「あっれーほんまや!」

「何だ何だ!何があったってんだ簡潔に話せ!」


 もう面倒な話はゴメンだ!

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