第八幕『説得』
手に入れた宝の鍵は、本当に俺の手にあるのだろうか、と。思わず口元が緩む。
「この間、エリーを汚されたと見境の無くなったお前を見て、話をしたいと思っただけだ」
その時僕がどんな顔をしていただろうか。自分でも分からない。ただ、随分久しぶりに顔の力が抜けていた事は確かだ。
「……話ねぇ」
「お前の武勇伝と、僕の武勇伝。此処だけの話を腹を割って話し合ってみるのも良いだろう?」
誰にも理解は出来ないだろう。僕らの抱える深い闇は、誰にも理解出来ない。ただ、少しだけ僕らは似た闇を抱えている。闇を取り払うとか肩代わりするなんて事は言わない。ただ少しでも軽くなればと思う。二人で交わす酒を美味くする肴にする事が出来たら、この寝不足も少しは解消するんだろうか。
「お前に深酒をしてもらっても困るし、最近は吸う量が減ってるみたいだが、例の魔薬も、今後すっぱり止めてもらいたい」
体温が欲しいのだろう。冷たく美しいままの女より、醜くも熱のある女が欲しいと、本能的に熱に飢えて女遊びをするし、幻を追いかけて体に良くないモノを吸ったり深酒もする。勝手に寿命を短くしてもらっては困るのだ。
「言っておくが、お前の為じゃない。お前が僕を宝の鍵だと言って必要とするように、僕が目指す宝に辿り着く為に、お前と言う船が必要だからこうしているんだ」
「……言ってくれるねぇ。だったらお前の武勇伝とやら、話してみろよ」
「なら、冷めて不味くなる前に食事だ」
お前は本当に一々うるせぇな、メーヴォママ!と冗談を言うラースの顔に少しだけ明るい光が射した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます