第七幕『結果』
「まず、女装するにも服はどうする」
「金獅子のところで工面してもらえる事になってる」
「……次に、カツラや化粧は」
「それも、金獅子の船の船医がコッチのヒトらしくてな」
左の頬に右手の甲を添えるようにしてやれば、なるほど、と眉間に皺を寄せつつ、メーヴォはうなだれた。
「そのな、社交会に潜入するってのに、大柄な男四人でゾロゾロ行くにも、こう、むさ苦しいし怪しいじゃん。だから誰か一人くらいは女役が欲しいって、言い出したのは金獅子の副船長なんだぜ?」
「で、適役だと僕を指名したんだろう?」
「……ソウデス」
「全く、そんな事だろうと思った」
軽食を食べ終え、メーヴォが伸びをして大きく溜め息を吐いた。
「ラース、作戦の終了後は予定通り即座に出航だな?別の海域でいいから、また少し陸上生活をすると約束してくれ。何度も言うが、技術書の解析と実験は海の上だけでは出来ないんだ」
「お、おう。じゃあやってくれんの?」
「赤石の為だ。今から僕は寝るから、明日金獅子のところに案内してくれ」
「え、今から寝る上に、明日金獅子のところ行くの?何で?」
「僕は何事にも完璧でありたいと思っているんだ。女装するならそれなりの完成度を出さないと、作戦の成功率に影響する。いつものシャツの上にドレスを着るわけにも行かないだろう?」
「……確かに」
「履き慣れない靴を履くなら靴擦れも出来るだろうし、普段と違う環境に慣れる必要があるだろう」
「すっげぇやる気じゃねーか!」
「何度も言わせるな。赤石の為だ」
それじゃあ、おやすみ。と言い残してメーヴォは部屋に戻ってしまった。
「……あ、この腕輪見せるの忘れてた」
ま、後日にしましょうかね。生きて帰れそうですし。俺は盛大に息を吐いて、ソファに突っ伏した。
神様供物様、ありがとう。柄にも無く俺は両手を合わせて天を仰いだ。
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