第十一幕『ひらめき』

 白い床、天井、壁。そこにポツリ、と赤い点を見つけた。ジワリと腹の底が冷えた。


「……おい、そこの赤い点」

「追いつかれたか?」

「可能性あるな。早く次のフロアに続く扉を探そうぜ」

「扉ならありました!けど、あそこまでどうやって行ったらいいんでしょう……」


 此処が最後の騙し絵だと言わんばかりのこのフロア。上下左右に延びる階段の迷路に、メーヴォの思考はほぼ停止状態。目で辿ろうにも入り組んだそこを正確に辿ることは難しい。

 扉は見えていると言うのに、そこまでの最短距離を導き出せない。


「いっそ飛べたら良かったのにな」


 頭を抱えたメーヴォが半ば自棄になったのか、呟いた。


「……それだ、飛べばいいんだ」


 呟いた瞬間、足下に赤い霧が溢れだした。カタカタガシャガシャと音を立てて骸骨の兵隊たちが部屋に溢れ返っていく。目的の扉は一つ。


「鉄鳥!兎に角攻撃を防げ!無茶は承知だ!」


 言った途端にメーヴォの手から赤い閃光が瞬く。赤い霧を吹き飛ばすように爆破を自分の足下手前で起こさせるその度胸がたまらなくカッコいいなお前。一瞬霧は後退するも、すぐにそれは広がって形を成す。次々に襲いかかる骸骨たちに、俺はエリーの銃を引き抜く。


「これはどうだ!」


 連続して撃った氷の弾丸が着弾した先で、一部の霧を氷に閉じこめるように壁を形成する。


「こいつらは絵の具だから水に近い性質ってトコか?」


 有効手段は見えてきたが、コイツらが無尽蔵に沸きだしてくるのであれば魔力の限界が先に来る。その前にあの扉に辿り着かなくちゃ行けないって訳だな。


「メーヴォ、時間稼げ!」

「言われずとも!で、飛ぶ策はあるのか?」


 もちろん、とウインクの一つも飛ばしつつ、俺は先日メーヴォに作らせた特性バングルを右手に着けた。


 上手く行けよ、と半ば念じながら


「イベリーゴ・ヴェンテーゴ!」


と叫んだ。

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