第三幕『作戦決行』
作戦当日。
金獅子が泊まっている宿に出向いて合流すると、そこから実行班の変装を開始する。大体は服と髪型の変更で済むが、そうは行かないのが約一名。ドレスを着るために胸に布を詰めるわ、腰周りにも布を巻くわ。カツラに化粧とやる事は盛り沢山。どう化けていくのか過程を見たかったが、やっぱりダニエル船医に部屋を追い出された。別に良いじゃねぇか知らない仲じゃねぇんだから。
「残念だったなぁラース船長」
角と傷跡を隠し、髪を下ろしたディオニージの旦那が無邪気に笑う。うぅーん、男前ぇ。
「今は宝石商エルク=ヴァレンタインですよ、ディランドの旦那」
「おっと、そうだったな、エルク」
偽名は本当の名前に近いものか、知り合いの名前を使うのが何より覚えやすい。ディオニージの旦那はディランド=ベジャール公爵、アデライド副船長は執事ライト。俺は宝石商として普段から使っているエルク=ヴァレンタインを使う事に決めている。
「ラー……じゃなかった、んっん……エルク様、お待たせしました」
あまり聞き慣れない女の声がする。扉を開けて出て来たのは、緑の長い髪に深紅の瞳の美女。青のドレスが緑の髪と相まって透き通った南の海のようだ。本当に良く化けたな。そこそこ身長のある美女にしか見えない。
「我が愛しのパーヴォ。今日も君は世界一美しいね」
棒読みにも程がある芝居がかった台詞で美女の手を取る。ニコリと微笑む美女がメーヴォだと誰が信じよう。
「エルク様、参りましょうか」
変声薬を飲んで声も変え、完全になりきっている。メーヴォは役にハマり込むタイプのようだ。
「そうだね愛しのパーヴォ。ディランド公、いざ参りましょうか」
おう、と答えた金獅子の旦那の顔が少し引き攣っていた。ちなみにメーヴォが選んだ偽名パーヴォは、自らの手で殺した妹の名前だった。本当にコイツは最高だぜ。
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