第十四幕『下拵え』

 口元に手を当てて神妙な顔をしていたジョンが、よし、と膝を叩いた。手に持っていた小枝で地面にガリガリとメニューを書き連ねていく。それを思わず僕もバラキアも見入っている。メニューの横には必要な食材も書き込まれていく。


「ぃよしっ!献立決定や!食材を片っ端から集めんぞ!」

「よし、急ごう!」


 日も程ほどに高く上った頃、時間は残されていない。悠長にしていたら間に合わない!


「食材調達や!」


 そう言ったジョンを先頭に森の中へ入った。

 トナカイを発見した途端にジョンの指示で爆弾を当てずに衝撃派で気絶させろと指示され、言われたとおりに頭の真上で爆破を起こし、その衝撃派でトナカイを気絶させた。


「下手に傷つけると味が落ちんねん」


 器用にトナカイの手足を縛り指定された北の海岸まで運び、必要な調理器具を船から持って来た調理班二人と合流した頃には、トナカイはあっと言う間に捌かれて肉塊へと変貌していた。


 そんな調子でジョンの指示で僕とバラキア船長は食材狩りに走り回り、調理班の二人が次々と下拵えをしていく流れ作業が出来上がっていた。

 日が西に傾き始めた頃には残っていた三人の調理部隊まで合流し、北の海岸には死弾調理部隊の野営キッチンが展開していた。


「さぁて仕上げや!行くで野郎ども!」


 残り数時間と言うところでジョンの鬨の声が上がると、調理部隊の面々が一斉に仕上げに取りかかった。


 即席で作られた石の釜ではスープがくつくつと煮込まれて、いい匂いが潮風にも負けず海岸に漂っている。トマトと香辛料の香りが食欲をそそる。

 急拵えで作られた調理台の上では、ジョンが何やら魔法を食材に施していた。闇の魔法に長ける彼は、食材を腐敗させる力を持つ。しかし彼はその力で食材を発酵させる。発酵した食材はうま味を増し、栄養素も高くなる物もあるらしい。

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