第十三幕『共鳴』
「気が付いたらエリーは血の海に浮かんでた。エリーが穢れてしまった、って思ったんだけど、実際そんな事なくて、真っ赤に染まった彼女は凄く綺麗だった」
「はぁ……いいな、よく分かる」
自分の顔が緩んでいる。だらしない顔をしているだろうな。僕の方を見たラースが、子供のように破顔した。
「分かってくれる?彼女の死体が凄く綺麗だったの!」
「分かるに決まってるだろ。僕だって、彼女の吹き飛ばした首から吹き出した血がどれ程美しかったか、言い表せない」
ああ、きっと僕も今ラースと同じような、爛々とした目をしているんだろう。
「それから、どうしたんだ?」
「それからな、とりあえずデコの傷はエリーが持ってたバンダナで止血してさ、エリーを海まで運んだんだ。デカイ鍋も調達してさ、彼女の髪を切り落として、死体をバラバラにして、鍋の中にぶち込んで煮詰めたんだ」
「ああ、その話はクラーガ隊の奴らから少し聞いたよ。煮込んだのは首だけじゃなかったのか?」
「全部だ。全部一晩掛けて煮込んだ」
煮融けた肉の中から綺麗になった頭蓋骨を引き上げれば、いつまでも変わらない美しい彼女が手元に残った。手元にエリーを寄せて、その頬骨から顎骨までのラインを愛しそうに撫でるラースの指先が艶かしい。残りの骨も大方取り出して、彼女が着ていたコートで包んで持ち帰ったと言う。
「その骨はどうしたんだ?」
「アジトにエリーの墓を作った。内緒だぜ?」
「何だ、結構律儀なんだな」
うるせぇよ、と笑ったラースの顔に、もう疲れたような影は見えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます