第十二幕『採決』

 そこに待ったをかけたのは勿論ウチの料理長ジョン。そうだ、彼にだってこの話はしていない。


「まってぇぇい!おまっ!旦那!何でそれをワシに教えねぇんじゃい!」


 彼の食事は今のままでも十分美味しいし、この程度の情報なら必要ないと判断していたからだ。ただ、料理人として、自分の知らない調理法があると言う事は、それだけで探求すべき対象になる。それは畑は違えど技術者である自分が良く知っている。


「ご覧のように、ウチの料理長にも教えていない極秘情報です。これを報酬にお渡しします。それなら天秤も傾くでしょう?」

「……魔弾のラースの右腕を名乗るだけある。良いだろう。俺も協力しよう」

「ありがとうございます」


 交渉成立だ。ジョンが騒ぎ立てているが、それを覆うように再びしわがれた声が響く。


『日没までに北の海岸に料理を用意出来るかね?ほっほっほ、楽しみですなぁ』


 戦いの火蓋が切って落とされた。

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