第九幕『敵襲』
自分が息を飲んで動けなかったその瞬間を、鉄鳥は予見していたのか。鉄鳥の羽根が間一髪剣を弾いた。
「ラース!」
メーヴォの叫ぶ声にはっと状況を理解するに至った。
絵画の中に引きずり込まれ、絵画の中の骸骨兵とかち合って、今まさに戦いの火蓋が切って落とされたと言う訳か!何て罠だチクショウ!供物へのお祈りが足りなかったか?これじゃ俺たちが供物になっちまう!
手に武器を取り頭蓋骨に一発撃ち込むも、水に撃ち込んだ時のように手応えが無く、同様に爆弾で攻撃を仕掛けたメーヴォが渋い顔をする。
「なあメーヴォ!何処に逃げたらいいと思うよ!」
「単純に距離を取りたいなら、奴らの向かう先で良いから移動するべきだ」
「あの絵ん中で、コイツ等の向かってく方向に何があったか覚えてるか?」
「真っ黒に塗られていて、何もありませんでしたよ!」
「……城?」
ぽつり、とメーヴォが何かを鸚鵡返しした。
「……城だ。城があったと鉄鳥が見ていた!」
「よし、兎に角コイツ等の進行方向に走れ!」
走れ、と口にして初めて自分の足が床を踏んでいることに気が付いた。鉄鳥がふわりとメーヴォから離れ、殿にと骸骨兵の剣戟を防いでいる今の内だ。
走って走って、真っ白な空間に変化が訪れたのは程なくの事だった。赤い色が滲んできたのと同様に、足下に黒い霧が漂い始め、それは足下から這い上がるように視界に広がり始めた。どんどん視界は暗闇に覆われていく。
「鉄鳥!殿は良い。今度は明かりだ!」
びゅうっと風が鳴く音と共に、鉄鳥の平べったい羽根が発光する。暗闇の中を照らし出す一筋の光を頼りに、俺たちは走り続けた。
「……もう、無理だ」
「ひ、はぁ、はぁ」
「おいおい、だらしねぇなぁ」
メーヴォとレヴの足取りが重くなった頃、ようやく俺たちはその城とやらの扉を見つけだした。おおよその想像は付くだろうが、またしても扉に鍵がかかっている。
そろそろ本命が来ても良い頃合いだろ?レヴに視線で訴え、金の鍵を使わせると、鍵穴に吸い込まれるようにそれは軽い音を立てて開鍵した。
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