第七幕『実験』

 捕虜を確保したその五日後には、無事に虎鯨を捕らえ、そして各班の捕虜を使った人体実験が始まった。


 筏の上で行われる虎鯨の解体。捌く事は問題なく終わった。それを使用した料理が捕虜に振舞われ、まず二人が中毒症状を起こして早速新しい解毒薬を試されていた。内一人は甲斐なくあっけなく逝った。


「体力的な問題はともかく、あの症状は拒絶反応でした。彼の体に虎鯨と合わない体質的な物があったと考えるべきですね」

「何や、虎鯨ってのは厄介なヤツやのう」

「彼らが食べていた部位は分かりますか?」

「死んだ奴等に食わせたのは卵巣やったな」

「ではそこに拒絶反応を起こさせる毒があったと考えるべきですかね」

「せやな。他の奴等はピンピンしとるワケやし」


 さて次は何処の部位を調理して食べさせようか、と意気込むジョンを前に、捕虜たちはみな絶望に打ちひしがれる。


「大丈夫、皆さんの命は無駄に落とさせません。虎鯨の完璧な解毒剤を作るまでは、付き合ってもらいますからね」


 にこりと笑う船医マルトの目が、薬が完成したら用済み、と暗に訴えていて彼らの希望を儚くも打ち砕いた。

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