第十六幕『次の目標』

 昼近くなって起きたラースに起き抜けの水を手渡し、昼食に誘い出して今後の予定について進言した。


「魔法石を触媒に使用した魔法の原理は何となく分かるか?」


 そう切り出した時点でラースが、ん?と目を丸くしたので、掻い摘んだ話をしながら昼食を食べた。


 魔法使いたちが僅かな魔力で強大な魔法を使用するのは、魔力を増幅する作用を持つ魔法石を触媒に使用するからであって、元来魔法とは術者の命を削って発動される奇跡であること。


「お前の持つ魔法銃も、内部に魔力を増幅させる水晶が入っている。エリーの銃は氷水晶。此処までは良いな?」

「俺らが便利な魔法を手軽に使えるのは、希少で高価な魔法石のおかげって事は大体理解した」


 この調子では大した原理も理解せぬまま、単に無駄撃ち出来る便利な銃程度の認識で居たに違いない。いや、その頭だったからこそ、僕と言う技術者を切望したのだろうけれど。溜息を一つ、食事と一緒に飲み下して、僕は話を続ける。


「例の技術書を解読して、魔法石を使わずとも、ごく有り触れた宝石でも魔法石と同等、もしくはそれ以上の効果を得られる認証実験に成功した」

「え、つまり?え?普通の宝石で魔法使えるって事?」

「そう言う事だ。ただし純度や大きさ、小さいものなら数がなければ、相応の効果しか期待出来ない」

「お、おぉ?……凄くね?それ。凄い事じゃねぇの?魔法石に比べたら、宝石なんて全然やっすいだろ!」

「確かに価値としては三倍から五倍は違う。だが言ってるだろう?相応の大きさや純度、数が必要だ。魔法石のように魔力を増幅させるような効果は薄いにしろ、魔力をより純度を保ったまま発動させようとすれば、それなりの土地の力を宿した宝石が必要に……」

「あぁーあー分かったわかった!難しい事は置いといて、次のお宝は大降りの宝石って事か……へっへっへ。コイツは楽しくなってきたぜ」


 半ば強制的に講義を終了させられたが、そう言う事だと話題を締めて、僕はフォークとナイフを置いた。

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