第十幕『脅迫』
『残念だったのぅ、その男は悪魔の身代わりに眠りに就いた。もう二度と目覚める事は無かろう』
「ふざけるな!この森を焼き尽くされたくなければさっさと魔法を解け!」
思わず叫んでいた。鬼の形相をしていたのだろう、バラキア船長が引く気配を感じた。
『おお、見ろその破壊衝動に燃える瞳を。この私に穢れを植え付けた悪魔たちの瞳よ。おそろしや恐ろしや。あの時全ての異界人を滅ぼして置かなかったのが仇となったわい』
「聞こえなかったか!僕は今すぐにでもこの森を焼き払う事だって出来るんだぞ!」
言ってラースを傍らに横たえ、川辺の草むらに最近開発したばかりの新型の延焼弾に火を着けて放る。ドゥバン!と轟音を轟かせ、草むらは抉れて焦土と化し、飛び散った火球が辺りを火の海に変える。
『ひぃ、何と恐ろしい。その膨大な力で全てを破壊し尽くすのが、貴様ら蝕の瞳の民よ……』
「御託はいい!さあ早くしろ!」
『……よろしい、ならば取引をしよう』
「悠長に構えるな。僕は今すぐに魔法を解けと言っているんだ!」
「待って下さいメーヴォさん。此処は相手の交渉を受けましょう。このままヤツを始末しても、魔法が解けるとは限りません」
ホッホッホ、と梟の高笑いのような声が一帯に響く。それが僕の神経を逆撫でして腹立たしい。頭に上った血が吹き出しそうだ。
『そちらの海賊は利口だな。では私の条件だ。そこに居るのは料理人だな?私に食事を作ってくれ。最後の晩餐だ。この島で食える最高のものを用意して来い。それでその男の眠りを解放しよう』
なんて条件だ?面倒くさい条件を出して来る。
「バラキア船長。アナタはヤツについて調査している。間違いありませんね」
「……協力しろと?」
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