第六話『海賊と孔雀の君1』

第一幕『副船長語りき』

 半年ほど前に船長が拾ってきた技術者は言ってしまえば我侭で、船長と良く似ていた。良くも悪くもリーダー的カリスマを持ち合わせた人物で、乗船の翌日には勝手に船員を使って船内の掃除を始め、三日後には船はピカピカ。大砲と不調気味だった船長の魔銃を修復していた。


 更に船内の浄化活動は徹底的に進められ、常時の深酒禁止と過剰喫煙の禁止、魔薬(魔法薬の幻覚薬で体に悪い)の撤廃。その他、規則正しい生活習慣の徹底、掃除の徹底、身なりをキチンと整えろとか、海軍張りの船内浄化が提案された。


 もちろん船長を含む幾人かの水夫たちが反対意見を出したのだが、船医と料理長がそれに賛同して多数決となり、思うところもあったのか多くの水夫が技術者に就いて、ヴィカーリオ海賊団はならず者の集まりから、戒律を持った組織として生まれ変わったのである。そして現在に至るまで、ヴィカーリオ海賊団は何とも健康的に海賊行為を続けている。お宝の入手に一役買ったりと、副船長の私を置き去りにして船長と技術者はあちこちで快進撃を繰り広げた。


 先日の旅客船の襲撃では誰よりも沢山、誰よりも楽しそうに人を殺していた。誰よりも狂人で、誰よりも船長と波長が合う男。技術者で元殺人鬼、爆弾魔の異名を持つメーヴォ=クラーガは、その冷静な性格と的確な判断力に、すっかり船内でも信頼の置ける仲間になっていた。

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