第122話



電力会社の買収の翌年には東京の新本社が誕生した。


本社機能は、地方に続々完成する予定の都市に分散するつもりなので、グランドオープンではないのだが。


場所は川崎である。




選定場所のポイントは新幹線が近くに止まって、ある程度の場所が確保できると言う点だ。




完成した本社ビルは新駅DAYS HD前駅直結で、開発規模でいうと東京駅周辺のおよそ四倍。5年弱でよくここまで完成したものである。

とんでもない数の人口の流入が見込まれており、周辺は空前の好景気にさらに沸き立つ。



建築資材は工法はゼロエミッションの最新型で、ビルの運営自体もゼロエミッションで行われるようになっている。


耐震構造もかなり良くできており、年が経ち、新たな耐震技術が開発された時はすぐに交換できるようになっているという御都合主義スタイルだ。


地震、火事、水害など様々なものを想定しており、万が一の災害の時には新本社ビルに25万人、新本社ビルエリアで150万人が半年間生活できるようになっている。


今年のプリツカー賞はおそらくこのビルが受賞するだろうとはある有力筋の情報だ。






この再開発された川崎エリアは、別名霧島村と言われている。


東京駅まわりの丸の内エリアがナントカ菱村と呼ばれていることに対抗して誰かが言い始めたのだろう。






確かにこの本社ビルを含め、近隣のビルは9割がDAYSホールディングスの持ち物で、グループ関連企業がテナントの大半を占める。


しかし二番煎じではなくもう少しひねりを効かせた名前にしてほしいものだ。






そうそう、最近鉄道会社も設立した。


区間はDAYS前~羽田空港間と、DAYS前~成田空港間。

そして海の上を通る羽田~成田間。

つまり環状線にしてみた。


停車駅の中に東京駅と千葉駅も入れているのでアクセスはばっちりだ。


最近うちから開発された浮遊式リニアの試験運転も兼ねてある。


これがうまくいけば、各都市のDAYS本社を結ぶリニアモーターカー構想が実現する。




鉄道会社に新規参入ということで、各種の許可が下りにくかったがなんとか下ろさせた。あくまでも正式な手段で。


新駅に、企業誘致にと色んな要素が絡み、周辺の地価は開発開始前と比べて140倍まで跳ね上がったらしい。

銀座の一等地とほぼ同じ価格である。

我がDAYS HDは計画開始前からこっそりと土地を買いあさっていたため、地価が上がる前には必要なすべての用地を取得していた。


面積にして1000ヘクタール。

関西国際空港と同じくらいの広さだ。


土地取得のしたたかさはもはや霧島家のお家芸である。





「いよいよ完成したなあ。」




「長いっちゃ長かったね。」




「うん、長いっちゃ長かった。」




「もう準備できた?」




「うん、完璧!」




「じゃあいきましょ。」




「よし。」




今日は新本社完成のパーティだ。


本社ビルの別館に入っているHOTEL DAYSの最上位ブランドホテルの大宴会場で行われる。




あきらが、DAYSの代表として表に顔を出すのはこれが初めてとなるため、マスコミ各社から取材申し込みが殺到した。


しかしそれらは全て排除。


そして出席者に関してもカメラ類は一切持ち込み禁止という徹底ぶり。


マスコミ嫌いが徹底している。




パーティーでは、久々に全員揃ったDAYS取締役連中も招待した関連会社のみんなも楽しんでくれていたようだ。






自分はというと、これまでやってきたことがこのような形で世に出せたことでなんとなく感無量だった。




「あきらくんお疲れ様。」




こういう時にいつもそばにいてくれるのはひとみだ。




「ひとみ。」




「今どんな気持ち?なんか感慨深そうだったけど。」




「まさにそんな感じ。」




「なに言ってんのよ。これからでしょ?」




「え?」




「もしかして各都市の竣工パーティーで毎回感無量ですってやるつもり?」




「あ、そうか。」




「あきらくんはまだまだこんなところで止まるような人じゃないでしょ?」




「そ、そうなのか?」




「そうよ!ほら、挨拶行くよ!」




「ついていきまーす。」




センチな気分はこれくらいにして、また挨拶周りが始まった。






パーティーが終わると見知った仲間で二次会だ。


貸切でホテルのバーを抑えてある。




ちなみにこのホテルにはバーが7つあるため、1つくらい貸切にしたところで文句を言う人はいない。






「霧島、お疲れ様!」




「霧島くん、おつかれ様。」




「ブラザー、ナイスだったぜ。」




などなど、仲間から様々な労いの言葉をかけられる。


皆思い思いに交流するその中にはひとみの両親や、うちの両親もおり、気持ちよさそうに両家の親交をあたためていた。






「俺もしかして引退するのかな?」


なんとなく思ったことをひとみに聞いてみる。




「なんで?」


心底不思議そうな顔で首を傾げられる。




「なんかみんなから労われてて、引退するみたいな雰囲気じゃん?」




「そんなことないよ。むしろ今からよ。」


ひとみは苦笑い気味で言った。




「そうなの?」




「そうそう。むしろこれからもどんどん周りを忙しくしてあげてね。」




「よし!任せとけ!」




「ほどほどで頼むな。」


清水はらあんまり忙しいのは嫌らしい。




「お前には一番忙しい仕事を頼もう。」




「そりゃなかろう。」


久々の博多弁が出るほど嫌なようだ。






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現在、こちらの作品と少し重なる部分もある作品を準備中です。

もしお楽しみいただけたら嬉しく思います。


作品公開しましたらタイトル・URLを記載しますので

ぜひ楽しみにお待ちください。

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