第5話

翌日、また学校で授業を受けていた霧島は、腕のロレックスを気にしつつも、幸運の時計の実力を試してみたいと思っていた。




ふと財布を見ると一万円札が1枚だけ入っており、霧島は思いついた。




「よしギャンブルだ。」


向かった先はパチンコ店。


大学一年の時、たまたま入学式で知り合った学生に連れられ、しこたま通った思い出がある。あまりいい思い出ではない。私自身も大学デビューの喫煙者のためタバコの匂いは気にならないが、金が紙くずのように吸い込まれていき、それが帰ってくることは滅多にない。




昨日の飯代と思えばかなり安いものだと思い、午前中の授業が終わるとパチンコ店にいってみた。




店に着くと、相変わらずうるさいなぁと思いながらパチンコ台を物色する霧島。


霧島はスロットも打つことができるが、ここ最近全くパチンコ屋に来ておらず最近の台の打ち方がわからないため、球を打つだけというシンプルなパチンコを打つことに決めていた。




なんとなくこれかなと思う台があった。


物は試しとばかりに、なけなしの一万円札を投入し、打ち始めること数分。


早速大当たりを引いた。




お、幸先良いななどと思いつつ、打ち続ける。




大当たり、大当たり、大当たり、大当たり。


途切れることなく当たり続けていく。


投資はまだ一万円のうち500円しか使っていない。


この辺りで私はまだ腕時計のことを疑っていた。




「ロレックスだからと思ってつけてたけど、その効果もしかして本物とか?


いやいや、まさかね。


たぶん、こんなに出したらこの店に来ることはもうできないだろうからこのまま出せるだけ出しちゃえ!」





結局、私は閉店まで打ち続けた。途中店員が不正を疑い、なんどもやってきて台をチェックしたがなんの異常もない。異常がないため、客を止めることもできない。球は出続けている。それを見に客も大勢来ており、普段では考えられないほど店も盛況だったみたいだ。そのこともあり、店員は彼を止めなかったのかもしれない。




最終的に私は25万発ほど出して閉店を迎え、最終的に換金したところで90万円ほど手に入れた。



「とんでもねぇな、この腕時計……

いや、私がバカヅキしただけか?」





あまりにも突然に大金を得てしまった私は使うことが怖くなり、10万円を残して全て貯金し、少しばかり豪華な夕飯を楽しんだ。




家に帰り、寝床についた私は

このお金を元手にもっと大きなことをやってみたいと考えていた。






次の日、大学の授業は昼過ぎで終わりのため、霧島はバイト先に連絡し、とりあえず、週に4日入っていたバイトのシフトを減らした。




塾講師のバイトだが、シフトの融通がききやすいと思い始めたが、今から何かをやるのに週に4日も潰されるのは厳しいと思ったからだ。


教室長に「(パチンコで儲かったので)新しい(儲かりそうな)ことをやってみたい」事情をフェイクを交えて話すと、協力してくれるということで、とりあえず今週いっぱいは日にちが空いた。





その空いた時間で、まず私は眠っていたネットの証券会社の口座を起こした。



大学はいりたての頃、バイトを始めるにあたって、口座を開設したがその時に勧められるがまま証券口座も開いていたのだ。で、せっかく講座もあることだしということで株式の売買をしてみることにした。


このルールだったりやり方を覚えるのが一番めんどくさかったのだが、なんとか売り買いはできるといえるレベルに習熟した。




「よし、これからだな。」

私は内心でそう思った。



私は昨日の80万円をそのネット口座に送金し、勝負ができる体制を整えた。




株のことは何にもわからなかったので、勘に任せて、80万円分一社の新興のインターネット会社の株を買った。






他にもたくさん良さそうな会社は見つけはしたのだが、なんとなく思いとどまって、株を買うことはしなかった。





よくよく考えて見るともっと分散して買えばよかったかな…とも思ったが、勘がそうしろと言っていたのだからという、誰に対してなのかよくわからない言い訳をして、梅田まで買い物に行くことにした。






「せっかく得たあぶく銭なんだからパーっと使うか」

ということで昨日の食事代の残りを握りしめてお出かけをしようと思い立った。





私の根っこは小心者なので、中途半端に大きな金を使うことに慣れていない。


なので、これから季節向けての、服を買って、充足感を得ようとしたのだ。


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