第118話
「霧島くん、そろそろ事務所が手狭だよ。」
「え、本当に?」
そう切り出してきたのはマミちゃんだ。
大阪本社の支社長をしている。
主に人材面での功績からグループの持株会社の役員も兼任している。
物はついでなので、最近株主や利害関係者に宛てて送られた文書を抜粋して紹介しよう。
この度、グループ全体を統括する持株会社はDAYS HDに社名変更をいたしました。
それに伴う新体制での役員は以下の通りです。
* [ ]内は兼職。
代表取締役 社長 霧島あきら [(株)DAYS 代表取締役 社長]
※事業会社 株式会社DAYS代表取締役社長と兼職致します。
専務取締役(人材・海外事業部) 霧島ひとみ
常務取締役 清水 隆一[清水グループ CEO]
常務取締役 Daniel Whitewood [D&Sグループ CEO]
常務取締役 中村 義秀 [(株)ナカムラ CEO]
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取締役執行役員 加藤 まみ[DAYS 大阪支社長]
この新体制の施行により、従来は別会社であった四社が統合されました。
この四社の合併により、社内構造の単純化を図り、グループ全体の活性化と迅速な行動を目指します。
なお、この合併によりDAYS HDは全世界で社員数約25万人、連結売上高は260兆円を超えます。
さらにもう1つ上のステップへ。
我々は新たな挑戦に立ち向かい続けます。
ということだ。
これまでは色々と肩書きが長かったが、今ではDAYS HDの社長と基幹会社のDAYSの社長を兼務するのみである。
事務所が手狭だよと報告をしてくれたまみちゃんもめでたく役員になった。
自分も初めて知ったが、社員数25万人はやべえ。
連結売上高260兆って、財閥かよ。
そりゃ25万人も、日本だけで10万人弱いれば手狭にもなる。
ということで本社機能を分散させて、まず東京と大阪にビルを買うことにした。
「いいビルないなぁ。作るか。」
「そうしましょう。」
「やったぁ!」
こうして始まった本社ビル計画は、いつの間にか日本を代表する一大プロジェクトになっていた。
東京と大阪のつもりが、札幌、仙台、横浜、名古屋、広島、福岡の6都市も加わり、さらに、その周辺の都市もサテライトオフィス街を建設。
オフィスビルを購入するだけのつもりが、湯水のごとく投入される資金により、オフィス都市を作る計画に早変わり。
各都市のDAYS HD本社はビルだけで8都市合計2.2兆円を費やされ、オフィス都市全体の最終的な総工費は8都市合計で52兆円規模の工事となった。
もちろんこの金額は一度に払うわけでは無く、今から数年から数十年をかけて徐々に支払ってゆく。
この工事のおかげで、グループ企業内の不動産デベロッパーDAYS Realestateは名実共に世界ナンバーワンの不動産デベロッパーの地位を獲得した。
元請のDAYS architectは世界最大の建設会社となった。
これから数十年の時間をかけて日本全体に数十兆円の金が落とされていく。
経済はさらに好転していく。
まみちゃんにビルを買おうといったその時にはまさかそのようなことになるとは、誰も予期していない。
「じゃあ今手狭なら、本社が完成するまでは仮の場所が必要だよね。」
「あるとありがたいね。」
「じゃあ用意しまーす。」
ということでエマに相談だ。
「オフィスが手狭になってきたとのことなので、オフィスって用意できますか?」
「すでに用意してございます。」
「はやっ!」
「今のオフィスが手狭になることはわかっておりましたので、タイミングを見計らって用意しておりました。」
ちょうどマカオに来た時に話してみるとそんな返答があった。
いつもの表情と変わらないが、どことなくドヤ感が漏れ出ている。
声色も褒めて欲しそうな感じだ。
「ありがとう、エマ。
いつも助かってるよ。」
「ひ、秘書として、当然のことですからッ!」
褒められたのが嬉しいのか、鼻が伸びすぎてまるで天狗のようなエマ。
「いつもありがとう。これからもよろしくね。」
「もちろんです。」
ちなみに、この労いがのちの52兆円規模の工事発注につながる。
そう、全てはエマが張り切りすぎたのだ。
「ちなみに用意してくれてるとこってどこなの?」
「グランフロント大阪です。」
「いや、そこは今あるとこでしょ?」
「はい、引越しの手間を考えると近くの方が良いと思いましたので、現在のフロアから上下3フロアずつをオフィス用に改装いたしました。」
「知らなかった…!」
「サプライズ成功ですね。」
「いや、サプライズだけど…。」
「でしたらすぐにそのように手配いたします。」
「お願いします。」
オフィスのことのほかにもいろんなことを話し合う。
また、グループの社長としていろんなことの判断を仰がれる。
そうこうしているうちに主な決済事項や打ち合わせが終わりそろそろ帰る頃となったので、空港に向かう。
向かう車はAMG GTRだ。
助手席にはエマを載せているので、空港に乗り捨てすることができる。
いつものプライベートジェットで快適な空の旅を楽しみ、日本に帰国してから新オフィスのことをまみちゃんに伝える。
「今のフロアの から上下3つもオフィスとして用意してくれたよ。」
「仕事早っ!」
「前々から用意していたらしい。」
「私でも気づかなかったよ…。」
「俺も知らなかった。」
「でも、またこれで沢山の人が雇えるね!」
「お願いします。」
「任せて!」
まみちゃんの人を見る目はすごかった。
まみちゃんの功績によって、この数年後にコンサルティングファームが設立される。
そのコンサルティングファームに依頼をすれば解決しない問題はないと言われるほどの頭脳集団に成長する。このことからDAYS大阪本社ビルは世界最高の頭脳が集まる場所と呼ばれることになるのはまた別の話。
まみちゃんに新オフィスのことを伝えると、今日の車である、アストンマーチンヴァルキリーに乗り込む。
見送りに来ていたまみちゃんがそのことに気づく。
「霧島くん…。
またすごい車だね…。」
「この前ガムボールっていういかれたイベントに出たからね。」
「なるほど。気をつけて帰るんだよ?」
「はーい。」
ヴァルキリーの爆音を残しながら家へと急ぐ。
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現在、こちらの作品と少し重なる部分もある作品を準備中です。
もしお楽しみいただけたら嬉しく思います。
作品公開しましたらタイトル・URLを記載しますので
ぜひ楽しみにお待ちください。
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