第119話 霧島 卒業する

「そろそろ卒業だねぇ。」


怒涛のような日々も三年が過ぎ、気づけば卒業も目前といった時期になっていた。

阪大が誇る三賢人といわれた我々もいよいよ卒業だ。


知の霧島。

力の清水。

美の結城。


こんな言われ方をするようになったのもいつからだろうか。

美の結城は分かる。

力の清水ってなんだ。

あいつそんな悪いことしてたのか?


まぁそんなことは置いておいて。


日々増える資産を眺めて一喜一憂していたころが懐かしい。

資産もここまで増えると何の感慨もわかなくなってしまう。


いくらたくさんお金があってもすることがない。

今していることといえば、研究チームに入って実験を手伝ったり、

決済が必要な書類に判を押したり。


正直自分が本当にやりたいことなのかどうかあいまいになってきた。


もちろん毎日楽しいのは間違いない。

毎日楽しいんだけど、なんかもっとでっけぇことやりてぇな。


「よし、きめた。」


「あら、何を?」


「ちょっとでっけぇことやってみるわ。」


「あらたのしみ。」


ここから私はひそかにある計画をスタートさせた。




そうしてしばらくの月日が流れいよいよやってきた卒業の日。


「以上を持って、卒業のあいさつとさせていただきます。

卒業生代表 霧島あきら。」



会場は万雷の拍手に包まれ、中には涙する人もいた。

主に中村さんとダニエルとエマだけど。





「いやぁいいスピーチだった。」

ダニエルはこの頃になると日本語話者といわれても違和感ないくらい日本語を話すようになっていた。

ほぼネイティブレベルである。

最近覚えた日本語はジッポライターの石ってどこにありますか?らしい。

ライター着火に使用する石が切れて探しているとき難儀したとのこと。



「そういえばあきらくん、ちょっと前に言ってたよね?」


「ん?」


「なんかでっけえことやるって。」


「あぁ、あれね。ちゃんと動いてるよ。」


「まだ教えてくれないの?」


「うんまだ秘密~」


「気になるなぁ~、教えてほしいなぁ~」


「俺も言いたくてうずうずしてるけどまだ秘密~」


「ちぇ~」



そんなことしていると卒業式が終わった。


「何かあっという間だったね」


「確かに。」


「入学したときはさ、まさか卒業するときには外資企業の役員なんかやってると思わなかったよ。」


「俺なんか社長だぜ。」


「びっくりだよねぇ。」


卒業式の後はみんなで食事会をすることになっていたので

ゼミのみんなに軽く挨拶して大学を辞した。


今日の車はアストンマーチンヴァルキリーだ。

最後なので、爆音をまき散らして、ガルウィングのドアを開けた状態で駐車場を出ていった。





~~~~~~~とある生徒side~~~~~~~~~~



阪大には有名な先輩が三人いる。

もはや名物みたいになっている。


まずは力の清水。

傍若無人とはまさにこの日とのことを言う。

別に悪い人とかそういうことじゃないんだけど、週刊誌記者とやりあっているのを見た生徒がいて、その時の態度がすごかったらしい。

友達には易しいらしい。


続いて知の霧島。

複数の言語を操り、休み時間にはフランス語や英語で電話をしている。

噂では5か国語をマスターしているらしい。

大学生でありながらも複数の会社を経営し、見たこともない外車で学校に来る。

おしゃれでイケメン、背も高い。

神は死んだ。


そして美の結城。

悔しいことに霧島の奥さんだ。

学生結婚を果たした。

その美しさたるや聖母。

優しさや美貌からファンも多い。

左手薬指の結婚指輪を見るたびに心のなんか変な扉が開いてしまいそうになる。


この有名人が今日阪大を卒業する。

なんか名物がなくなってしまった阪大はちょっと寂しくなってしまいそうだ。

いるときは騒がしいなと思っていたけどいなくなるといわれると寂しい。

僕はあまのじゃくなんだろうか。


卒業式が終わると講堂から霧島さんたちが出てきた。


ものすごい歓声だ。

今日の霧島さんは黒のロングコートに花紺のスーツを着ていて、

カシミヤの白いストールを首から垂らしてレザーのグローブをしている。

今日もかっこいいぜ・・・。


隣のひとみさんは霧島さんに寄り添って聖母のほほえみを振りまいている。

清水さんは後輩の舎弟?みたいな人から大きな花束を受け取って肩に担いでいる。


声をかけた人に霧島さんたちも一言二言挨拶を返して、駐車場に消えていった。


なんか一つの時代が終わった感じするなぁ。



今日も駐車場から霧島さんたちの爆音が遠ざかっていく。




~~~~~~~~~霧島side~~~~~~~~


「会場もう抑えてんの?」


「もちろん。うちのホテルだけど。」


この度めでたく我々DAYSも大阪にホテルをオープンした。

もちろん東京にも開業はしている。

例に漏れずグループ最高級ブランドのホテルなので1泊400万円からとなっております。


その大宴会場を借り切ってある。

題して霧島あきら・ひとみ卒業記念パーティー。

参列者は1500人を予定している。


海外の政治家とかも来るらしいよ。

エマがローマ法王からビデオメッセージもらえましたとか言ってたし。


相変わらず祝い事に関しては他の追随を許さないというか。

もちろん霧島本家からもほとんど全員が参加する。

結城本家からもとんでもない数の人が参加する。

完全に身内のパーティーのつもりだったのだが全くえらい規模だ。



「じゃあ、しっかりお祝いしてきますか!」


「頑張りましょ~!」






~~~~~~~~~~~~~~

現在、こちらの作品と少し重なる部分もある作品を準備中です。

もしお楽しみいただけたら嬉しく思います。


作品公開しましたらタイトル・URLを記載しますので

ぜひ楽しみにお待ちください。

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