第120話
阪大の駐車場に爆音を残して我々はパーティー会場のホテルに到着した。
本日の霧島家の車はアストンマーチンヴァルキリーだ。
相変わらずほぼレースカーなので爆音がすごい。
道行く人はみんな振り返っていた。
ちなみに清水の車はフェラーリF8トリビュートだ。
こういう時に映える車なのはフェラーリだと思う。
清水はやはり買い物の仕方がうまい。
「そういえば清水、誰か迎えに行くって言ってたけどどこ行くんだろうね?」
「さ、さぁ?」
どことなくひとみの目が泳いでいる気がする。
「ふぅん・・・」
~~~~~~清水side~~~~~~
「おまたせ!」
「ううん、全然!
あいかわらずすごい車だねぇ。」
「普段は乗っとらんちゃけど今日は卒業式やし、あきらもわけわからん車で来るって言うとったけんさ。」
「じゃあしょうがないか。」
「そうそう、しょうがないっちゃん。」
俺はまみちゃんを迎えに来ていた。
場所はグランフロント大阪。
まみちゃんはあれからしばらくして霧島の会社に就職した。
霧島の会社というか俺の会社というか。
俺たちはすべての会社を統合して新しくDAYS HDという持ち株会社という運命共同体を設立した。
なので霧島の会社というか俺の会社というか、ダニエルの会社というか中村さんの会社というか、皆の会社といった方がしっくりくる。
まみちゃんは持ち前の明るさと効率の良さ、人当たりの良さ仕事の速さであっという間に大阪本社の支社長に上り詰め、次の人事では役員になることが内示されている。
「今日忙しいのにありがとうね。」
「いやもはやこれは会社の行事でしょ。
社長以下役員皆いて、海外の政治家来て、日本の政治家も挨拶に来て。
今日本の大企業のほとんどはDAYSの息がかかってるって言われてるんだよ?」
「確かに言われてみたらそうかも。」
「だけん気にせんどって。」
「最近博多弁移ってきた?」
「そうかもわからん。」
「あ、ついた。」
「いつ見てもすごい外観だよね~。」
「あきらたち先に中の控室入ってるってさ。」
「は~い。」
~~~~~~霧島side~~~~~~
「お、清水ついたって。
車地下駐に入れてるみたい。」
「よかったよかった。ちゃんと間に合ったね。」
「せっかくの晴れ舞台だもんな。間に合わないと悲しいよな。」
私たちも車を地下の役員専用駐車場に止め、
中の控室にちょうど入ってきたところだった。
役員駐車場は一般のホテルの駐車場のさらに地下にあり、
ほぼほぼ私物化されている。
公私混同良くない。
※なのでちゃんと契約して自腹で区画を買いました。
控室でひとみとお茶しながらパーティーの開始を待とうかといったところで清水が合流してきた。
「お待たせ!」
今日の清水はゴッドファーザーみたいな格好だ。
なんかキラキラ大学生というよりギラギラ若頭といった方がしっくりくる。
「来ちゃった!」
「おぉ清水・・・ってまみ!?」
「そうですまみです。」
「まぁ~きれいな恰好しちゃって。」
「いつもきれいだろおい、こっち見ろ。
出るとこ出るか?いつでもいったんで?いっしょに塀の向こう行くか?」
昔のまみちゃんを引き出してしまって冷や汗をかく。
実はまみちゃんは曲がったことが大嫌いで、小さいころ近所のいじめっ子のガキ大将をつぶして回ってた生粋のリーダーなのだ。
俺も実はそれで救われた側の一人。
思春期を迎え、いつごろからかぎくしゃくしてしまったが最近は昔のような関係に戻れて内心嬉しくも思っている。
「まみ。」
「おっと。」
あれ?
あれあれ?
「あれあれあれあれ??????」
清水がまみちゃんをたしなめたぞ?
まみちゃんも素直に受けたぞ?
これはもしかして???????
「ん?」
「どうした?」
「お二人もしかして、」
2人がやべ!という顔をした。
思わず顔がにやつく。
そ、そこに。
「あ、あきらくん挨拶の人が来たみたいよ、早く行かなきゃ。」
「あ、ちょっとひとみ、あの、待って、あ!そこ持たないで、あ、いてててててててて」
ちょうどいいところでひとみのカットインが入ってしまった。
これは後で問い詰めなきゃだな。
その後パーティーが開始され、
つつがなく式が消化されていった。
ちなみにパーティーの司会進行はエマだ。
本来ならば仲間内のこじんまりとしたパーティーをやる予定だったので、パーティーの中身はアットホームな内容が多い。
参加者もその内容は把握している。
要所要所で笑いが起きるような和やかなパーティーだった。
もちろんプライベートなパーティーなのでマスコミはすべてシャットアウトしている。
式の途中でどこに感動したのかわからないがエマが号泣し始めたのには驚いた。
仕事中のエマしか知らない人たちは、エマには普段の冷静沈着なキャリアウーマンのイメージしかないため、ぶっ壊れたエマを見たことがなく驚いていた。
「エマ泣いてんね。」
と清水。
「感動してんのかな。」
と私。
「「うーん。」」
なんか共感できるところがあるのか複雑な表情のひとみとまみちゃん。
「あ、そうそう、二人に聞きたいことがあんだけどさ。」
途端に「やべ!」という顔をする清水とまみちゃん。
「二人h」
「続いては卒業生代表 霧島あきら氏のあいさつです。」
エマが高らかに声を張り上げた。
お前さっきまで泣いてただろ。
「あ、ちょっと待、あの」
屈強なボディガードみたいな人に囲まれて壇上に案内される。
「只今ご紹介にあずかりました、卒業生の霧島と申します。
といっても見渡す限り知らない方はいなさそうですが。。。」
軽い一笑いが起きつつスピーチが始まる。
~~~~~~
「以上、卒業生霧島改め、代表取締役社長霧島あきらでした。」
万雷の拍手で以って新たな私の門出を皆さんが祝福してくれた。
この上ない喜びである。
しっかりとお辞儀をして壇上を辞する。
「お疲れ様。」
「ありがと。」
こういう時ひとみはいつも近くで俺を見守ってくれて、私のことも見守ってくれている。
ただの霧島も社長霧島も全部まとめて愛してくれている。
いつもありがとう、ひとみ。
「いいスピーチでした。ボス。」
「エマもいつもありがとう。これからもよろしく頼むな。」
「えぇ~、ボスがそういうなら~やってあげないこともないですけど~。」
プラチナブロンドの髪をくるくるしながらくねくねするエマ。
お前ほんとに日本人みたいになってきたな。
「ほら司会進行戻れ。」
「はぁーい。」
司会進行に戻るエマ。
「続いては今回の卒業パーティーに際しまして、残念ながら参加ができなかった方からビデオメッセージをいただいております。
皆様、壇上のスクリーンをご覧ください。」
天井からスクリーンが下りてきて、ほどなくしてビデオメッセージが再生された。
「あきら、ひとみ、隆一、卒業おめでとう。
本来なら参加したかったんだが公務が忙しくてね。残念ながらローマでお祝いしているよ。今度ローマに来る時があればぜひ訪ねてきてくれ。我々は君たちを歓迎する。
また会える日を楽しみにしているよ。
今日はお祝いだ。
君たちの未来に主の加護があらんことを。」
ローマ法王からのメッセージだった。
「ぶふっ!!!!!!」
「!?」
「!?!?」
会場のざわめきも最高潮に達している。
「今回はローマ法王からのお祝いもいただきました。」
エマよ、あの時のあのセリフは冗談じゃなかったんだな・・・。
あまりのビッグネームに会場は拍手も忘れてぽかんとしている。
そのあとも各界の著名人からのお祝いビデオメッセージをいただき、とんでもない盛り上がりになった。
「なんかすごい会になっちゃったね。」
「いやほんとそれ。」
パーティーはまだまだ終わらない。
~~~~~~~~~~~~~~
現在、こちらの作品と少し重なる部分もある作品を準備中です。
もしお楽しみいただけたら嬉しく思います。
作品公開しましたらタイトル・URLを記載しますので
ぜひ楽しみにお待ちください。
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