70万PV記念 霧島 卒論書くってよ。


古代シュメール人の頃から人類が逃れることが出来ない運命。

それは就活と卒論である。

シュメール人も卒論と就活やってたらしいよ。


俺は仕事が見つかったからやらなくて良かったけど、それでも卒論からは逃げることが出来なかった。



「卒論何書くよ。」


「私は決まってるよ?」


「えっ」


なんてこった。

ひとみはもうすでに卒論のテーマを決めて尚且つ執筆ももう始めているらしい。

我々は文系なので卒業研究ではないため、参考文献を用意して考察等を書くだけでいいのがまだ救いだ。


それにしてももう書き始めてる…。

まだ四年の4月だぞ…?


みんな今からやるんじゃねぇの…?



「ちなみにテーマは?」


「グローバル社会における人的資本の流動化とその加速〜外資系企業における経済活動の場合〜」


「かしこそう…。

ってそれひとみの仕事の報告書みたいなもんじゃん!!!」


「あっくん?

頭使いなさい?

私たちにあるものは使わないと損よ?

最小効率で最大の成果を出すのがわたさしたちの仕事よ?」


「ぐっ…」


もはやぐうの音も出ない。


「ちょっくら考えを整理してくる。」


「はーい、いってらっしゃい。」



ひとみにそういって私は地下駐車場にあるレクサスLXに乗り込む。

最近はわけわかんない車しか乗ってなかったから、見慣れた車の姿に落ち着く。



「こういうのでいいんだよ。」

今日はただ考えを整理するためだけのドライブなので服装はすこぶるラフだ。



リーバイスのなんのモデルかわからない、ちょっと太めのワンウォッシュのデニムに白いTシャツ。

Tシャツはシュプリームのボックスロゴだ。

清水からプレゼントされた。

その上に毛足の長いカーディガンを羽織っている。

カーディガンはマルジェラだったかな?

足元は普通のadidasのsamba。



バッグはいつも持っているでかいバーキンではなく、マルジェラのジャパニーズバッグのレザータイプのものを選んだ。

結構大きくてなんでもガサガサの入れることができる。


そのバッグに財布とMacBook、ヘッドホンをぶち込んで家を出てきた。


MacBook、かっこいいでしょ?

全然使いこなせてないけど使ってるの。



無造作に助手席にバッグを放り、適当に車を流す。


「何をテーマにしようかね。」

私はこれでも世界的外資企業のCEOだ。

いいか?もう一度言うぞ?

CEO、なのだ。


そんな私が卒論を書くとあっては生半可なものを出すことは許されない。


朝顔の観察日記みたいなものは許されないのだ。



「ダメだ。全然思い浮かばない。」



気づいたら車は、私がいつも使っている会員制サウナ施設に駐車していた。



「ちょっと一旦整えようか。」



後部座席にいつも用意しているサウナセットとバッグを持ち車を降りる。


俺の言うサウナセットとは、タオル2枚とバスタオル1枚、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、体洗い、サウナハットが入ったマルニの小さめのビニールバッグだ。



もう何度も通ってきているので受付も慣れたもの。

スマイソンで最近特注したカードケースから会員証を取り出して受付する。



通いすぎたためか、会員ランクはパラジウムと呼ばれるランクに到達している。

4人しかいないらしい。


ちなみにプラチナから上の会員ランクによるメリットは特にない。

名誉だけ。


ここのサウナはあっちあちなんだけど、水風呂はそこまでギンギンじゃない。

18℃くらいでちょいぬるなのだが、ちゃんとギンギンのシングルと呼ばれる8度の水風呂も用意されている。


外気浴スペースはちゃんと外にあり導線も素晴らしい。

今まで行ったサウナの中で一番整う。




プラチナランクから希望者に用意される個人ロッカーに荷物を入れ、素っ裸になってサウナセットを持って浴室に向かう。

時計は個人ロッカーに自分で用意した頑丈な金庫に入れている。

どこがどうなっているのかは詳しくは明かせないがこの金庫から時計を盗むには相当な苦労が伴うだろう。


俺は個人ロッカーの中に置いて充電してある、Apple Watch Ultraをサウナの時だけつけるようにしている。


心拍数とかわかるし。

時間測れるし。



まず最初に体を洗って、浴槽に入り

しっかりと体を温めて、さらに体をきちんと拭いてからサウナ室に入る。


「あっちぃ……。」

思わず声が漏れるほど熱い。

会員制ではあるが個室サウナではないので他のお客さんもいる。

黙浴、黙浴。


『卒論ねぇ。

何を書こうか。

どうせ書かないといけないんだから俺にしか書けないものが書きたい。

俺にしかないものってなんだろう。


運?

経験?

ゴルフ?

お金?


お金?』


頭の中で考えがぐるぐるしてたが、何かを掴めそうな気がした。

ここで10分経ったので水風呂に。


汗を流してシングルの水風呂に一気に入る。

痛い。

奥歯がガチガチなって噛み合わない。


耐えて1分。

幸福物質が脳を駆け巡り始める。


上がって温い水風呂へ。

余計にぬるく感じるがこれがちょうどいい。

私は5分。



ざぱっ!という音と共に水風呂から上がって外気浴スペースへ。

インフィニティチェアに寝そべって考えを整理する。


『あー世界が回ってる。


さっき考えてたのは、、、

そうお金か。

お金だけはあるからな。

お金に関する論文を書きたい。

法学部なんだけどさ。


あ、、お金と法律を関連つけた論文書けばいいのか。

お金と法律で困ったこと。


うーん、税金。税法。

契約。

輸出入?

関税?

あ。

インコタームズ?』


インコタームズとは国際商業会議所が制定した貿易の取引条件のことである。

昔は国同士で商慣習が異なるため大層苦労したらしい。

その苦労から解き放たれるために制定された。



『でも俺らしくないか。

貿易なんか最近始めたばっかりだし。


やっぱり税金と国際私法に関しての論文だな。



タイトルは

”邦人の海外での経済活動に伴う課税のあり方〜二重課税の防止とその具体策について〜”だな。』



自分の経済活動(ギャンブル)での収益が太すぎて税金に苦労さしたことを思い出した。


この全ての始まりがそうなのだから、大学の締めくくりもそれに関係するものでありたいという気持ちがあった。

特に最近はIR法案の可決や、カジノに関する法律の整備がかなり急がれている。

話題も旬だしいいんじゃないの?

カジノに絡めて税制や他国のと比較、自身の体験談など交えて書いていこう。



外資系企業のCEOの論文としては少ししょっぱいかも知らないが自分らしくていい。



考えがまとまると、気持ちが楽になりその後2セットこなした。



〜〜〜〜〜〜風呂上がり〜〜〜〜〜〜



「やっぱこれだわ。」


私が休憩スペースで頼んだのは

オロヤク オロ濃いめ

オロヤクとはオロナミンをヤクルトで割ったものであり、昔のゴルフ場ではよく飲まれていたとか。

この味の濃さがたまらん。

サウナで書いた汗を全部満たしてくれる。


オロヤクを飲んだ後はロッカーの中にある、バッグからMacBookを持ってきて、さっきサウナで考えたことをメモ書き程度にまとめておく。




忘れたら大損だ。

安心したので腹が減ってきた。

坦々麺でも食べるか。



今日は整ったから夜はよく眠れるぞ〜!





~~~~~~~~~~~~~~

現在、こちらの作品と少し重なる部分もある作品を準備中です。

もしお楽しみいただけたら嬉しく思います。


作品公開しましたらタイトル・URLを記載しますので

ぜひ楽しみにお待ちください。


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