第116話



「お金持ちというは別荘をたくさん建てるらしい。」




「まぁそうだよね。よく言われてる。」




「そこで、私も別荘が欲しいです。」




「なるほど。」




「なので別荘を買いに行きます。」




「またですか。」




「そうですまたです。」




「わかりました。」




そんなやりとりがあって、あきらはどこかに電話をかける。




「もしもし?霧島です。」




「霧島様、おはようございます。


谷川でございます。」




谷川さんとは自分の専属プライベートバンカーで、コンシェルジュを務める人だ。


エマに頼んでもいいのだが、エマもエマで忙しく、こんなどうでもいいことに付き合わせるのも悪いと思い、コンシェルジュに電話をした。


ちなみにコンシェルジュとしての仕事は今回が初めての依頼である。


いつも谷川さんを頼らないので季節ごとに来る手紙で「もう少し仕事をさせてくれ」とよく言ってくる人だ。






「別荘を買いたいのですが、お願いしてもいいですか?」




「かしこまりました。場所と条件をくださいますか?」




「沖縄に本島と離島で一軒ずつ、あとは日本各地の温泉地に数軒お願いします。」




「かしこまりました。それでは詳細についてはまたメールさせていただきます。」




「はい、お願いします。」




「はい、失礼いたします。」




谷川さんの声は心なしか嬉しそうだった。






「別荘手配してくれるって。」




「何軒買うつもりなの?」




「知らん。谷川さん次第。」




「でも旅行の候補地が増えて嬉しいね!」




「そうだな。」




「そういえば百貨店からお手紙来てたよ?」




「なんて?」




「いかがお過ごしですか?って。」




「あ、そうなの?じゃあ行こうか。」




「うん!」




ひさびさにレクサスLXに乗り込んで手紙をくれた阪急うめだ本店へと向かう。




「うめはんは駐車場ないから足が遠のいちゃうよな。」




「たしかにそうかもねぇ。」




近くに車を止め、歩いてうめはんへと向かう。






まずはいつも通り一階から練り歩く。




「あ、このバッグかわいい!」




「たしかに!」




「あ、このバッグも可愛い!」




「ほんとだ!」




結局、バーバリー、バレンシアガ、セリーヌ、サンローランのバッグを大小様々10点ほど外商サロンに回してもらった。








もう少し歩くと、次はジュエリーコーナーだ。


1つのショーケースの前でひとみが止まった。




目が釘付けになってる。




「ひとみどうしたの?」




「なんでもない。」




なんでもなくないのはひとみを見ていればわかる。




「すいません、この指輪試させてもらえますか?」




「はい、かしこまりました。」




「えっ!?」




えっと言いながらも店員さんに手を取られ指輪をはめられる。




「サイズはこれでちょうど良いかと。」




「こっちもお願いします。」




「はいかしこまりました。」




「え、これめっちゃ可愛い。」




「俺もそう思う。」




「大変お似合いですよ。」




「じゃあ今試させてもらったの全部サロンに回しといてください。」




「恐れ入りますがお名前をよろしいでしょうか?」




「霧島です。」




「かしこまりました。」




あきらたちはリングを2点サロンに回した。


ちなみにお店の名前はブシュロン。言わずと知れたハイジュエラーだ。




ブシュロンを抜けた後もティファニーやカルティエ、シャネル、ブルガリで数点ずつサロンに回した。




続いて二階。


二階は化粧品売り場だ。




化粧品はよくわからないのでひとみの後ろを黙ってついていく。




あれよあれよと言う間に数十点がサロン回しになった。






続いて三階。


三階はハイブランドの洋服が揃っている。




近々夫婦でパーティに参加する予定があるので、それ用のドレスの注文も兼ねている。




結局こちらでも夫婦揃って数十点、下手すると100点以上をサロンに回した。


ロエベ


マルニ


ジルサンダー


ボッテガ


ステラマッカートニー


バレンティノ


トムブラウン


ドリスヴァンノッテン


マルジェラ


バレンシアガ


アレキサンダーワン


有名どころはほとんど複数点サロンに回した。




一番時間がかかったのが下着である。


たまたま下着のプロの手が空いており、きっちりフィッティングしてくれたらしい。


結局下着もまとめてオーダーしてみたと、嬉しそうにはしゃいでいたので待った甲斐があると言うものだ。






続いて四階。


こちらで回るべきところは少ない。


靴のコーナーを目指して一直線に歩く。




ひとみはルブタンとフェラガモの靴を好んでよく履くのでまずルブタンへ。


まだ表に出していない新作が納品されたばかりだったので、サイズがあるものは一通りサロンに回した。


フェラガモでも気に入ったものが数点あり全部サロンに回した。


グッチ、ディオール、ミュウミュウでも同様だ。






続いて五階。


まだまだ続くひとみの買い物。




ハイブランドできになるものは全部サロン行き、以上。




続いて六階。


なんとなく目を引くものがなかったので一通り回って終わり。




続いて七階。


ガラス食器、和食器を数点まとめてサロンへ。




続いて八階。


やっと自分の買い物ができる。

いや、どさくさに紛れて、ハイブランドでも山のように買ったんだけどさ。



素敵なゴルフウェアを数点サロンに回したほか、Jプレスで少し気に入ったブレザーがあったのでサロンに回してもらう。


Jプレスは初めての利用だ。






「いやぁ、たくさん買ったね。」




「うん!ストレス発散になった!」




「よかった。」




阪急うめだ本店を出ると次は自分の買い物だ。


2人で阪急メンズへと向かう。




まずは地下。


ひとみセレクトでギャルソンで数点サロン回し。




そして一階。


ディオールで靴とTシャツをサロン回し




次に二階。


好きなブランドが多く、目に付いたものはほとんど全てサロンに回した。


ちゃんとひとみの検品を受けているので手持ちの服との着まわしもバッチリだ。




そして三階。


ラルフローレンで秋冬物のセーターとパンツを合計数点まとめ買い。




そしてトムフォードでサングラスを見ていた時に担当の外商さんが来た。




「こんにちは、いつもお世話になっております。」




「あぁ、どうも。」




「こんにちは。」




トムフォードでも気になったサングラスを数点サロンに回してもらった。




外商さんと三人で世間話をしながら本店のサロンへと向かう。






サロンに着くとすぐに紅茶が出されゆっくりくつろぐ。




「この紅茶美味しいですね。」




「そうなんですよ、私も好きで。


うちのバイヤーが来月から店に並べたくて仕入れてきたらしいですよ。」




「じゃあこれも。」




「はい、かしこまりました。」




「何点くらい買いました?」




「いや、よくこんな数時間でこんなに買えますねっていうくらいです。」




「やっぱり?」




「えーと、、、具体的な明細出しますか?」




「一応点数と合計金額だけ。」




「点数が402点で、合計金額が6100万円ですね。10万円台の端数はサービスさせてもらいます。」




「ありがとうございます。


それにしてもすごい額ですね。」




「私自分の分は自分で出すよ。」


ひとみはカードを外商さんに渡した。


そのカードもアメックスのセンチュリオン。


言わずと知れたブラックカードである。




「いいよ、全然大丈夫。私のカードでおねがいしますね。」




「かしこまりました、霧島様。


絵とか買われる方は、金額だけだとこれくらい行くことも珍しくないですが、この買い方でこの金額は霧島様くらいなのでやはり珍しいですね。」




「でもいい買い物できました。ありがとうございます。」




「こちらこそいつもありがとうございます。」




支払いはペルソナカードで。


いつでもポイントが10%たまるので相当お得である。




「ポイントある分は全部使っといてください。」


ちなみに調べてもらうとポイントは2000万円分ほどあった。




「かしこまりました。」




ちなみに外商での会計は即時ではない。


担当の外商さんが好きなタイミングで決済できるので、こちらから指定しない限り翌月全て引き落とされると言うこともなく便利である。




とはいえ、5〜6千万口座から引き落とされたところで残高はどうにもならないのだが。






「じゃあまたよろしくお願いしますね。」




「お世話様でした。」




「ありがとうございます、霧島様。


またどうぞお越しくださいませ。」




帰る時は阪急の偉い人たちも来て数人からお見送りしてもらった。


地味に嬉しかったのは、次回から車で来てもスタッフさんが車を止めに行ってくれるようになった。つまり、バレエサービスを特別にしてくれることになったので駐車場の心配をしなくて良くなった。




今度プロジェクトワンで来て困らせてやろうかと思ったが、そんな大人気ないことはやめておくことにした。


プロジェクトワンはハンドルが四角いし、見たこともないスイッチがたくさんあるので初見の人は間違いなく運転できない。






「いやぁ、たくさん買ったなぁ。」




「ほんとよ!あきらくんなんでも買っちゃうから見ててドキドキしたよ!」




「だってひとみがそれくらいの買い物でもっと素敵になるんだったら安いもんだよ。」




「…うれしい。」






家に帰ってパソコンを立ち上げると谷川さんからメールが届いていた。




「別荘の候補地こんな感じだって。」




「素敵なところね!」






候補地は沖縄本島に一軒。


石垣島に一軒。


湯布院に一軒。


南紀白浜に一軒。


能登半島に一軒。


登別に一軒の六軒だ。




谷川さんの心配りか、番外編として海外もあった。


ミラノに一軒。


ハワイに一島。


グアムに一軒。


マイアミに一軒。


カリフォルニアに一軒。


サンフランシスコに一軒。




今回はアメリカ編らしい。




「どこにするの?」




「え?」




「いや、どこ選ぶの?」




「あ、全部。」




「!?!?!?!?!?!?」




「全部だよ全部。経済まわしてこ?」




「う、うん。」




ここから数年をかけてじっくり整備していく。


特にハワイはなかなかにでかい無人島らしいので、滑走路も整備する予定だ。


夢が広がる。




「スケールでかすぎ。」




「そんなのダメかな?」




「最高。」




その夜はすごかった。


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