第115話 霧島 普段の生活を垣間見せる


「今日はどこいくの?」




「関空!」




「まさか!!」




そう、今日は待ちに待ったプライベートジェット機のお披露目である。




機体登録名称はひとみちゃんジェット。


なんとも締まりのない名前である。






「結局なんの機材を買ったの?」




「それは見てのお楽しみということで。」




「すっごい楽しみ!」




そんな2人はメルセデスAMGプロジェクトワンに乗り込み一路関空に向かう。




この車は、ガムボールに際して購入したものであるが、あまりに気に入ったので日本に空輸した。


というよりも、あの時購入した5台は全て日本に持ち込んでいる。




マンションの地下駐車場から地上に出ると、そのエンジン音で周りの目を引きつける。


そして、この車を見たものの反応は2つに分かれる。


1つはこの車の価値を知っている者の驚き。


もう1つは知らないけどなんかすごそうというざわめき。


もちろん圧倒的に後者の方が多いのだが。






スパルタンな見た目とは裏腹に、予想外に静かなエンジン音で地上を駆る。


この厳つい見た目が周りを恐れさせるのか、道が割れていく。




しばらくすると高速の入り口が見え、スムーズに高速道路に合流する。


高速道路ではやはり獰猛な姿を見せるこの車。


しかし、理性と狂気を兼ね備えたこの車は力技でその姿をねじ伏せ、快適なドライビング性能をもたらす。




「思ってたほどじゃじゃ馬じゃないよね。」




「そうだな。低速域も高速域もスムーズだ。


まぁ日本での走行はあまりスピードを出さないからかもだけど。」




「私この車好きだよ。」




「俺も。」






そんな話をするほどには余裕のあるドライビング性能を持つプロジェクトワン。




快適なドライブに酔いしれていると関空が近くなってきた。


海の上を飛ぶように、空港に向かうまっすぐな高架を駆け抜ける。




橋をすぐに渡りきると関空に到着する。




「着きました!!」




「おぉー!!!」




普段、一般車が入ることのできないゲートから空港内へと入り、ごくごく一部のVIPしか利用することができないラウンジ、通称離れ、に車を止める。


離れには専用のドアマンがいるためドアマンの指示に従い車を止め、キーを預ける。




「ここなんだ!」




「そう、ここ。」


最初こそ普通のラウンジを利用していたあきらたちだが、最近はいつもこの離れを利用していた。


この離れには基本的には国際線規格のプライベートジェット保有者や国賓しか入ることが出来ない。


しかしあきらたちは、会社のものとはいえプライベートジェットを利用しているため、紆余曲折を経てごく最近になって使用が一部だけ解禁されていたのだ。


そして今回は会社のものではなく、完全に個人所有として国際規格のジェット機を持つことになった。


このことからこの離れの利用を全面解禁されたのだ。




中に入るとコンシェルジュがいた。


「お待ちしておりました、霧島様。


今回案内させていただきます、湯島と申します。」




「よろしくお願いします。」



「おねがいします。」

ひとみもならって言う。




「それではご案内させていただきます。」






コンシェルジュの湯島さんの案内で外に出るとロールスロイスファントムが止まっていた。




「格納庫まではこの車でご案内申し上げます。」




「はい、お願いします。」




「なんか緊張してきたよあきらくん。」




「おれも。」




そしてしばらくすると機体の格納庫についた。




格納庫の横開きのシャッターを前にして湯島さんが電話で何か話している。




するとモーター音のような音と共に格納庫の扉が開く。






そして、機体の全貌が明らかになる。






「!!!!!これ!!!」




「そうです!」




「ボーイング747!!!」




「あったりー!」




そう、あきらはボーイング747を発注して個人的に利用することにしたのだ。




「いや、デカっ!」




「滑走路3000m必要なんだけど、関空は滑走路の長さ日本一だからいいかなって。」




「いやいいけど…。」




「これがひとみちゃんジェット1号か…。」




「なんかしみじみ言われると恥ずかしいね。」




「そうかな?むしろおれは好きだけど。」




「あんなこと勢いで言わなきゃよかった…。」




「まぁ中も入ってみよ!」




階段式のタラップを上がり中に入る。


すると内装はヨーロッパのホテルを思わせる雰囲気で、まるで城の一部のようだった。




「内装はエルメスとカッシーナのダブルネームでやってもらってます。」




「目ん玉飛び出るくらい高級だね。」




「ベッドルーム2つとお風呂もあります。」




「2つのベッドルーム。」




「一応4人乗りです。」




「本当なら2〜300人乗れるのにね。」




「お値段なんと。」




「なんと?」




「ぜーんぶ込み込みで480億円。」




「もう安いのか高いのかわかんねぇよ。」




「多分安い。銀行口座の預金残高ほぼ減ってないし。」






「多すぎてわかんないのね。もともと入ってた額が。」




「そういうこと。」




「本日このままご出発もできるようにスタンバイできておりますがいかがなさいますか?」




「いや、今日はそのままで。


また近いうちにお願いすると思いますけど、その時はよろしくお願いします。」




「はい、かしこまりました。」




「もうあきらくんのスケールでかすぎて最高。」




「ありがとう。」




飛行機の内装をスマホで写真に撮って、プロジェクトワンの写真と共にインスタに上げておいた。


あきらは最近インスタを始めたらしい。


個人情報が漏れるのが怖いとかなんとかで、SNSのためだけの専用スマホを契約した。




ちなみにフォロワー数は450万人いる。


全て英語で投稿しているため、日本人とは思われておらず、外国人のフォロワーが多い。






「さて、帰りますか!」




「はーい!」




プロジェクトワンで颯爽と帰る霧島夫妻だった。












〜〜〜〜〜〜〜〜〜


とある雑誌の記事。






謎のハイパーセレブリティ?






最近SNSを賑わす謎のスーパーセレブをご存知だろうか?


アカウント名はdays_gumballer。


DMにてアカウント名の掲載を許可してくれたがそれ以降の取材は一切お断り。


しかしこのアカウントで投稿されている写真を見るとかなりの大金持ちであることがうかがえる。


自宅駐車場と思われるところで撮られた愛車の写真はレクサスに始まりランボルギーニやアストンマーチンなど超高級車がズラリ。


総額20億円弱といったところか。


つい先日投稿された写真にはなんらかの部屋と思われる写真が。


詳しい方に解説を依頼したところ、家具はカッシーナ、内装はエルメスによるものだと判明した。


概算で数億円の金額がかかっている。


他にも世界の限られた富裕層しか参加できないと言われているガムボールの様子も投稿されており、アカウント名も考慮するとその関係者ということが考えられる。


最近は好景気と言われて久しいがなんともお金持ちな人も世の中にはいるものである。




本日の言葉


上には上がいる。








この記事が発表されてからフォロワーがまた爆増したとかしないとか。








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