第114話



「ただいまより、表彰式を行います。」




参加者の中で目立っていたものの名前が次々に呼ばれる。




「アゲインストオールオッズ賞、、、




霧島あきら!!!」




アゲインストオールオッズ賞とは最も目立っていた人に贈られる賞だ。


万雷の拍手で壇上に迎えられる。




「続いて、ファン・フェイバリット賞、、、




中村義秀!!!」




先ほどよりもさらに大きな拍手と鳴り物で中村さんが迎えられる。




「続いてベストカー賞、、、




こちらも中村義秀!!!」




中村さんの車を考えればベストカー賞は堅い。


当たり前である。


世界遺産とも呼ばれる250GTOを7000キロも走らせたのだ。


狂気の沙汰である。






「そして、スピリットオブガムボール、、、






霧島あきら!!!!」






あとから聞いてみると、計5台のハイパーカーを乗り継いだのが受けたらしい。


最高にクレイジーだと言われた。




そして表彰式が終わるとあとは飲めや歌えやの大騒ぎ。


オープニングと同様に世界的なDJや歌姫が場を盛り上げる。


まるでグラミー賞の会場にいるみたいだ。




いろんな人に祝福され、それがひと段落ついた頃にみんながやってきた。


ひとみは炭酸水で、自分は相変わらずサロンのシャンパンを飲んでたところだ。




「ヘイブラザー!スピリットオブガムボールおめでとう!」




「霧島!俺なんか賞なしだぞ!」




「さすがは霧島くんだね。」




「そういう中村さんだってベストカーじゃ無いですか!」




「いやぁ、腰が疲れたよ…。」




「素敵な車でしたよ!中村さん!




「おぉ!ひとみちゃん!


ひとみちゃんも長旅お疲れ様。」




「もう慣れました、この人の行動力には…」




「あんまり褒めるなよ、照れるだろ。」




「「「「だれも褒めてねぇよ。」」」」






「よし、飲み比べするか!」




「受けて立つ!」




「リューもいけるクチか?」

キラキラした目で清水を見るダニエル。



「ダニエル、清水は俺より飲むぜ?」




「これは聞き捨てなりませんなぁ。」

好戦的な目をする中村さん。



「みんな程々にね…。」




そうこうしているとクラブにあったサロンのシャンパンが3ダース出てきた。




「これこれこれ!」




「ブラザーはサロンが好きだなぁ。」




「こいついっつもサロン飲んでるぜ。」




「なんと贅沢な…。」




「とりあえず乾杯するか!」




あきらは手際よくサロンの蓋を開け、1人一本ずつ持たせて乾杯を強いた。




「仕方ねえ…。付き合うか。」

やれやれ感を出しつつも嬉しくて仕方ない俺。




「かんぱーーーい!」




「「「「乾杯!」」」」




イビサの夜はまだ始まったばかりだ。






結局3ダースあったサロンはすぐになくなり、清水のリクエストでテキーラがやってきた。


銘柄はグランパトロン。


このクラブにあるテキーラでは一番美味しく、そして一番高いテキーラらしい。




「よし、グランパトロンでショット行こう!」




「剛毅だなぁ…。」




「なんて罰当たりな…。」




「もっとゆっくり飲もうぜ。」




総スカンを食らう清水。




「まぁ一杯だけな。」




結局渋々ながら付き合う方にした一行。


ひとみは呆れた顔で炭酸水を飲んでいる。






「「「「乾杯!」」」」




「いや、美味っ!!!!」




「これこれ!この味よ!」




「うん、いい味ですね。」




「いつも通りの味だ。」




気づけばグランパトロンも店から在庫がなくなった。


中村さんもどうやら相当なウワバミらしい。


その調子で他にも何種類か高級酒の在庫を空にしていった。


この後夜祭の打ち上げパーティーは飲み放題食べ放題である。


そのため根が貧乏性のあきらはここぞとばかりに酒を飲み尽くし、ケチな清水は元を取るまでは帰らんというばかりの飲みっぷり。


そんな2人を微笑ましく見守りながら同じようなペースで飲み続ける大人2人。




クラブの酒のストックの8割を飲み尽くしたところでクラブ側から泣きが入った。




「勘弁してください…。」




「えっそんなに飲んだ?」




「いや、それほどでも無い気が…。」




「俺は酒を大量に入れておくように伝えたはずだが?」




「困りましたねぇ。」




「ちょっとみんな周り見てみなさいよ。」




周りには飲みつぶれた死屍累々が。


あきらたちの飲みっぷりに誘われて自然とペースが早くなってしまい気づけばこの有様だ。




「これは…。」




「やばいな…。」




「ちょっと大会本部に行ってくる。」




「私は車の様子を見に…。」




大人2人の逃げ足は早い。




「まぁ、楽しかったからいいか!」




「そうだな、帰ろう!」




「もう少し学習しなさいよ…。」




呆れながらも楽しそうな笑みを浮かべるひとみだった。




ここで各自解散し、近くにあるDASYのホテルに戻る。




シャワーを浴び、リビングでくつろいでいるとひとみも風呂から出てきた。






「お、おかえり。」




「ただいまー。」




「ひとみも長旅お疲れ様。」




「運転してたあきらくんの方がお疲れでしょ?」




「運転は意外と苦じゃないけど、助手席はすることないからきついでしょ。」




「まぁそんなでも無いよ?


陸路だけじゃなかったし。」




「そう行ってくれて嬉しいよ。」




「楽しいことたくさん経験させてくれてありがとう。」




「まだまだ。日本に帰ったらもっと楽しいことあるよ。」




「ほんと?」




「もちろん。」




「これからもよろしくね。」




「こちらこそよろしくお願いします。」




2人の夜は更けていく。



〜〜〜〜〜〜次の日〜〜〜〜〜〜〜



「もう一日あるんだった…」

「えぇ!?!?!」


「冠スポンサーやらしてもらったから、大会のご厚意で日程が1日増えて、最後大阪で凱旋パーティだった…。」


「すぐ車送らなきゃ!」


「いや、車はランボルギーニのウニコをKIX(関空)に送ってある。」


「じゃあとりあえず私たちだけが行けば良いのね?」


「そうだね…。」


「もぉ〜しっかりしてよね!」

ひとみのこの言い方になんか心の柔らかいところがキュンとなった。


「ふぁい…」


『エマ!今イビサにいるんだけどKIXまで急ぎで手配できる!?』


『お任せあれ、マドモワゼル。』


『ありがとう!』

「あきらくん!行くよ!」


「お、おう」


ひとみに手を引かれ、イビサ島の空港に待機していた飛行機はアメリカ空軍戦闘機F35だった。

それも二機。



「こ、これは…」


「ちょっと待ってね。」

徐に電話をかけるひとみ。

『エマ、これ乗って大丈夫なの?』


『もちろん。ちなみにそれは我が社が研究開発している戦闘機のテスト機体なので空軍機ではありませんよ。』


『え?でもパイロットのh』


『空軍機ではありません。良いですね?』


『はい、わかりました』


『急ぎなのですぐ乗ってください』


『はい。』


「あきらくんいいって!」


「え、あ、あの、わかった。」



我々は二機のF35にそれぞれ乗り込み、都合3回の空中給油を繰り返して、大阪の関西国際空港までひとっ飛びした。

途中休憩も挟んだが、4時間でついた。

何キロ出してたとかはわかんないよもう。


「ありがとうございました。おせわになりました。」


「「。」」

パイロットさんたちは無言でビシッと敬礼をしてまた飛行機に乗り込んでいった。

多分このまま給油をして、横田基地かどこかに戻るんだろう。


きっと何かのついでに俺たちを送ってくれただけだと信じたい。



「大変だったね。」


「ちゃんと予定覚えてたらもう少し楽だったけどね。」


ぐうの音も出ない。



この後空港で車を受け取り、無事大阪市内を凱旋パレードすることができた。

ガムボールって疲れるなぁ。

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