第29話 霧島 一人旅に出る




i8の納車を済ませ、私は愛用のリモワのアルミのスーツケースをレクサスに詰め込み、サンローランのリュックサックに手近なものを放り込んで車の人となった。


サンローランのリュックサックは昨日購入したので今回が初登場となる。

海外旅行に行くからという免罪符を片手に喜び勇んで購入に走った。

後悔はしていない。



今日はこのまま伊丹空港まで向かい、そこから成田、そしてかねてより計画していた海外旅行に向かうつもりなのである。

マイル修行も兼ねてね。




自分でいうのもなんだが、幸い私の英語力は非常に高い。


大学を選ぶ際にも外国語学部を考えていたように、外国に対しての心理的ハードルが低く、また、得意科目も英語などの文系科目であった。


大学に入学して一年目に無理やり受けさせられたTOEICでは900点台を叩き出し、一般教養の英語は教授から、テストさえ受ければ授業に来なくてもいいと言われた。


おそらく、授業満足度が霧島と他の生徒で違いすぎて他の生徒の迷惑になるからだろうなと考え一度も行かなかった思い出がある。




そういう背景もあり、私が今回向かうのはラスベガスだ。




せっかくの休みだし海外に行こうと思い、これまで一度も行ったことがない地域で、エンターテイメント性に溢れ、なおかつ英語圏に行くという条件を考えた際、その条件に一番最初に浮かんだのかラスベガスだった。


それに加えて、マイレージカードのステータスを上げたいという思いもある。

むしろこっちが第一目標かもしれない。




ラスベガスに行くにあたり、私は1つ自分に条件を加える。


第一目的地であるラスベガスまでの旅行資金は前もって支払いをし、

10万円だけ(1000ドル分)は財布に入れて持っていき現地の可処分資金とするが

その準備以降は自身の口座のお金を使わないということにした。




つまり、ラスベガスでもし稼ぐことができれば、そのまま違う国もしくは違う地域は海外旅行をすることができるし現地の滞在も豪華なものになるが、

もし稼ぐことができなかった場合はそのまま日本に強制帰国というルールを課すことにした。




この旅行に清水も誘ったが、ラスベガスのギャンブルは性に合わないと言ってすげなく断られた。


日本のギャンブルよりもよほど楽しめそうだと思っていたのだが、そうか。と言うにとどめておいた。






伊丹空港に向かう車中でわたしは1人これからの旅行にワクワクしていた。




伊丹空港までは約一時間ほどで到着し、出発まではまだ数時間あるため、保安検査場を抜け、二階のスイートラウンジに向かう。




今回は帰りはどうなるかわからなかったので、行きは贅沢に行こうと思い、ファーストクラスのチケットを購入していた。


そのため、国内線の移動もプレミアムクラスでの移動となり、伊丹、成田、サンフランシスコの全空港でファーストクラスラウンジが利用できる。




階段を登り、スイートラウンジの入り口をくぐるとカウンターがあり、そこで搭乗券を渡すと入室が可能となる。




ソフトドリンクやアルコール類が無料で食べれるラウンジを、至れり尽くせりだなと思いつつ、適当に空いている座席に座る。




スイートラウンジではマネケンのワッフルが食べられると聞き、密かに楽しみにしていた。




私はお目当てのマネケンのワッフルを食べつつ、

オレンジジュースを飲み、ラウンジのWi-Fi環境を利用して、自前のMacbookで動画を楽しんでいた。

現地でも株価のチェックは行いたいのだ。




ちなみに私は飛行機に乗る前のアルコール類は摂取しない。

アルコールと急激な気圧変化で頭が痛くなりやくなると信じているからだ。

誰に何と言われようとこのポリシーは変えるつもりがない。




そうこうしていると、優先搭乗を受け付ける時間となり、搭乗口に向かい、見事優先搭乗を果たす。




初めて国内線のファーストクラス (プレミアムクラス)に乗る私は、

さすがファースト、やはり座席が広いと感じ、成田サンフランシスコ間の移動はどうなるのだろうとさらに期待を膨らませ、快適な空の旅を果たし、あっという間に成田空港に到着した。




成田での乗り換えでも2時間ほど余裕があるため、成田空港の国際線ANAスイートラウンジに向かう。


「やはり、東京は違う。」

成田のラウンジは伊丹よりもさらに綺麗でたくさんの種類の軽食もあり、

携帯電話が充電でき、伊丹と同様にWi-Fiも利用できたので、文句なしのラウンジであった。




しばらくすると、優先搭乗の時間となり、またも私は優先搭乗でファーストクラスの座席に座る。




今私が乗っている、このサンフランシスコ便の使用機材はトリプルとも呼ばれる機体、777-300ERというらしい。




その機体のファーストクラスの座席は、さすがはファーストと言わんばかりのプライベートな半個室が用意されている。




半個室の自分の座席を見たとき、

「これがテレビで見たファーストクラスの座席か…。」

と驚愕した。




ファーストクラスの座席には、メガネ置きや、無料のソニーのノイズキャンセリングヘッドホンがあり、これは本当に必要なのか?と思う設備もたくさんあったが、

「これがファーストクラスなのだ、この余白が贅沢なのだ」と妙に納得しつつ、

飛行機は離陸し、30分ほどしたところでCAさんにウェルカムドリンクをいただいた。




アルコール類を取らないつもりだったが、

これくらいなら記念にと思い少しのシャンパンを注文した。






夕食の機内食ではクリュグのシャンパンが提供された。

CAさんからの心遣いも一流で、お水も一緒に出してくれた。

何も言ってないのに!


選択メニューから和食を選択した私は、本格的な懐石料理を食べた。



ご飯を食べてしばらくすると小腹がすいた。

地上であれば深夜ともいわれる時間かもしれない。

私は一風堂の味噌ラーメンを食べた。




「なんでこんなになんでもあるんだよ。」


と、私は思ったのだった。




そしていよいよ就寝といった頃にCAさんがやってきて、おやすみの準備をと言いつつ、座席を寝る体制に整えてくれ、簡単なベッドが出来上がった。


簡単にとは言いつつも、寝具は東京西川、そしてナイトウェアもファーストクラス用に誂えられたパジャマが提供されている。




CAさんがベッドを作っている時に話をしてくれたのだが、成田空港にはファーストクラスか最上級マイレージ会員のダイヤモンドメンバーの乗客限定のチェックインカウンターがあり、そこはカウンター番号から通称Z屋敷と言われているらしい。




チェックインするだけでおしぼりをいただけ、そのままスイートラウンジに案内され、そこで至福のひと時を過ごすのかハイステータス会員の嗜みなのだそうだ。




自分も遠からずそこに到達しようと、決意を新たに、教えてくれたCAさんにお礼を伝えた。


その際に、なぜか、その若くて綺麗で美しいCAさんから名刺と連絡先をいただいたが、その真意に気づかず、

「さすがはファーストクラス。CAさんはお客さんに対して責任持っているということなんだろう。」

と見当はずれの結論に達し、1人勝手に納得していた。


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