第30話


眠りについた私が目を覚ますと、そろそろ朝食といった頃で、

今度は洋食の朝食をチョイスした。




さすがに、夜のフルコースほどのものが出てくるわけではないが、痒い所に手が届く朝食であり、非常に満足した。




入国カードの記入やなんやかんやしているうちに、飛行機はサンフランシスコに着いた。

ラスベガスまでは、また飛行機を乗り換えて1時間ほどだ。




サンフランシスコ国際空港でもラウンジが利用できたが、それほど時間に余裕があったわけでもないので、それは出発時の楽しみにとっておこうと思い、初めて訪れるサンフランシスコ国際空港を探検して回ることにした。




サンフランシスコ国際空港は、やはり海外の大きな国際空港と呼ぶにふさわしく、かなり開放的なつくりをしており、自分が利用者として訪れて快適で、気持ちの良い空港である。




いくら時間があっても足りないななどと思いつつ売店や、展望台などを探検しているとあっという間に優先搭乗の時間となり、またまた優先的にファーストクラスの座席に乗りラスベガスを目指した。


使用機材は伊丹成田間と同じ機材であったため、豪華さに驚き呆れるということもなく、落ち着いて空の旅を楽しめた。




そうして、霧島はいよいよラスベガスに到着した。

預けていたスーツケースは無事受け取ることができ、ほっとしたところで空港の到着口を出ると、そこにすぐスロットマシーンがあることに気づいた。




「さすがはカジノの街…血が騒ぐ…。」




高校の修学旅行以来、久々の海外でテンションが上がっていた。




空港を出てタクシーを捕まえると、自身が予約したホテル名を運転手に告げた。




「パラッゾリゾートホテルまでお願いします。」




「お兄ちゃん英語うまいね!韓国?」




「英語は慣れてますから。




あと、韓国じゃなくて、日本です。日本から20時間もかけてきました。」






「そいつは申し訳なかった。最近は韓国のお客さんが多いから、お兄ちゃんもそうかと思ったよ。




ラスベガスには観光かい?」



やっぱ最近は韓国の人も多いんだな!と思いつつ


「 はい、観光ですが、自分がどこまでやっていけるか試してみようと思って、全財産持ってきました。」



「そりゃいい!男はそうでなくちゃ!うまくいったら帰りも指名してくれよ!」



気のいい運転手さんにあたったことを幸運に思いつつ、

はったりとジョークを交えながら運転手と会話を重ねる。






そんな楽しい会話をしていると、すぐにホテルに着き、料金を払ってホテルにチェックインする。






宿泊カウンターで予約名を告げ、チェックインし、ベルスタッフに荷物を持ってもらいながら部屋まで向かう。






ラスベガスのパラッゾリゾートは全室スイートでありながら、なかなかに宿泊料金は安い。


カジノで収益を上げているホテルなので、宿泊費から無理に取る必要がないのだ。




ベルスタッフにチップを渡し、荷物を部屋に広げる。




霧島は、どうせなら、注文したスーツも持ってきたかったなと、まだ完成していないスーツに思いを馳せつつ着替えた。




ホテルに到着するまでは、飛行機移動が楽になるように動きやすい服を着ていたが、今からラスベガスでカジノを楽しむということもあり、せっかくなので、ひとみとの帰省前のデートの際に購入した、ジョルジオアルマーニの夏用のセットアップに着替えることにした。




霧島は財布の中にあらかじめ準備しておいた1000ドルが入っていることを確認し、パラッゾリゾートの中にあるカジノに向かった。




とりあえず軍資金を増やすかとばかりに、財布の中の米ドルをすべてカジノチップに換金した。




1000ドル分のチップを手にした私は迷わずルーレットへ。




席に着くとディーラーから挨拶をされ、軽く会話を楽しんだ。




手始めに私は用意したチップの500ドル分を偶数にかけた。




愛用の幸運のロレックスに願いを込め撫でる。


そうすると球はちゃんと偶数に入り、掛け金の二倍を手に入れた。


「よしよし、幸先いいよ!」

この時点で手持ちは1500ドル。




次はもう少し賭けの範囲を狭めようと思った霧島は、真ん中の一列に先ほど獲得した1000ドル分の半額、先ほどと同じ500ドル分を賭けた。


するとやはり真ん中に入り今度は3倍の掛け金を手に入れた。

この時点で2500ドル。

ウハウハである。


次はどこにしようかと考える私は嫌な予感を感じ取った。

なんとなく後ろの首筋がピリピリして、無意識に左手首をさする。

500ドル分のチップを先ほどと同じ掛け方で、一番右端の列にかけた。


するとルーレットの弾は私の賭けた列とは全く関係のないポケットに落ちた。

惜しくもなんともない。

しかし、負けた瞬間、首筋の違和感は収まった。


「勝ちすぎるといけないってことか…。」




最近の私は、勝負の時にはロレックスが伝えたいことを大まかにではあるが察することができるようになっていた。

勘がさえているだけと言われればそれまでなのだが。





そうして運を味方につけつつ、順調に勝ちを拾い、時々負けて、元手の1000ドルチップがいつの間にか1万ドルになっていた。

初めての結果としちゃ大満足だ。



「 よし、今日はこのくらいで。」




明日はもっと高レートのカジノに行こう。

と思いつつ、チップを100ドル分ほどテーブルに置き、席を立った。


よくある光景とはいえ、ルーレットでなかなかに大勝した私はいつの間にか周りに人だかりができており、老齢の紳士や淑女にシャンパンをたくさんご馳走になった。




「楽しくて、いい場所だな。」


外国人のオープンなコミュニケーションに癒さて、勝ち取ったカジノチップを換金して現金を得ると、ホテルの一階に見つけた、コンビニのようなスーパーのような売店で食事とおやつと飲み物を大量に買い部屋に戻った。




ついでとばかりに部屋に戻る際に、フロントに寄り、延泊処理を申し込んでおく。




チェックインの際は2泊だけの料金を先に払ったが、現金でもう2泊分ほど追加するつもりだった。

しかし、さっきのルーレット運用分がポイントを稼いでくれたようで、無料で延泊してくれた。

よくわからなかったが、カジノで遊ぶとポイントがたまる。

そういうシステムがあるようだ。


嬉しい誤算に気持ちを躍らせ、無事延泊できた私はトータルで最低でも4日間は勝負し続けることになった。




部屋につくと、時差ボケの影響か、なんとなくぼーっとしてしまった。

頭を休めるためにシャワーを浴び、翌日に備えて就寝した。

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