第123話


結論から言うと、浮遊式リニアは大好評だった。




公共性が高く、元から利益率は度外視して運用している鉄道なので、乗車賃も安く、停車駅も少ない。


通常は普通席とグリーン席とグランクラスに分かれるが、時間帯によってはDAYS専用車両というものもあり、改札と乗車口で社員証をかざすと社員は無料で利用できる。




羽田空港線に至っては、品川から羽田空港までノンストップだ。

ちなみに羽田空港は手狭だったので、第4羽田空港まで作った。

空港内は某Dランドみたいな電車が走っている。




成田空港線は品川の次には千葉駅で、次はもう成田空港駅である。






まるで誰かに紹介するのか、そんなことを思いながら会長室専用エレベーターにひとみと乗り込み、B8のボタンを押す。




会長室から浮遊式リニアのある品川駅ホームまでは直通である。


高速エレベーターに乗り込むこと数十秒。


一昔前なら考えられなかったスピードだ。




エレベーターが開くとラウンジになっている。


ここはグランクラス専用のラウンジである。


必要ないような気もしたが、元から利益は度外視して作っているので、やってみようということでやってみた。




品川から羽田空港まではせいぜい15〜20分程度だが、成田空港までも約30分と、加速しきる前に着いてしまう。


そしてゆくゆく解禁予定の博多までで約2時間、札幌までで約3時間の予定だ。






グランクラス専用ラウンジでひとみと軽食をつまみながらリニアが来るのを待っているとすぐにやってきた。




全部で20席あるグランクラスの一番後ろの席に2人で座る。






「そういえば初めてかも。リニア。」




「え、あきらくん初めて?」




「うん、なんだかんだで初めて。


ひとみは乗ったことある?」




「東京からマカオ行くときはよく乗ってるかな。」






「あ、そうなのね。っと、着いたみたいよ。」




「早っ!!!!」




「でしょ?」




「そこはひとみじゃなくて重工の人がドヤ顔するところよ。」




「そうでした。」




荷物をまとめて電車から降りる。




着いたところは成田空港駅だ。


もちろん成田空港駅にもラウンジは設置してある。




ラウンジでひとみがどこかへ連絡を取っている。




「よし、いきましょう。」




「なんかだいぶ秘書っぽくなってきたなぁ。」




「もう人事部長じゃないからね!」




「それもそうか。」


ラウンジから地上に直通のエレベーターに乗り込む。


するとひとみが、階数の表示されていないダミーボタンを押した。


普段ならその階のランプはつくはずがないが、今回は灯った。




「あれ?なんで?」




「着いたらわかるよ。」




階数に到着したことを示すベルが鳴って、ドアが開くと広々とした駐車場があった。




「駐車場?」




「そう、それも関係者専用の駐車場。」




「なるほどね。」


気づけば運転手さんによってドアが開けられたセンチュリーが鎮座しており、後部座席に2人で乗り込む。




「で、プライベートジェットに乗るからこの車で飛行機まで行くと。」




「そういうこと。」




「われらがひとみちゃんジェット。」




「もうやめてよ。」




ひとみは名前を改称したがったが仲間みんなで止めたのはいい思い出だ。

今ではひとみちゃんジェットはMk‐17まであり、17機のジェット機を運用している。






2人を乗せたセンチュリーは音もなく飛行機のそばに滑り込む。


タラップを登ると、そこはもはや家だ。


CAさんもCAの制服ではなく、メイド服を着ている。


ただ、この服は自分のチョイスではなくひとみチョイスであるということは十分に申し伝えておく。






「そういえば、ひとみ、さっきのセンチュリー誰の?」




「ん?会社の。」




「俺知らないんだけど。」




「あ、」




「何台買ったの?」




「社用車として20台…。」




「センチュリーを?」




「20台…。」




「2000万ののセンチュリーを?」




「うん、全5色20台ずつの色違いで…。


あと2000万じゃなくていろいろいじってるから4000万弱…。」




「40億。」




「40億…。」




「まぁいいか。」




「えっ。」




「俺も5台で15億っていうときあったし。」




「ガムボールのとき懐かしいね。」




「まぁそれくらいならええんちゃうかな。」




「よかったー。ほんとはレクサスもLSも300台買ったんだよね〜。」




「え、ほんとはって何。

そしてそれいくら。」




「色々込み込みで1台あたり2500万だったから75億!」




「結局120億弱。」




「あっ…」




「まぁいいや。大したことない。」




「私が言うのもなんだけど大したことあると思う。」




「そうかな?」




そんな2人をボーイング747は関西国際空港に連れて行く。








「到着!」




「おつかれさんでした。」




「帰ろ帰ろー。」




「よーし、かえろう!」




2人はタラップを降りるとボーイング747を普段格納している個人用格納庫に向かう。


車で関空に来た時はいつもここに止めているのだ。

ちなみに現在関西国際空港は関西国際空港都市という名前になっており、

2024年から比べて面積は4倍以上の4000ヘクタールになっている。

泉佐野市の面積の過半数を超えたため、独立都市となった。

もちろんDAYSの息がかかっていることは言うまでもない。




ちなみに今日の車はトヨタGRスーパースポーツだ。


センチュリーやレクサスを大人買いしたり、まだ世に出ていないGRスーパースポーツに乗っていたりすることでわかるように、DAYSホールディングスとトヨタのつながりは深い。


株式だと、全部合計すると約15%を保有しているし、自分自身も一応社外取締役というポジションにある。






2人とも荷物はお気に入りのバーキンのみなので荷室がほとんどないこの車でも問題はない。


特別に、ハイブリッドどころか完全EV化したこの車のエンジン音はすこぶる静かである。






最近世間で出回る車は殆どがEVカーであるため、割とぶっ飛んだデザインの車が多くなった。


とはいえGRスーパースポーツのデザインが一際異彩を放っていることは抗いようのない真実だ。






関空から車で30分、もう既に住み慣れている帝塚山の我が家に到着する。


大阪のマンションは別宅という扱いだ。


今でもたまに使う。




車を地下駐車場に止め、2人分の荷物を荷物置きに置く。


すると勝手に荷物が壁に吸い込まれた。


これはもともとネタで置いてみた装置で、ダストシュートのように、勝手にクローゼットに荷物をもっていってくれる装置だ。




地下のエントランスで靴を脱ぎ2人で一階のリビングに向かう。




ひとみはエプロンを着て、冷蔵庫から作り置きしておいたおかずを取り出してテキパキと料理を作って晩御飯を完成させていく。




一度ひとみにお手伝いさんとか雇った方がいいか聞いたことがある。


すると、趣味を奪うなど怒られたので、大阪の家にいない間のみハウスキーパーさんを雇うことにした。






「はい、召し上がれ。」




「いただきます!!」




もう結婚して8年が経つ。


周りから子供はとか言われそうなものだが、一切無い。


自分としてもそこに固執するつもりがないので、とやかく言わない周りの人囲まれているので恵まれているなと思う。




なんだかんだ言って少子化なんてものは昔の話という風潮だ。


空前の好景気にも押され、今では出生率2.4を突破し、多子化多子化と言われている。






まぁ授かる時には授かるだろと思いながら、ひとみと美味しい手料理を口いっぱいに頬張る。






「おいしい?」




「すっごいおいしい。」




「よかった。」




「うん、よかった。結婚してくれてありがとう。」




「何よ突然。」




「ほら、結婚記念日だよ。」




「あらまぁ。」




そう。今日は結婚して8回目の結婚記念日。


2人の幸せな夜は更けていく。





~~~~~~~~~~~~~~


これまで長きにわたり本作をご愛読くださりまして

ありがとうございます。

もしかしたらお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、

新しく準備しておりました作品は

「放課後のピアニスト」です。

ちなみに豪運はあともう一話だけ続くんじゃよ。



カクヨムでは

「放課後のピアニスト 凝り性のなんでも極める大学生が今度はピアノをやるようです。」

https://kakuyomu.jp/works/16818023212677504363


という名前で連載をしたいと思います。

題材はピアノと音楽になっております。


「豪運」同様毎日更新で、できる限り頑張って更新していきますので

もし、ご興味を持っていただけましたら読んでいただけると幸いです。


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