第37話
せっかく大もうけしたはいいのだが、
ラスベガスの時のように、口座を作って、お金をどうこうして…というのは、もうめんどくさい。
なのでカジノのスタッフに、勝ち額から税金分を引いてもらったのだが、それで残った金額が今手元にあるこの1億香港ドルである。
とりあえず私は、まずこの大金を日本で換金するために、日本にも支店のある銀行発行の小切手を書いてもらい、端数のうち100万香港ドルだけ現金でもらった。
香港ドルは最高額紙幣が1000ドル札であるため、100万香港ドルといってもその大きさは、日本円の、一千万レンガとだいたい同じサイズである。
結構でかいなぁと思いつつ、併設されているホテルの紙袋をもらい、現金を無造作に突っ込み、自分1人では怖いのでカジノのスタッフとともに自身の宿泊するリッツカールトンに帰る。
エントランスで2人のスタッフに礼を言い、チップとして1000香港ドル紙幣を一枚ずつ渡す。
ロビーフロアに入ると、カジノからもうすでに連絡が入っていたらしく、GMが出迎えてくれる。
「こんばんは、霧島様。
私は当ホテルのGMを務めております、ジャック・ウォンでございます。」
GMは、にこやかな日本語で声をかけて来た。
タクシーの時と同様、思いもよらない言語に多少面食らったが、やはり日本語での接客はありがたいと思い、返事を返す。
「ありがとうございますGM。
そろそろ日本語が恋しいと思ってた頃だったので助かります。
どちらで日本語を?」
「父が横田に勤めておりましたので、私は小学校から高校まで日本で過ごしました。
そのあとはアメリカに帰って大学に進学したので、ずっと英語ですけどね。」
横田とは横田基地のことである。
なるほど、お父さんかお母さんが軍関係者の方なのね。
私が納得している中、ウォンは世間話を続け、自然な仕草で私を部屋までエスコートした。
内心で、
押し付けないホスピタリティが、やはり一流のホテルマンは違うな。と舌を巻いていた。
部屋に着くと、ウォンはどうぞごゆっくりお過ごしください。と一言残し去っていった。
部屋に帰ると、現金が入った紙袋から中身を出し、半分の50万香港ドルを、ドレッサーの引き出しに備え付けてあるセーフティボックスに入れた。
残り半分の50万香港ドルを財布とポケットに突っ込んで、とりあえず買い物でも行くか。とホテルを出てショップ巡りを開始した。
ギャラクシーマカオの中には世界の名だたるブランド品店が所狭しと並んでいる。
とりあえずバッグでも買うか。と、霧島は思い立ち、その立ち並ぶブランド品店を片っ端から巡っていった。
結局持っていった50万ドルでは足りなくなり、ある程度のところからホテルの部屋付けにしてもらい買い物を楽しんだ。
結局手持ちの50万ドルと合わせて、全部で100万香港ドルほど使い、ブランド品を買い漁り、実家の住所に送りつけておいた。きっと親はびっくりするだろう。
買い物をし終わったあとで、リッツカールトンのメインダイニングである麗軒中餐廳でディナーを食べた。
ちなみに、漢字が複雑で、読み方はわからないが、ライヒーンと言えばこの店を指すということだけはわかった。
中華料理店というと、大量の中華料理が所狭しと並ぶ光景を想像するが、やはり高級店だけあり一味違う。ここでは品良く少量が並べられた。
サービスも、よく目が行き届いており、素晴らしい時間を過ごすことができた。
ちなみにここの料金も部屋に付けておいた。
腹を満たした後は
部屋の総大理石造りのお風呂でゆっくりとし、ルームサービスでヴーヴクリコ イエローラベルとつまみを持って来てもらい、マカオの夜景を眺めながら悦に入っていた。
バスローブをまとい、ヴーヴイエローを手に待ち、マカオの夜景を悦に入って見つめる自分の姿を、スマートフォンのカメラのタイマー機能で写真を撮り、ひとみにそのまま送ってみたところ、
「悦に入りすぎててキモいし、1人でその写真を撮ろうとしてタイマーセットして頑張ってるのがキモい」との返信が来た。
ちょっとショックを受けたが、それもまた良いと思いつつ、マカオの1日目が終わった。
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