50万PV記念 間話 清水 恋したってよ。

ときは少しさかのぼる。

まだ霧島が結婚発表をしていないころの話。


「あの、ご飯行かない?」


「え、うん、いいけど。いつ?」


「時間はいつでも合わせられるから、いつでも大丈夫!」


「ほんと?なんか悪いなぁ。」


「いいのいいの!気にしないで!」


やった!

なんとかしてご飯の約束を取り付けることができた。


この前の食事会では大失態しちゃったからな。

なんとか挽回しないと。

しかも今回は2人きり!

否が応でも気合いが入るってもんよ。



思えばひと目見た瞬間から、俺は恋に落ちた。

あの大きなクリっとした目。

しゃらしゃらの髪、天真爛漫な笑顔。

彼女はよく笑い、よく話し、よく聞く。


とにかく良い子なのだ。


博多にはこんな子おらんかったっちゃけど!!!!

確かに博多は美人が多い。

けどなんか違うっちゃん!

まみちゃんはなんか違うとよ!

美人で可愛いだけじゃないと!

俺の直感がそうやって言っとるとよ。



俺、初恋ってやつば、知ったとです。




〜〜〜〜〜〜sideまみ〜〜〜〜〜〜〜


ついこの間一緒にご飯に行った清水くんから最近よく連絡が来る。

本当にたわいもない話をしてるんだけど、彼本当に話し上手だよねぇ。


暇な時は電話とかも付き合ってるんだけど、気づいたら1〜2時間とか結構ザラで。

すごいなぁと思っちゃう。



そんな彼がなんか妙に固くなっちゃって、ご飯どう?とか言うもんだから心配しちゃったよ。

どうしたんだろ。

何はともあれ、ご飯楽しみだなぁ。










〜〜〜〜〜〜〜side清水〜〜〜〜〜



「と、いうことでオシャレなご飯の店教えておくれ。」


「なーにがということでなんだよ。

しっかり唾つけちゃってさぁ。

なんかおもしろくねー。」


「頼むよぉ〜霧島ぁ〜。」


「やめろ!すがりつくな!粘液生物みたいに絡みつくな!!」


「お願いしますぅ〜〜。」


「仕方ねぇなぁ…。」



こうしてまんまと阪大一スマートな男霧島からおすすめのレストランをいくつか紹介してもらった。



お店も決まったことだし、まみちゃんと日付を詰めていざお食事!という段になった。

まみちゃんにお店の候補をいくつか送ってみると、ここがいい!というお店があったので迷わずそこを予約した。




そして、いざやってきたお食事の日。

この日をどれだけ楽しみにしてきたことか。

この日のために髪を切り、なんならすこしジムに通って体も絞った。

ちなみに、霧島は気づいてなかったけど、ひとみ嬢にはバレた。


「今日は飲むつもりないけど一応歩きで行くか。」

いつもよりちょっとだけオシャレをして、マミちゃんのお店で買ったスニーカーを履いてお店に向かう。




〜〜〜〜sideまみ〜〜〜〜


今日は月に一度ある大阪出張の日。

大体毎回3〜4日は泊まりで大阪に来ることになってもう長い。

心斎橋店の店長もずっと打診されてるんだよなぁ。

あんま乗り気じゃないからずっと断ってるけど、やってることはほぼ店長なんだよね。

西日本統括とかもやらされてるけど、よくわかんない。

自分より年上の人の悩み相談とかよくわかんないよ…。


あー、だめだめ。

愚痴言ってても仕方ない。


せっかく今日は清水くんとご飯なんだから、楽しまなくちゃ。

ちゃんと定時で仕事終わらせるぞ〜!!




と思ったけど、予想外に仕事押しちゃった…

連絡はしたけど1時間も待たせちゃった…

清水くん怒ってないかな、、、、、



「清水くん!ごめん!待たせちゃって!」



〜〜〜〜〜〜〜side清水〜〜〜〜〜〜〜


まみちゃん遅れるってさ。

仕方ないやな、社会人だし

俺も押すことあるし。

まみちゃんも店長さんだし。



むしろ遅れても来てくれることに対して嬉しく思おう。



「おっ、きたきた。」



「ほんとにごめんね!」



「大丈夫大丈夫!」

こっちに駆けてくるまみちゃん可愛かったからOKです。


「本当にたくさん押しちゃってごめんなさい…。」


「むしろ来てくれてありがとうだよ〜。

大丈夫だった?」



「ぜんぜん!

ちょっとトラブったけどちゃんと納めてきました!」


「さすがぁ〜。」

思わずでれっとしちゃう。


開始の時間は少し押しちゃったけど、何はともあれ楽しもう!



今日はフレンチのお店になりました。

フレンチとは言っても、そんな形式ばった敷居の高いお店じゃなくて、もっとざっくばらんとした、大衆向けの。





~~~~~~sideまみ〜〜〜〜〜〜



結局1時間も遅れちゃった。

でも清水君は一言も怒らなかった。

すごいな。

私なら帰っちゃうか、怒ってるアピールくらいはしちゃうかも…

器が大きいなぁ。

お店の時間遅らせるのだって頭下げてくれたはずなのに。

そんな風、ちょっとも見せない。


すごいなぁ。



~~~~~~side清水〜〜〜〜〜〜



「今日は飲む日?」


「ううん、明日もあるからそんなにたくさんは飲めないかな。」


「そっか、じゃあ俺も乾杯だけくらいにしておこうかな。

注文は巻かせてもらってもいい?」


「もちろん!ワイン分からないから助かる!

赤でも白でもどっちでもいいよ。どっちも好き。」


まみちゃんの「好き」の一言にクラっと来るが理性で踏みとどまる。

俺は酒には詳しくないが、こういうお店で恥をかかないように、

一通りの教育はされている。

数少ない実家に感謝したいことのうちの一つだ。


「すみません。今日はこれをグラスでお願いします。」


「ウィ、ムッシュー。」


注文したのは赤ワインのユドロ・ノエラ

ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・スショ 2013。

ボトルで頼んでたら5~6万円はするんじゃないかな?

グラスだと3000円って感じ。

ワインとしては若いんだけど、ブドウの木が古い樹だからうまみが凝縮されててすごく味が深い。

ちょっと気になってて、すっと飲みたかったんだよね。

ちょっと背伸びしたい日にはこれくらい頼んでもいいかもね。

さすが霧島セレクト。いいワインそろえてますね~。



「清水君すごいね!わかるんだ!」


「たまたま知っとるのがあっただけたい。

気になっとって飲んでみたかったっちゃん。」


「お、出た博多弁。」


「何か気が緩むと出てくるっちゃんね~。

まみちゃんと一緒やけん、気が緩んどるんかもわからん。」


「なんそれ~」


「すぐ鎧脱がされるけんね~。」


「ほんとかなぁ~。」


相変わらずまみちゃんは距離を置かない人で

すごく話しやすい。

この人の前だとなんかとりつくろえないんだよなぁ。

付き合いたいっていうよりむしろ、一緒にいたいなって思えるんだよ。


どっか行くのも多分楽しいけど、家でゆっくりする時間を大切にしたいなって思える。


まだまだ会話の内容は霧島に関することが多いけど、最近はそれもだいぶ減ってきたように思える。

急ぐんじゃなくて、まみちゃんとはじっくり関係性築いていきたいな。


まだまだ始まったばっかりなんだから。



~~~~~~sideまみ〜〜〜〜〜〜



「今日も楽しかったね。いつもありがとう。」


「こちらこそ。むしろご飯付き合ってくれてありがとうございました。」


「いえいえ、一人でご飯食べることにならなくてよかったよ。」


「じゃあさ、もしよかったらなんだけど、また次も大阪来るとき、夜ご飯1回だけ俺に時間くれませんか?」


「えっ?」


「次も、できればその次も。できたらこれからずっと。」


「あの、えっと、」


「そんな先のことわかんねーか!

嘘嘘!また次もよかったら一緒に行こ!」


「うん!ぜひ!」



私は店の前で清水君と分かれた。

びっくりした~。

まさかそんなプロポーズみたいなこと言われるなんて。


でも、さっきの清水君の顔、ちょっとカッコよかったかも。

次も楽しみにしてるよ、清水君。

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