第98話

「そういえば、なんで私達この島に来たの?見学だけ?」


翌日、朝食会場に使っている大きなホールで、ひとみがいよいよ引き金となる質問をやっとしてくれた。



「実は今から結婚式をします。」




「え?!?!?!?!?誰の????




いや、え??????






はっ!?!?!?!?」




「正確にいうと、明後日です。」




「えっ。




えっ!?!?!?」




「そしてひとみのご両親と親戚、わたしの両親と親戚は今この島に向かってきています。」




「式場は?」




「この島に作りました!」




「!?!?!?!?」




「ついでにこの島も買い取りました!!」




「「「「私たちがこの島のオーナーです!!!」」」」




「!?!?!?!?!?!?」




「ひとみと見てたパンフレットは実は式場のデザイン案です。2人でこの式場にしようって言ってた式場をつくりました。」




「日本で見たのは?」




「あれはショールームです。」




「だから外装は工事中になってたのか…。」




「ウエディングプランナーさんと話を詰めましたが、あの方、実はこちらの式場のプランナーさんです。」




「初めて明かされる真実がどデカすぎてついていけない。」






「それでは実際に我々が式を挙げる会場に向かいましょう。」




道中のひとみは頭を抱えていた。




「こちらが結婚式会場です!」

みんなに手を引かれ結婚式場となるチャペルに連れていかれるひとみ。



ひとみは膝から崩れ落ちた。




「想像以上に外観が好みすぎてつらい…。


好みとドンピシャ過ぎる…。


えっ、てかなんで知ってるん?!?!?!?!?!?


これ私が描いた絵の建物なんだけど!?!?!?!??!?!」




「中身はこんな感じです。」




「憧れの結婚式場と同じすぎてつらい…。


妄想してた結婚式場と同じ…。」




そう、結婚が決まってからひとみはあきらに、どんな結婚式がしたいか、どんな式場であげたいか、己の妄想の全てをぶつけ続けて来た。


それが故にあきらも計画を進めやすかった。




事あるごとに、最近はこんなのあるらしいけどどう?


と、ひとみにお伺いを立てて話し合って来た。


このおかげでプランナーさんとの打ち合わせもとてもスムースに進んだ。


そもそも、ひとみがやりたいことは全てやる方向で進めたため、あまりのスムース具合にひとみも不思議がっていたが、そこはなんとか押し通した。






「結婚式の招待状を送る人リストを早めに作って提出させたのはこういうことか…。」






「そうです。どうですか?こんなサプライズ。」




「もー。びっくり。やばい。」




「ごめんね、こんなに驚かせて。」




「ううん、すっごいドキドキしたよ!


嬉しかった。すっごく!!!


でもおかしいと思ったんだよね、やりたいって言ったことなんでもできるから、どうなるんだろうって。」




「そりゃもう、それに合わせて式場設計するんだから大体なんでもできるよ。」




「あ、ドレスは???」




「日本で決めたやつ空輸しといた。


カラードレスは一応決めたやつも持って来てるし、そもそも結婚式場を開業するつもりだから何百着かは用意してるよ。」




「しゅごい、全部用意されてる。」




「大サプライズでした!!」




「感服いたしました。」




計画を進めていたメンバーはサプライズが成功して胸をなでおろしていた。






結局、式に参列するメンバーは3桁人まで膨れ上がった。


海外挙式で、しかも馴染みがない国ということもあり、ほとんど来れないかと思って船を用意していたが、招待状を送ったほとんどの人が参加を表明してくれたので、交通費はこちら持ちで関空まで来てもらい、関空からタヒチまでチャーター機を朝晩の2便手配した。


タヒチからこの島まで船で1〜2時間程度なので、タヒチに到着した人から順にあきらたちの船を使ってピストン輸送することに決まっている。


また、両親などの船で来る人たち組は飛行機組より1日早く到着することになっている。






式場の視察を終え、細かいところの打ち合わせを済ませたところでそろそろ夜が来ようとしていたため一行は部屋に戻る。




ちなみに晩御飯は式のコース料理の大試食会だった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜


あきら、ひとみroom






「ほんっとにびっくりしたよ、あきらくん。」




「いやね、悪いと思ったのよ。


でも驚かせたかったのといたずら心で…。」




「たぶん、これほどスケールが大きくて、理想通りの仕上がりだったから怒りが湧かないんだと思う。」




「まぁ結婚式の主役は花嫁だからね。


その辺のサプライズ具合は相当気にした。」




「ドレスもプランも式場もちゃんと決めてたしね。」




「その会場と日にちだけ秘密だったっていうだけで。」




「いや、その二つがでかいんだよ!!」




「長期の旅行行くから開けててねって言ったじゃん。」




「まさかこうなるとはね!」




「まぁ夏休みですから。」




そう、今大学は夏休み真っ盛り。


ほぼ二ヶ月丸々休みである。






「どうりで入籍してからえらいエステに行かせるわけだよ。


おかしいと思ったよ。


しかもやたら高いコースだし。」




「うん、すっごい綺麗だもん最近。」




「それは感謝してる。」




「よかった。」




「私は知らず知らずのうちに結婚式の準備をしてたってことなのね…。」




「そういうことです。」




「ほんとやり方うまいわ。全然気づかなかった。」




「いや、ほんと怒られるかと思った。」




「怒らないよ。


でも中途半端にやってて人に迷惑かけてるようなら怒ってたかも。」




「怒られなくてよかった…。」




「ちなみに、この計画知ってたの誰?」




「……最終的にはひとみ以外の全員…。」




「マジか。」




「むしろそれでよくバレなかったと思う。」




「ほんとあきらくんってそういうギリギリの勝負絶対勝つよね。」




「俺には幸運の女神がついてるからね。」


私はなんとなく腕時計を見る。










一方その頃他のメンバーは。








「それでは、サプライズの成功を祝って」




「「「「カンパーイ」」」」




宴会が始まっていた。




「いやぁ、ヒヤヒヤしましたが成功してよかったですな!」




「まったくだ!」




「まさかこんな早く完成するとは…。」




みんながそれぞれに感想を言い合い、打ち上げをしていると、船で来る組が到着し、宴会に合流した。




「サプライズは成功した?」




「もちろん!」




「よーし、よくやった!」




計画の成功を知らされ、幸長、幸隆、あやめ、ひろみ他多数の親戚たちや、地元の友人、会社関係者たちが互いに互いをねぎらい合う。


その空気はもはや戦友とも呼べる空気感だった。






そうこうしていると、ひとみとあきらも合流した。




「えっ!!


お母さん!お父さん!もう着いたの?」




「えぇ、もちろん。」




「ちゃんと行程どおりだよ。」




「やっぱり、2人もこの計画知ってたの?」




「むしろ率先して進めた。」




「私はアドバイザーとして製作総指揮を務めたわ。」




「うちの両親がかなり黒幕に近かった件。」




「黒幕だなんて人聞きが悪いわ。」




「そうだそうだ。ひとみの一生に一度の晴れ舞台の一つだからな。」




「一生に一度とかいう割に晴れ舞台何回も作ろうとしてるし。」




「まぁいいじゃないか。式場も見たんだろ?」




「うん、好みにドンピシャだった。」




「そりゃママが練りに練ったデザインだからな。」




「そうよ、あなたの好みに合わせて考えたんだから。本職のデザイナーさんと設計士さんと。」




「予想外に本格的すぎて…。」




「ちょっと前にあなたに絵を描いてもらったでしょ?どんな式場で挙げたいかっていうテーマで。」




「うん、違和感は感じたけど、描いてるうちに乗ってきて楽しかった。」




「あれを叩き台にしてパンフレット作ったのよ。」




「こんな理想通りの式場のパンフレットおかしいと思ったわ。」




ひとみが親子の会話に花を咲かせているとあきらもやってきた。






「長旅お疲れ様でした、お義母さん、お義父さん。」




「まずはサプライズ成功おめでとう。」




「さすがはひとみが選んだ男なだけあるわ。


うちの娘の目に狂いはなかったわね。


こんな面白い式になるなんて。」




「ありがとうございます。


お義母さんに至っては計画にも参加していただいたし。 」




「いいのよ。


パパだけに楽しい思いさせてらんないわ。」




「今日明日はどうぞ親子水入らずのお時間をお過ごしください。」




「ありがとうあきらくん。」




「明後日の式は楽しみにしてるからね。」




「明後日の式で流すムービーに今日のハイライトも入れますんで、ぜひ楽しみにしといてください。」




「えっ、あきらくんどういうこと?」


ひとみがうろたえ始める。




「今日サプライズした時のひとみの驚きの表情実は動画撮ってある。


ほら、そこと、ここと、あとそれと、あれと、後遠くに見えるあれもカメラだよ。」




まさかの告白にひとみの顔が真っ赤になる。




「それ流すの!?」




「絶対流すでしょ!


サプライズが成功した時の顔は、お義母さんもお義父さんも見たいと思うよ?」




「そうだそうだ!」




「むしろその顔を見るために計画したようなものよ!!」




「そんなぁ〜。」




「楽しみにしといてくれよな!」




「もう!あきらくんのバカ!」




そうは言いつつも嬉しそうなひとみと、楽しそうな笑顔のみんなであった。

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