第62話 霧島 アウターを買う。

学園祭も終わり、大学には本格的に冬の季節がやってこようとしていた。




しっかりとした上着が必要な日が増えてきて、そろそろ冬支度をしないとな。

と考えていたところで1つのことに気づいた。






冬用の厚物上着がない。

しいて言うならジルサンダーのロングPコートぐらいか。


いや、他にもあることはあるが、高校時代から使っていたものですでにボロボロなのである。




ということで、阪大が誇るオシャレ番長のひとみに相談した。






「メンズの上着でお勧めってある?」




「メンズは詳しくないけど、モンクレール とか着とけば寒さはしのげる感はある。」




「なるほど。それでは買いに行きましょう。」




「合点承知」






私は今、新居が完成し、入居できるようになるまでひとみの家に暮らしている。


ひとみの家は、私の住んでいたしょぼい家と違って自走式の駐車場があり、各部屋に二台分が確保されている。


ひとみは自分の車を大阪に持ってきていないので当然二台分のスペースがそのまま空いたが、新たに2台分契約し、そこにLXとi8を駐車している。

ひとみは、実はマニュアル車のアウディR8を乗りこなす。

じゃじゃ馬なのだがその車は現在芦屋にあるひとみの実家に置いてある。




i8を買うにあたり、スーパーカーは私の車とかぶるから買ったらダメだと、どっちかしか乗らなくなったら車が可哀そうだと散々伝えておいたのにどうして買ったのかと、怒られた。


納車後、実際に車を見ると以前の怒りが復活したようだったが、

i8を買った理由をもう一度誠心誠意説明し、実際に乗せてみると、

これはいい車だと、許してくれた。

i8はハイブリッドなので音が静かなのだ。

ひとみがR8を実家でしか乗れていないのは、エンジン音が少し爆音なところがネックだったからなのだ。

住宅地で乗り回すには音が、ちとうるさい。

マンションの自走式の駐車場で乗り回すと、音が響いてもう少しうるさい。



そんな2人が今日乗るのはi8である。


行き先は阪急メンズ館だ。




車をいつもの駐車場に置き、歩いて店に入り、エスカレーターでとりあえずモンクレールの店に向かう。


店に入るといらっしゃいませと店員さんが迎え入れてくれた。




「ね、あきらくんこれどう?」




「もーちょっと着丈長いのがいいなー。


お、これとかどう?」




「この色は似合わないよ」




「そうかぁ。」




2人があーでもないこーでもないと言っていると




「お客様、実は今フランス本国でしか扱ってない商品が来てるんですけど、ご覧になりませんか?」


と、店員さんが勧めてくれた。




2人はその申し出に感謝して店の奥に入っていった。






10分ほどして2人が店を出るときには大きなモンクレールの紙袋を2人が抱えていた。




「買っちゃったね。」




「うん、お揃いで買っちゃった。」




店を出て、帰りがてらいろんな店を冷やかしていると、気になった商品がいくつかあったので全部購入した。



プラダではスイングトップとレザートート。


ディオールでは大量買いをして、

シャツ、キャップ、パーカー、ニット、デニム、セットアップ上下、バッグ


バーバリーでも大量買いをして、シングルロングトレンチコート、キルティングジャケット、バッグ、ビーニー。


セリーヌでもマルジェラでも山ほど買った。



荷物が2つになり3つになり持てなくなりそうになったところで店員さんが気を利かせてくれ、全て一階のクロークで預かってくれることとなった。


ちなみにひとみはこれ以上に購入している。




「ひとみと買い物行くと、買った量がわからなくなるくらい買ってしまう。」




「ふらっとBMW行って2000万弱の車買う人が言うセリフじゃないよ、それ。」




「すいませんでした。」




霧島はひとみに待ってもらって、車を取りに行き、店の前に車を回した。


ひとみに連絡すると、二人の店員さんを伴って店の前に出てきて、車に荷物をどんどん積んで行く。


i8は荷物置きがかなり少ないので、ギュウギュウの車内となってしまって、ひとみは笑っていた。

家を出るときにはそんなに買い物する予定ではなかったのに。


車を走らせながら、世間話をしていると車の話になった。

「そういえば新しいLX出てたよね、買い替えるの?」


「そうそう、出てたねぇ。一応案内来てたから、試乗しに行ったりしたんだけどなんか違った。」


「ちがう?」


「うん、用途的にも、運用的にもっていうのかな。」


「というと?」


「新しいLX買うならエグゼクティブっていうのにしようと思うんだけど、あれは後部座席が素晴らしい車なのよ。」


「ほうほう。」


「我々は基本乗ってて楽しい車で、+アルファ荷物がよく乗るとかスピードが速いとか。」


「確かにね。」


「あの車の良さを最大限生かすには運転手さんが必要でさ。」


「なるほど。」


「あとあの車、大きいのに荷物あんま乗らないのよ。」


「まじか。」


「そう、その代わり車内の音は静か。」


「なるほど。」


「今は二人で出かけたり、いろんなお買い物したりしたいじゃん?

だから今回はお見送りかなって。

今の車に愛着もあるし、ちょうどいい感じはあるし。」


「確かに!私も今の車好き!」


「しばらくはLXとこのi8の二台体制でいいかなって思ってます。」


「そうしましょう!」


「i8もちょっと古くなってきたけどこの車も手放す気はないよ。

新しい車を買っても、この車は保管して見て楽しむ。」


「賛成!」



そんな話をしているとあっという間に家についた。

車を地下の駐車場に止めて、大量のショッパーを二人で抱えて、

やっとの思いでひとみの家に入って、荷物を置き、床に並べて悦に入る。



とりあえず今日買ったプラダのスイングトップを羽織ってみた。

ひとみは本日のコーデにトムフォードのサングラスを追加していた。


「「似合うねぇ。」」

家でおしゃれしてみるとまた出かけたい欲が出てくる。


「せっかくまだ夕方だし、外でかけるモードだからご飯でも食べに行く?」




「いいね!あきらくんセレクトで!」




「任せろ!」




2人はまた車に乗り、また梅田方面に向かった。




「店は決まってるの?」




「もちろん。今日はホテルディナーです。」




「ほう!梅田方面というとウェスティンかな?」




「そこも迷ったけど今日はリッツ!」




「てことは日本料理だね!花筐?」




「ご名答!」




「あそこめっちゃ好き!楽しみ!」




こんなの大学生の会話でもないし、大学生の生活でもないなと思いながら腕時計と中村翁に感謝した。




ホテルに着くと何度か通ったので馴染みになったドアマンが迎え入れてくれ、車を預かってくれた。




2人は迷いなく五階の花筐に向かう。




「霧島ですけど、席空いてますか?」




「いらっしゃいませ霧島様、ただいま席をご用意いたしますので少々お待ちください。」




「はい、ありがとうございます。」




「あきらくん予約してなかったの?めずらしいね。」


ひとみがあきらにそう小声で言うので、あきらも小声で


「クレジットカードのステータスで予約なしで入れるんだよ」


と答えた。


するとひとみも


「あ、アメックスのブラックか。」


と納得していた。




程なくして2人が席に案内され、1人30000円のコースを楽しんだ。


会計の際には今日は突然来て無理を言ってしまったので心付けとして1万円程多めに支払い、皆さんで美味しいものでも食べてくださいと伝えておいた。




「あきらくんもそういうことするようになったんだなぁー」




「まぁね、いくらできるからと言っても突然来られたら向こうも迷惑かもしれないし、いろんな人と接するうちにそういうのも覚えたよ」




「成長を間近で見れて嬉しいです。」




「ありがとうございます。」




そんな会話をしながら2人はマンションに帰った。

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