第104話 霧島 みんなで旅行に行く
ある日の午後、たまたま予定のない日が近々4人重なるということがわかった。
「京都行こうか!」
「おぉー!!」
「wow!」
「やったぜ!」
上からあきら、ひとみ、ダニエルの嫁さんのマーガレット、ダニエルの順の言葉である。
「ダニエルずっと行きたいって言ってたからな。」
「そうだ!キョートだ!」
「わたしもキョートという名前だけは聞いたことがあります!
曰く現存する桃源郷だと!!!」
「そ、そうなのかな…?」
若干困惑するひとみ。
というやりとりがあり、いよいよやってきた京都に向かう日。
車はあきらのLEXUS LX570。
一行はすでに出発し、高速道路を京都へと向かいひた走る。
「この車の乗り心地は最高だな!」
「そりゃ日本の高級車メーカーがフラッグシップSUVとして出してる車だからな!」
「俺も欲しくなっちゃったぜ。」
「はははっ」
あきらはこのときただの世間話のようなつもりで聞いていたが、この京都旅行の数日後にダニエルはあきらを連れてLEXUS大阪に向かい、同じLXの色違いを購入した。
運良くすぐに納車されたが、そのままカスタムショップに持ち込み、ガチガチにいじりまくってしまったのはまた別のお話。
道中にて。
「そういえば、あきらはガムボール4000ってしってるか?」
「あー、なんか聞いたことある。」
「ロンドンから車で世界中を走るイベントなんだけどな。」
「すごいな、それ。」
「出たい?」
「ちょっとだけ。」
「俺はガムボールの後援やってるんだけど、日本に誘致しようかなと思ってな。」
「できるのか?」
「もちろん。何コースかもう案が出ててその中から投票で選ぶって感じだな。その案のうちの一つに日本が入ってる。」
「じゃあ出る!」
「流石だな!参加費4万ポンドだけどいいか?」
※4万ポンド=約600万円
「ケチくせえこというなよ、ブラザー。」
ほんとは出たすぎてワクワクしててたまらなかったあきら。
「最高だな。」
「スポンサーとして1000万ポンド出すぜ。」
※1000万ポンド=約15億円
「さすがやることの桁が違うぜ。
それだけ出してもらえりゃ確実に日本コースにできるぜ。」
この1000万ポンドのおかげで、ガムボール4000のコースには日本が組み込まれ、ガムボール4000というタイトルにはKIRISHIMA presentsという冠がついた。タイトルのことを大会直前に知ったあきらは恥ずかしすぎて枕に顔を埋めてバタバタした。
「何面白そうな話してるの?」
ひとみが食いついてきた。
「ガムボールに出てみようってことになって。」
「何?ガムボールって。」
先ほどダニエルから受けた説明をそのままひとみにも繰り広げるあきら。
「それめっちゃ面白そう!」
「ひとみも出る?」
「出たいは出たいけど、私あきらくんの助手席でいい。
なんか絡まれても怖いし。なによりめんどくさそう。」
「なるほど、了解。」
「でも出るなら新しく車買わないとね!」
「一応ほとんどみんなスーパーカーで来るぜ。」
「去年の優勝はなんの車だったの?」
「ケーニグセグのアゲーラね。フェラーリ、ランボルギーニで普通って感じよ。ちなみに私は広報として裏方に徹してるわ。」
マーガレットが答える。
マーガレットはアメリカでは時々モデルをしている。
「ワオ!じゃあうちはAMGのプロジェクトワンかトヨタのGRスーパースポーツプロトタイプでも手に入れようかしら?」
「そいつは最高にクールだぜ。」
「どっちも市販化されてないけど手に入るの?ひとみ?」
「なんとかなるでしょ。」
「さすがは結城家。」
「あきらくんだってトヨタの大株主でしょ。経営陣が五体投地するレベルの。」
「あきらはあのトヨタの株主か!」
「まぁそうなんだけど。」
「でもそんな大会に出るなら最低でもマクラーレンセナレベルは手に入れないとね。」
「がんばりまーす。」
ちなみに大会は真夏に行われる。
ガムボールの話で盛り上がっていると京都についた。
「アメイジング!京都だぜ!」
「すごい!エキゾチック!ワンダフル!」
寺社仏閣がだんだんと街に増えてくると俄然テンションが上がりまくる外国人組二人
「京都は何回か来てるんでしょ?」
疑問を持つあきら。
「そうよ、別荘も建ててるんでしょ?」
同じく疑問を持つひとみ。
「私は初めてよ?」
と、マーガレット。
「もちろんだぜ!何回来ても大好きな街京都だ!京都のために日本語を勉強してるんだぜ!
あと別荘は現地も何も見なかったけど、土地を買って好みに作ってもらってるぜ!」
たしかに、ダニエルは日本語がそれなりに使える。最近は日本で暮らしても日常生活に問題ないレベルで使えている。
マーガレットはまだまだ勉強中といったところだが。
「別荘ってそんな簡単に作れるんだなぁ〜。」
半ば放心するあきら。
「場所はここだぜ!」
ダニエルがスマホを見せてくれたので場所を確認すると
「嵐山か!いいとこだなー!」
「広さは1000平米くらいだぜ。」
「300坪!すごく上品な広さ!」
スマホの電卓アプリで素早く計算するひとみ。
「だいぶ完成に近いらしいから、あとで行ってみようぜ!」
「よっしゃ!」
「別宅作る時の参考にしようね、あきらくん!」
なぜか他人の家というものにテンションが上がる日本人組の二人。
「ところで今日泊まるのはどこなの?」
もっともな疑問を呈するマーガレット。
「そういえば言ってなかったね。
泊まるのは俵屋旅館だよ。」
「なんだって!?あのTAWARAYAかい!?」
「Wow!アメイジング!!!TAWARAYAに泊まれるのね!?」
「有名なの?」
あまり馴染みのないひとみは疑問を持つ。
「某ジョブズの定宿よ。」
「あぁー!なるほど!それは凄そう!」
旅館の駐車場に車を停めると、すぐに男衆がやってきて荷物を預かってくれ、中に案内してくれる。
「さすがホスピタリティがすごいな!!!」
「京都ってすごい!!!」
外国人組のテンションはただただ上がるばかりである。
今回は夫婦が2組なので2つ部屋を取ってあり、隣同士だ。
チェックインを済ませ、晩御飯はせっかくなので部屋でいただくことにする。
ダニエルたちは、旅館の玄関に下足番の人がいることにまず感動し、建物の調度品の一つ一つに感動し、常に感動しっぱなしだった。
もちろん、日本人である我々も包まれるようなホスピタリティと空気感に一瞬で虜にされたことは言うまでもない。
館内説明で、旅館の人が
「ここは先代主人の夫、故アーネストサトウ氏の〜」
という説明を受けて、日本人組2人は!?となったが、よくよく聞いてみると明治時代の外交官アーネストサトウ氏とは別人と分かった。
こちらのアーネストサトウ氏は写真家のアーネストサトウ氏の方であり、納得した。
やはり先代当主の旦那さんが芸術家ということもあり、館内の随所に文化財級の芸術品が何気なく飾られており感動してしまう。
センスが凡百のものとはかけ離れている。
同じ、ホテルを経営するものとして感じるところがある。ダニエルもおそらくそうだろう。
荷物をそれぞれの部屋へと送り届けてもらったところで4人は明日の打ち合わせをする。
「今回は二泊三日の予定だけど、ダニエルとマーガレットはどこか行きたいところある?」
「別荘の進捗具合だけ入れてくれたら問題ないぜ。」
「私はお寺に行きたいわ!あと赤いゲートが沢山あるところ!」
「あぁ、京都伏見稲荷大社ね。」
「あ、そこ私も行きたい。」
「じゃあ明日は伏見稲荷大社とその周辺を回るようにしようか!」
「「「異議なし!」」」
「じゃあまた明日の朝、ご飯食べたら集合で!
朝10時ごろにはここに集まろうか。」
「OKよ!」
「わかったぜ!」
そうして2組に分かれた一行は部屋に行く。
旅館の男衆によって案内された部屋を見たダニエルとマーガレットは大いに感動したそうで、最初は大きなリアクションをしていたが、最終的には感動しすぎてその感嘆の声が小声になってしまったそうだ。
部屋に戻ったひとみとあきらは料理を食べながら明日の予定を練っていた。
「ダニエルは酒が好きだから、伏見の造り酒屋も巡ろうかと思うんだよね。」
「それいいと思う。お土産にもなるし。あとは東福寺、三十三間堂、清水寺とか段々と北に上がっていく感じで見ていくっていうのは?」
「そうだね、そうしよう!」
「2日目は1日目の反応を見てからまた夜に決めよっか!」
「了解!」
ダニエルマーガレット組は料理にも感動していた。
後から聞いた話ではあるが、特に、マーガレットは俵屋の料理を食べる芸術品だと評し、一口は一口を慈しむように、大切なものを愛でるように食べたとのこと。
ダニエルも京都には完敗したぜと言っていた。
こうして2組の夫婦の夜は更けていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます