第105話

「Wow…」




「Amazing…」




「これは…」




「壮観ね…」






京都伏見稲荷大社つき、千本鳥居を見た4人の感想はこんな感じだった。






「ヘイブラザー、ここにはなんでこんなにたくさんのゲートがあるんだ?」




「ダニエル、これは鳥居と言うのよ。」




「それわたしも気になった!なんでなの?」




「それは、江戸の終わり頃から、鳥居をここに奉納すると願いが『通る』と言われていたからだな。それでいろんなところからいろんな人が鳥居を奉納した結果、この稲荷山は鳥居だらけになったらしい。1万くらいあるらしいぞ。」




「なるほど。よし、じゃあ俺も鳥居を奉納しよう。」




「じゃあ俺もやっとくか。」




「「わたしも!」」




神社の人に聞くと、社務所で受け付けてくれるらしいとのこと。


そして言われた通りに社務所に行って手続きをする。


なんでもサイズも様々あるらしく、4人で話し合った結果、扱いのあるものの中で一番大きな、1本130万円程の10号鳥居を奉納することにした。


奉納するにあたり、誰が奉納したのかわかるように鳥居には名前を書く。


なので、財団、投資会社、ひとみと自分の両親など近しい人々の名前を挙げていくと、最終的に100本近くになることがわかったので、キリよく合計100本奉納した4人だった。


お金の請求は会社に回してくれることになった。




社務所のお姉さんに、10号100本で!と言うと青い顔になり、えらい人を呼びに行った。


するとえらい人がすぐにやってきたが、その人も青い顔をしていてさらにえらい人のところに連れて行ってくれた。


最終的に連れていかれたところにいた神社で一番えらい人が直々にお話をしてくれたり、お祓いをしてくれたりしたのは思わぬラッキーだった。






「いいことするといいことがあるなぁ。」




「ほんとだね。」




「日本には何かそう言うことわざがあるのか?」




「因果応報という言葉がある。


良い方をすれば良いことが返ってくるし、悪いことをすれば悪いことが返ってくるってことだな。」




「いい言葉ね!」


マーガレットの目が輝いた。




「会社のモットーにしよう。」


ダニエルの目も輝いていた。




どこか遠くでコーーーンと狐が鳴いた気がした。


狐の声が聞こえた気がしたのでなんとなくだがお供え物がしたくなった。


「お供え物もしていくか。」




「「「賛成!」」」




「こんなこともあろうかと用意しておきました。」


そう言って背中に背負っていたサンローランのリュックサックから日本酒を出す。




「珍しくリュックを背負ってたから何事かと思ったよ!」


ひとみにもばれてなかったようだ。




「「Amazing!!ninja!!」」


外国人2人に対し日本人2人が突っ込む。


「「いや、忍者ではないよ。」」




「やっぱり神社には日本酒でしょ。


実は灘の地酒を用意しておいたのです。」




「さっすがぁ〜」




3人から拍手をもって褒められる。


その日本酒をもって本殿まで向かう。


すると折良く本殿の中に綺麗で可愛く若い巫女さんがいらっしゃったので、「お供えです。」と渡すととても嬉しそうな顔をした。




「いやぁ!ありがとうございます!


宇迦御魂大神様うかのみたまおおかみもご眷属がたくさんいらっしゃって大変なんですよぉ!」




「いや、喜んでいただけて良かったです。」




「しっかりとお伝えしておきますね?


お供えの時、宇迦御魂大神様にお名前をお伝え申し上げますのでお伺いしてもよろしいですか?」




「霧島あきらと申します。こちらは奥さんのひとみ、アメリカから来た友人のダニエル・ゴールドウッド、その奥さんのマーガレットです。」




「はい、ありがとうございます。


しっかりとお伝えしておきますね。」




「ありがとうございます。」




巫女さんはそういうと本殿の奥に消えていった。






「あれ、あきらくんお酒は?」




「さっき供えてきたよ?」




「えっ、もう?」




「もうも何もお話までしたでしょ?」




「「「???」」」




「?」




「まぁいいじゃないか!」




「そうだな!」




あきらはなんとなく狐につままれたような思いだったし、そのほかの3人も狐につままれたような顔をしていた。


その表情のまま4人は伏見稲荷大社を後にした。






「続いては京都東福寺です。」




「「「おぉー」」」


思ったよりリアクションが薄い3人。




「リアクション薄くない?」




「京都五山の一角ってことしか知らない。」




「「聞いたことがない。」」




「なるほど。では少し前知識を。」




3人はまばらな拍手をする。




「東福寺の開山は聖一国師という人で、その名前は花園天皇から賜ったものです。日本の禅僧で初の賜号をいただいた人です。そして日本の静岡茶の原種を日本に持ち込んだ人で、水力での製麺の技術もこの人が持ち込んだもので、博多祇園山笠もこの人が始めました。」




「「「!?」」」


3人の顔色が変わった。




「そして、名探偵コナ◯の迷宮の◯字路にも登場しています。」




「「「!?!?!?!?!?」」」




ダニエルの目がギラついている。


どうやらオタクだったようだ。




「そして、この東福寺は禅寺の中で伽藍という寺が備えるべき施設が日本最大級の大きさを誇ります。」




「「「おぉー!!!」」」




「みんなのテンションが上がってきたところで到着しました東福寺でございます。」




盛大な3人の拍手に包まれ車を降りる。


東福寺はやはりその大きさに圧倒される。




中に入るとその庭の絶景に4人はしばし絶句する。


東福寺には広い境内を流れる川があり、その川を渡るための橋がいくつもかけられている。




その橋から見る景色の全てが絶景であり、またここでも4人は絶句する。


たくさんの庭を見て、市松模様を発見して盛り上がったり、御本尊の天井にある龍の絵にダニエルとマーガレットがビビったり、収蔵するたくさんの重要文化財を見て目の保養をしたりした。




「ここにも寄付をしたい。こんなたくさんの美術品を見て、心が安らいだのだからなんらかの形で貢献したいんだ。」




「私もよ!」




「ありがたいことだな。ちょっと聞いてみよう。」




ここも社務所で聞いてみると、ちょうど瓦の張り替え時期で寄進できるらしい。




「こちらでお受けさせていただきます。」


社務所で修行中らしき若い僧の方が対応してくれた。




「2人で5000万ほど寄付したいんだが。」




「じゃあうちも2人で5000万ほど。なので合わせて一億ほど寄進したいんだけど大丈夫ですか?」




自分で馬鹿げた額の金額を言っていることは重々承知している。


4人で1億寄進など寺で聞く金額ではない。




「え?500万?」




「いや、5000万二口で1億。」




若い僧侶さんには悪いことをしてしまったと思う。


青い顔をして誰かを呼びに言った。




「すみません、うちの若い僧侶が…。


ご用件をお伺いいたします。」


立場が上の人が出てきた。




「いや、こちらこそ失礼いたしました。


それで、4人で1億寄付したいのですが。」




「あの、1億ですか?」




「はい、正確には夫婦それぞれ5000万ずつで1億なんですが。」




「あぁ…私では対応いたしかねますのでもう少々お待ちくださいませ。」




偉い人も対応に困ってさらにえらい人を呼びに行った。






「私が老大師で管長を務めております山本でございます。どうやら若い者が粗相をしてしまったようで…。」


管長さんが出てきてしまった。


管長とはこの東福寺とその周りの塔頭寺院たっちゅうじいんを取りまとめる一番偉い人だ。




「こちらこそ管長様をお呼び立てして申し訳ありません。


実は、我々はこの東福寺にいたく感動いたしましたので寄進をさせていただきたいのですが。」




「それはそれは、大変有り難いことでございます。」




「それで、2組の夫婦でそれぞれ5000万ずつ、合計一億円程…。」






「な、なるほど。」




「現金は難しいので振り込みでもよろしいですか?」




「もちろん大丈夫でございます。」




「一応クレジットカードでも大丈夫なんですが、なんとなく失礼な気がしたので。」




「かしこまりました、ではこちらでお手続きを…。」




管長さんに教えてもらいながら、自分とダニエルは手続きをした。






「よろしければ、ご一緒に坐禅を組んで行かれますか?」




「よろしいんですか?」




「もちろんでございます。」




「「「「因果応報だね。」」」」




こうして4人は特別に、管長さんと一緒に日本で最大最古の禅堂で坐禅を組ませてもらった。








「なんかスッキリしたな。」


晴れやかな顔のあきら。


坐禅の時に警策でしばかれまくった。




「こんな凄い文化があるなんて…」


マーガレットは感動して涙をポロポロ流していた。




「ZENってすげえ!」


テンションが上がるダニエル。




「落ち着くわぁ。」


しみじみとしているひとみ。




「ぜひまたお越しくださいませ。」


山本管長に見送られながら東福寺を後にする4人。






「そろそろお昼だしお昼ご飯でもいこうか!」




「「「さんせー!!!」」」




その流れで4人がやってきたのは東山区祇園町南側、建仁寺近くの◯山。




1人三万円超、季節のコース料理を食す。




◯山での食事は五感に訴えかけるものがあり、京都の真髄が詰まっていた。


掛け軸や柱、引き戸、全ての設えに歴史を感じた。


坪庭を見ながら、座敷でいただく料理はまさに最高の一言。


食事中誰も一言も発しなかった。


口を開くと意識がそちらに向けられる。


その少しの意識までも料理に注ぎ込みたいという気持ちの表れだろう。




◯山での食事はまさに体験という言葉が当てはまる。


食事をするという枠に収まらず、◯山を体験すると表現した方が適切かもしれない。




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