第106話

4人は◯山を出たところでやっと口を開いた。






「すごかった!!!」




「すごかったな!」




「いや本当に凄かった!」




「すごかったわ!」




凄すぎて語彙力が幼稚園まで退化した4人だった。






「さて、お次は東寺でございます!」




「おー!」




「「トウジ??」」




「ここはね、日本最大の五重塔があるお寺だよ!」




ひとみの解説が入る。




「「Wow!!」」




「正式名称は教王護国寺、日本でおそらく最も有名なお坊さん、弘法大師空海さんのお寺です!


元は都を守るために作られたお寺で京都の世界遺産を構成する寺社仏閣群のうちの一つです!」




「大正解!」




「やったー!」




「「これはぜひお参りしないとね!」」




境内の中の茶店で五重塔を眺めながらこと京都に思いをはせる4人。




「なんか日本がわかった気がする。」




「そうね、ダニエル…。私もよ。」




「おい、あの2人なんか悟ってるぞ。(ヒソヒソ)」




「ど、どうしよっか。(ヒソヒソ)」




「ほっとくしかないだろ。(ヒソヒソ)」




「そ、そそそうだよね。(ヒソヒソ)」




五重塔の威容に圧倒され、仏様の世界を表した立体曼荼羅に衝撃を受け、仏教の世界に旅立った二人を見て心配になる二人。




「ここにも寄進したいわ。」




「俺もだ。」




先ほどは寄付という言葉を使っていたが、寄進という言葉に変化した。


この二人は進化のスピードが速い。






先ほどと同じ手順を踏み、同様に4人で1億寄付した。




今回は特別に五重塔の中に入れてもらえた。


五重塔から見る京都市街は壮観だったが、一瞬古都京都の面影が見えたような気がした。


そして、帰り際には書家でもある東寺長者から南無大師遍照金剛と書かれた有り難い書をダニエルと自分は直接頂くことができた。





「いや、ありがたかった。」




「ほんとに。自然と手が合わさっちゃったよ。」




「すごかったぜ!」




「また来たいわね。」




「そういえば、ここで一番位が高いのは東寺長者さんなんだよね?」




「そうだね。」




「東福寺は?」




「管長。」




「清水寺は?」




「貫主。」




「なんでそんなバラバラなの?」




「管長は昔の政府の意向があってつけた名前。


それ以外は宗派独特のものってことだな。


だから知恩院なんかは門跡だから門主さんがトップだよ。」




「そう!門跡って何!?」




「皇室や公家が出家して住職を務めていると門跡寺院になる。」




「すっごい博識だね。」




「あきらはすごいんだぞ!」




「なんであなたが偉そうなのよ。」


偉そうなダニエルをマーガレットがたしなめる。






「さて、お次はその清水寺と三十三間堂と選べますがどうしますかね?ちなみに清水寺は今修復作業中です。」




「私清水寺!」




「どうしてなの?ひとみ?」


マーガレットが疑問を口にする。




「修復作業は今しか見られないんだよ!


完成は来年だけど、本堂の内部が観れるのは今だけだし、何よりいつもより少しだけ空いてる!」




「「「確かに!」」」




4人は清水寺へ直行した。




時刻はそろそろ夕方になろうという頃で、夕日になりかけの太陽と工事中の清水寺がいい味を出していた。




「確かに外から見たらほんとに工事中って感じね。」




「確かに。」




「シートかけられちゃってるもんね。」




「ほんとだな。」




「まぁ、行ってみましょう!」




「「「はーい!」」」




4人は坂道を登り、仁王門と三重塔の前で写真を撮り、途中の土産物屋で八橋をたらふく食べ、お茶をいただきつつ、途中の地主神社でお参りもして、清水寺へとやってきた。




「たしかに中まで丸見えだな!」


子供のようにワクワクするダニエル。




「なんかすごいわ!内臓を見ている気分!」


独特の感性を持つマーガレット。




「確かに言われてみたらそうかもな。」


それと似たものを持つあきら。


「レア感高い!!!」


1人興奮するひとみ。




普段は見ることができない中まで見れて大満足だった4人。


もちろんここでも寄付をする。




特に今は工事中で何かと物入りだろうということで、同様に4人で1億寄付を敢行。


やはり管主さんが出てきてくれて、特別に清水寺の最奥部にある厨子の中の十一面千手観音像を見せてくれて、清水寺の歴史や由来などもたくさん話してくれた。




帰り際には夕暮れ時だったので西門から京都市街を見下ろす。


すると夕日が沈んでいく様子が門から見え、神秘的な光景を見ることが出来る。




西門にはしばし足を止めてその光景に見入る人がたくさんいた。


もちろん4人もその中の4人である。






「今日は京都を堪能できたぜ。ありがとうな、あきら。」




「こちらこそ、京都を再発見できたよ。ありがとう。」




「ひとみもいろんな解説してくれてありがとうね。」




「いいのよ、マーガレット。私も好きで解説してるんだから。」




ひとみは美術館巡りが趣味というだけあり、解説も堂に入ったものがあった。




「明日はダニエルの別荘行くぞー!」




「「「はーい!!!」」」




こうして4人は俵屋旅館に戻った。






「今日はすごかったね!」




「1日で4人で4億使っちゃった」




「とんでもないお金の使い方よね。」




「まぁ文化財保護にはどうしてもお金がかかるから、いいお金の使い方したと思う。」




「そうだね。かっこよかった。」




「照れるじゃねぇか。」




「さて、寝ますか!」




「そうしましょう。」






その晩、不思議な夢を見た。


すごく豪華な宴会場でとても綺麗で妖艶なお姉さんにお酌をしてもらいながら、狐が踊っている夢だ。




お姉さんが


「ありがとうねぇ。ほんとにありがたいわぁ。」とニコニコしながらずっと言っている。




こちらも


「いやぁ、全然ですぅ」


と返してはみるもののさらに褒められる。


「いい男だわぁ!ご利益あげちゃう!!!」


「恐縮ですぅ!!!」


なんともまぁとても楽しい夢だった。




このご利益かどうかはわからないが、霧島の所有する株式、特に重工業分野の伸びが著しくなった。そのことからさらにあきらは重工業関連株を買い漁るようになった。


その結果、あきらの個人投資会社はグングンと取扱額を伸ばし、数年ののちには多数の重工業関連事業を行う会社を保有するようになる。






そして、そのおかげであきらの個人投資会社は、個人投資会社なのに投資会社として日本最大手の一角を担うようになり、膨大な資産に物を言わせて買収した弱小零細企業だった会社は最終的に世界最大手重工業メーカーの一角を担う会社となった。


霧島のエッセンスを加えられた結果、重工業分野では新しい技術や産業がたくさん生まれ、その経済効果がさまざまな分野に波及し、やがて世界の高度経済成長期と呼ばれる時代がやってくるのだが、それはまだ先の話。

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