第85話 40万PV記念 霧島 食事会を設定する

時は少しさかのぼり、

期末テストも終わり、私が結城の大親分と死闘を演じる少し前。

かねてよりまみちゃんと約束していたお食事会が実現した。


場所は大阪心斎橋の繁華街のど真ん中。

特に肩ひじ張らなくてもいいような、ちょっとおしゃれなイタリアン。


同級生の仲間が集まってワイワイするだけなんだからそんなに頑張らないお店の方がいいでしょう。


参加者はまみまみと、ひとみと自分。

あと清水。


幼馴染の前で、あんまり金持ちぶるのも嫌なので車では行かず、久しぶりにみんな電車集合である。



「何か電車乗るのって久々な気がしない?」


「確かに。」

私とひとみは大阪市営地下鉄で心斎橋まで向かう。


清水は家が近いので多分歩いてくるとのこと。

まみまみは近くで仕事らしく、仕事が終わり次第合流する。


「お、まみまみもうすぐ仕事終わるって。」


「じゃあ心斎橋のお店行ってピックしてあげようよ。

土地勘ないでしょう。」


「そうだね、行きましょう。」


まみまみはバイトなのに今日は大阪出張らしい。

店舗販売応援とかあるのかな。

まぁ、まみまみが大阪に来るというのもあって大阪で食事会が開催されたのだが。


お店の裏口待ち合わせになったので、駅を降りると店の方に向かう。


「お、いたいた。

おーい。」


「あ、あっくん。」


「こんにちは~!」


無事、まみまみと合流できた我々2人。


「霧島くんの幼馴染の加藤といいます。

よろしくお願いいたします。」


「あ、すみません。

霧島くんと仲良くさせてもらってます。

結城ひとみといいます。

よろしくお願いいたします。」


二人はなんかよそよそしい会話をしていたが、

ここで変な口は挟まなくていいだろうと思っていると、案の定私の話で盛り上がり始めた。

よかったよかった。

もし空気死んでたら、率先してピエロを演じるつもりではあったが。


「今日は清水も来るから盛り上がるぞ。」


「清水?」


「清水君っていうのは私たちの同級生でね。盛り上げ番長なの。」


「へぇ!楽しみ。」


まみまみにはもう一人友達が来るというのは元から伝えていた。

具体的に誰が来るとか言っても知らないだろうから大まかにしか伝えていなかったのだ。



「ここです!」


「「おぉ~」」


今日予約したのは心斎橋の隠れ家的レストランで、結構若い人が良く来る。

昔大学入りたての頃、おしゃれな先輩が連れてってくれたお店だ。


「あ、清水、中、先入ってるってさ。」


「あ、そうなんだ。」


「何かごめんね、ありがとう。」


「「全然、全然。」」


カランカランというドアベルの音とともに我々は入店する。


「こっちこっち!」


声をかけられてふと顔を向けると

『今夜は主役』というタスキをかけ、特攻隊長と書かれた鉢巻を締めた、タイトフィットの学ランを着た清水がいた。


「えっ」


「えっ」


「こんにちh、、、えっ?」


「え、こういう感じ、じゃあない、、感じ・・・?」


「あの、うん、えっと、」


私は冷や汗が止まらなかった。

まさか清水がこういう感じで来るとは。

完全に意表を突かれた。


「ぶはっ!!!」


まみまみがこらえきれずに噴き出した。


「ちょっと先に言ってよぉ!!!!」

この機を逃す清水ではない。

一気に盛り上げ役に躍り出た。


「ごめんごめん、そんなはっちゃけけなくてもいいって言っとけばよかった!」


「ごめんね、清水君!」


「しゃ~ねぇ…。今日は、特攻隊長として、一肌脱ぎますかァ~…。」


「ぶっは!!!!!!!」

まみまみはどうもこういうのに弱いらしい。

すかさずアイコンタクトする私と清水。


「霧島くんの幼馴染の加藤といいます。今日はよろしくお願いいたします。」


「アッすみません、友達やってます、清水といいます。」


「ぶふぉ!!!!」


もうまみまみは清水のすべてがツボらしい。

「すいません吹き出しちゃって…」


「おぅ、気をつけろよ。顔見て笑うの失礼だからな。」

ここで思いっきり渾身の変顔をする清水。

正直清水の変顔には誰も勝てないと思う。

いつも清水は笑ってはいけないところで本気で笑わせてくる。

私が清水の大好きなところだ。


「ぶっは!!!!!ずるいって!!!!!」


この時の清水は絶対にその変顔を、絶対にほかの人に見せない。

一人だけをスナイパーのように狙い撃ちする。


「打ち解けられたようで何よりだ。」


「よかったよかった。」


みんなで打ち解けたところで席につき、思い思いの食べ物を注文する。

私も清水も歩きないし電車で来ているのでお酒が飲める。


私が声をかける。

「とりあえず生の人」


「はい」清水が挙手。


ひとみが声をかける。

「ウーロン茶の人」


「はい」まみまみが挙手


「まみまみ飲まなくていいの?」


「実は私ほとんど飲めないんだよね。」


「一緒!!!!」

ひとみのテンションがぶちあがる。


私も対抗して言ってみる。

「実は私、酒しか飲めないんだよね。」


「一緒!!!!!!」

清水のテンションがぶちあがる。


そんなこんなで楽しく会は始まった。



~~~~~~~~~

時間は過ぎ、会の中ほど。


「ちょっとお手洗い。」


「俺も~!」


二人連れだってお手洗いに向かう。


「どうしたよ、清水。」


「やばい、まみちゃん可愛すぎる。」


思わず嫌な顔をしてしまう。


「おまえ、そういう目で俺の幼馴染を見るんじゃないよ…。」


「いや、わかってるけどさ!!!!!

ちょっとひとめぼれに近いかも。」



「えぇ…。」

たしかにまみまみと清水はかなりいい感じだった。

俺とひとみはニコニコしたりだけで事足りるくらい盛り上がって意気投合してた。



「ちょっと積極的にアプローチする。」


「でも、ちゃんとそれを俺に言ってきたのはえらいな。」


「ここは筋通さなきゃじゃん。」


「筋通す〜↑」

私の悪ノリが始まる。


「アッそーれ。」

清水の合いの手が光る。


「優しい男は〜↑」


「もういっちょ〜。」


「いい男~↑」


「よいしょ〜!」


「合いの手やめろ。」


「あい。」


用を足した後、連れ立って座席に戻る。


「それじゃ、第二ラウンド…。一丁、始めますかァ~…。」


今日の清水はキレッキレだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る