第78話 まみちゃんから見た再会。


side マミちゃん



「おぉ、意外と美味い。」


「でしょ?お気に入りの店なの。」



いま、私はあきらくんとランチを食べている。

あきらくんは小中学時代の同級生で、いっつも一緒にいた。

宿題やってこなくていつも先生に怒られてたから、一緒に宿題やってあげてた子。



「にしてもまさか霧島くんがあんな車で迎えに来るとはねぇ。」


「まぁ色々あって乗ってるんだよ。」


あきらくんの車のエンジンの音はとっても静かで、近づいてくるのに全然気づかなかった。

そんなことよりも、服が変じゃないかとか気になりすぎてて気が気じゃなかった。

気づいたら真後ろにいて声をかけられたときは驚いたなぁ。

しかもあんな派手な車。二回驚いた。


「霧島くんってお金持ちなんだね。」


「それはどうかわからんね。」


そんなこと言って、あの車とか時計とか服とか見たらわかるよ。

「嘘だよ、身につけてるものとか見てもすぐわかる。」


バレバレだね。


「まぁ今はバブルだから。」


「そういうことにしとく。」


霧島くんには昔話をたくさんしてあげた。

あいつはどこにいるとか

そいつは何をしているとか。

あいつは結婚したとか。

そいつは子供が生まれたとか。

そこそこ地元にいるといろんな話が耳に入ってくる。



その中で私は1番聞きたかったことを聞く。

「霧島くんて彼女いないの?」


「いるよ。」


「そっかぁ〜。」

なんかちょっと残念。

霧島くんのこと1番わかってるのは自分だと思ってたから。傲慢だけど。


「彼女がいるからってそう邪険にするなよ。」


「当たり前でしょ。何年の付き合いだと思ってんのよ。」


「そりゃそうか。」

中学生の頃なんかはお互いに恋人がいる時もあった。

でも実は私には彼氏いなくて、霧島くんが何もアクションしてくれないから、友達に頼んで彼氏できたらしいよって噂流してもらっただけ。

そしたら霧島くんにも、彼女ができちゃって最悪だった。

そりゃそうだよね、あれだけかっこよくて優しいんだから。1番邪魔な私がいなくなったらアプローチするに決まってる。

それくらいの時から、霧島くんの彼女さんになんか悪いなって気がしてあっくんから霧島くんって言う呼び方に変えた。

辛かったけどね。



「でも、霧島くんに彼女さんいなかったらなぁ。」


「いなかったらなんなのよ。」


「別に。」

あきらくんとはずっと一緒にいたからこそ言えなかった。今も言えない。

何も成長してない。


「昔話ついでに、一つおしえてあげようか。」


「お、なになに?」


「小学校の頃からずっと好きだったんだけど気づいてた?」


「え!?いや、!?え?!?あの、えっ???

いや、あの、、、?

えっ??えっ????」


不意打ちのそれはずるいよ、あっくん。

そんなん期待しちゃうよ。

「弱すぎるだろ。」


「だって…」


「でもね、それはほんと。

今は友達だけどね。」


「うん…」


「いい思い出よ。今も。だから大事な友達。」


「ありがとう。」


泣き出しそうだよ、あっくん。


そろそろランチも終わりの時間だ。



「霧島くんの彼女さんってどんな人なの?」

聞かなくてもいいのに聞いてしまう。

「食いしん坊で、美人で、おしゃれ。」


「へぇ、私じゃん。」


「笑止。」

笑止だってさ、うざ。

憎まれ口くらい叩かせろ!

「うざ。」


「だって事実だからさぁ。惚気てるわけじゃないよ。」


「腹が立って腹が立って仕方ない。」


「ランチ代奢ってあげたんだから納めてよ。」


「くっ…これが大資本の力か…!」


「どうも、大資本家です。」


「腹立つ!!ドアミラーもいでやろうか!」

腹立ち紛れにドアミラーをもいでやろうと本気で思った。


「もがれたら買うだけよ。」


「金持ちめ!」


「違う、大金持ちだ。」


「もういい…。」

このやり取りが今日1番腹が立った。


「ありがとね、霧島くん。」


「こちらこそ。久々に会えて嬉しかったよ。」


「また帰ってきてね。」


「もちろん。」


「ちゃんと連絡してね。」


「わかったって。

あ、今度さ、みんなでご飯いこうよ。

近々に。」


「いいけど、珍しいね。」


「そう?まみまみも大事な友達だけど、友達同士が繋がるとまた楽しいじゃん。」


「そうだね!」


「また昔みたいに集まって楽しいことやろうよ。」


「期待しないで待ってる。」


「日程決まったらまた連絡するね!」


「了解!」


「じゃまた!」


「はーい!またねー!」


また会いたくて、つい何度も確認してしまった。

あっくんの赤い車が角を曲がって見えなくなるまで見送る。

見送ると、なぜか風景が滲んできた。

涙が止まらなくなっちゃった。


「あー、振られちゃったなぁ。」


「おかえり、まみ。」


「ママ。」


「いい女は一回振られたくらいで諦めちゃダメよ。」


「うん…。」


「彼女いても奥さんいてもいいじゃない。」


「え?」


「しっかり稼いでるなら女は何人いてもいいのよ。」


「ママ…」


「あんたもそんな細かいこと気にしてたら、相手にされなくなっちゃうよ?」


「そ、そうなのかな?」


「ほら、中にお入り。晩御飯はビーフシチューよ」


「やったー!!!」

大好きなあっくんに会えて、今年はきっといいことあるはず。

またね、あっくん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る