第23話
「こちらは真鯵と夏野菜のタブーレでございます」
ギャルソンに料理を持ってきてもらって内心で呟いた
「タブーレって何……?」
こんなことは口に出してはいけない。
見くびられてしまう。
「このタブーレ美味しそう!」
え、タブーレわかんの?
ひそかに同じ部類の人間に分類されると思っていた私は驚愕した。
「うん、これはいいタブーレだよ。」
いいタブーレってもうわけがわからないなと思いつつ会話をしていた。
「さっきはギャルソンが魚介のカクテル〜海水のエキュム〜とかいうやつを持ってきたし。もうエキュムってなんなの…?」
内心でぼやきながら箸を進める。
両手に持っているのはナイフとフォークだが。
いかんせん、おいしいのだが何を食べているのかがわからない。
最近の洋食は難しすぎるのだ。
「このタブーレもなんかエキュムっぽくていいね。」
「あきらくん、エキュムっていう語感が気に入っただけでしょ?
まぁクスクスもエキュムっぽいとはいえなくもないけど。」
ひとみに笑われてしまった。
クスクスはわかるぞ!このパスタっぽいつぶつぶのやつでしょ? エキュムってつぶつぶの何かなのか…?
「まぁ、そういう考え方もできるよね。」
内心で冷や汗をかきまくっていた。
とにもかくにも自分の知らないものが出てきすぎるのだ。
フランスは魔境なのだろうか?と本気で考えていた霧島だった。
2人で満足して (霧島が満足したとは思えないが)部屋に帰ろうと席を立つ。
部屋に帰る前にすれ違った従業員に、今日は花火が見れますよ!と教えていただくことができ、ひとみと花火を見に行くことにした。
ホテルのスタッフが宿泊客専用の観覧スペースまで送ってくれるとのことで、2人はそのサービスを利用することにした。
ホテルのスタッフいわく、熱海海上花火大会は宿泊客にも人気で、しかも四季を通じて花火大会をしているとのこと。
へぇ、四季を通じてとは珍しいななどと思いながら花火に思いを馳せた。
なかなか大きな花火大会のようで、会場は大賑わいだった。
花火が始まると大きな音ともに大輪の花が夜空に咲く。
月並みな表現ではあるが、綺麗だなぁと思っていた。
ふと横を見るとひとみの顔がある。
夜空の花火に照らされるひとみの顔を見ているとひとみが、自分をじっと見つめている霧島に気づいた。
「せっかく花火行くなら浴衣きてくればよかったね。」
そう言って、子供のようにあどけなく笑うひとみを見て、ごちそうさまです。とつぶやいていた。
花火大会も終わり、観客も家路に着きだしたころ、ホテルの車で2人は帰り、部屋に戻った。
「いやぁ、すごかったねぇ!
なんか夏らしいこと今日で全部済ませた気がする笑」
そう言って嬉しそうなひとみを見て霧島は瞳と旅行に来ることができてよかったと心から感謝をしていた。
「本当にそうだな!今まで生きてきた中で一番心地よい充実感を感じられたかも。」
「ね!ところで、あきらくん明日の予定は?」
「あしたはちょっと足を伸ばして東京まで行ってお買い物です!」
結城「了解!」
2人は心地よい充実感に包まれて2日目を終えた。
次の日も、早めに起きた2人は、部屋で朝食をとり、少しゆっくりしたところで車を出し、東京に向かった。
「今日は何買うの?」
「スーツ!せっかくだからいいスーツとか靴とか買いたいなと思って!ひとみの意見も聞きたいし!」
「なるほどね。存分にコーディネートして差し上げましょう。」
「ありがとうございます。」
このひとみの可愛さにはニンマリだ。
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