第53話 霧島 スポーツをする




昨日寝たのが割と早かったため6時に目が覚めた。


予想外に寝覚めがよく、もう一度寝ようという気にならないくらい目が覚めてしまった。




せっかくなので朝食を食べようとホテルのレストランに向かった。


ブッフェスタイルの朝食は味は申し分なく、五感の全てを満たす朝食だった。




朝食をとり、部屋でシャワーを浴びチェックアウト時間まではまだだいぶあったが、荷物をまとめ。チェックアウトをした。




預けていた荷物を受け取り、そのままホテルを出て伊丹空港へ向かい、プライベートジェット専用カウンターで手持ちの荷物を全て飛行機に乗せゴルフ練習場に向かうの。

いつも車の中にゴルフ道具を積んでいて、昨日は荷物が多かったので家に下ろすか迷ったのだが、何とか下ろさずに済んだ。


私がホーム練習場としているのは、住之江にある24時間営業のかなり大きいゴルフ練習場である。


その練習場はトレーニングルームやシャワールームなどもあり、設備がかなり充実している。




練習場に着くと二列目座席からゴルフバッグとシューズバッグを取り出し打席に向かう。




カウンターで手続きを済ませていると、トレーニングルームのパーソナルトレーナーから




「お、霧島さん今日は早い!」などと声をかけられ


「たまたま暇になったのが早い時間だっただけです!」と笑いながら返事を返す。




私は最近になってゴルフを本格的に始めたが、初めてクラブを握ったのはかなり早く、4歳である。


そのため、レッスンを受け始めの初心者にしてはスイングも綺麗で飲み込みも早いため、今では練習場のスタッフからもかなり上手い人と認識されてしまっている。




たまたま手が空いていた、先ほど声をかけてきた馴染みのパーソナルトレーナーの西川さんがついてくれて、約2時間ほど練習をする霧島。




「霧島さんもかなり上手くなりましたよね。


そろそろクラブ変えてみませんか?


ちょっとシャフトが霧島さんに負けてる気がします。」




「そうなんですかね?


確かにちょっとタイミングが合わないように感じてきたような気はしますけど。」




「ちょっと測ってみましょうか。」




そう言って西川さんが練習場に併設されているゴルフショップの試打室に私を連れて行く。




「とりあえず今霧島さんが使ってるドライバー振ってください。」




霧島は言われるがままに、何回か素振りも交えて、ゴルフボールを打つ。




「あー、こりゃもうクラブが霧島さんについていけてないですね。




霧島さんもみてみてください。


霧島さんはそのクラブを買ってすぐの時、クラブを振るスピードであるヘッドスピードがだいたい40m/sでした。


今は52m/sもあります。」


「それが早いのか遅いのかよくわかってないんですがそれは。」


「かなり早い方だと思います。

これは軽くて、その上柔らかいSRという硬さのシャフトを使っているからというのもありますが、それでも力が強くて、かなり振れていると思いますので、もっと重たくて硬いものをお勧めします。

一般的に硬くて重たいシャフトの方がよく飛ぶといわれています。」


「へぇ、そうなんですね。」




「そうなんです。はい、じゃあこれ振ってみてください。」




西川さんはそう言って新しいクラブを渡してくる。




そのやりとりを何度かした結果、いよいよしっくりくるクラブが見つかった。




ブリジストンゴルフのB1というドライバーである。


打感といい、インパクト時の音といい、1発で気に入ってしまった。


何本か打った試打クラブの中で、一番上手く打てていたのもこのB1である。

割と難しいゴルフクラブであるらしいのだが。


トレーナーやゴルフショップの店員さんとの話し合いの結果、私はこのクラブのヘッドに、テンセイというシャフトの60g台のものを付けて振ってみることにした。



「うーん、これでもまだ軽いか。」


「さっきよりはだいぶいいですよ、振り心地が。」


「こっち試してください。」


西川さんがかちゃかちゃと、なんかやりかえて、また違うシャフトにした。


「今度は、70g台のXシャフトです。男子プロ並みのシャフト。」


「男子プロ並み。」



新しくなったドライバーを持ってまた練習場に戻る。




新しいクラブで練習を再開すると、やはり自分に合っているのか、面白いほど上手く当たる。

結局、この70g台のシャフトも、純正でテンセイシャフトが刺さっているドライバーの二つを買うことにした?



「霧島さん大会出てみませんか?」




「え?大会?」




「そう、大会。近いうちに市民大会みたいな大会があるんですけど、まだエントリー間に合うんでどうですか?」




「僕なんかまだ大会出れるような腕ないですよ!」




「ドライバーは平均300ヤードで、フェードボールもドローボールもストレートボールも打ち分けられるし、ウッド系も飛ばすし、ウェッジのアプローチもだいぶ細かく狙ったところに打ち分けられるじゃないですか。」




「大会に出る人ってそれくらい当たり前なんじゃないんですか?」




「ドライバーの平均飛距離300ってプロ並みですからね?」




「でも僕コースでたこと、ないですよ?」




「それはちょこちょこやれば慣れますよ!


大会9月の終わり頃なんですけど、どうです?」




「じゃあ、やってみようかな?」




「そうと決まれば練習ですね!!!!」




このあと滅茶苦茶練習した。




帰り際にエントリーシートを記入して、西川さんに提出する。


エントリー料金も支払っておいた。




「マカオでもちゃんと練習してくださいよ!

もし、新しいクラブに変えたくなったら、純正シャフトのテンセイに付け替えて売るんですよ!」




「はい…。」

世話焼きの西川さんにはいつも感謝している。




練習のしすぎでヘトヘトになった私はシャワー室で汗を流し、トレーニングルームでマッサージをしてもらい、ちょうど良い時間になったので伊丹空港に向かった。




ちゃんとゴルフバッグも持って飛行機に乗りマカオに向かう。




飛行機は小型機と言えどもさすがはプライベートジェットという豪華さで、かなりくつろいでマカオに向かうことができた。




マカオを出発した時とは異なり、今回はプライベートジェットということもあり直接マカオ国際空港に到着した。




到着すると空港のロビーには向かわずに、駐機場にそのままマイバッハが迎えにきた。




「さすがVIP待遇…。」と思いつつ、ゴルフバッグやお土産、スーツケースがマイバッハに積まれるのを眺めていた。




荷物が積み終わったところで車に案内される。




後部座席をスタッフが開けて霧島が乗り込む。




「お疲れ様です、ボス。」


しばらく離れていたが、なぜか声がしたので、その方向を向く。




「うぉっ!ひとみ!!!」




「サプライズ成功。」


ひとみは無表情でピースサインをしていた。




「帰省から帰ってきて、あきらくんになんかサプライズしてやろうと思ってマカオにやってきた。」




「本気でびっくりしたわ…!」




背中に変な汗が流れるのを感じていた。




「エマは?」




「ここですボス。」




運転席から片手だけがにょきっと伸びて手を振っていた。




「やっぱマイバッハって長いよな。


運転席がだいぶ遠く感じる。」




「「たしかに」」


エマとひとみは声を揃えてそう言った。

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