第54話




「そいえば、俺ゴルフの大会出ることになった」

いきなり話は変わるがゴルフ大会に出ることを連絡する。



「エマさん、コーチの手配を。」

その話の急な方向転換に動揺するそぶりはみじんもない。



「はい、かしこまりました。




練習場はベネチアンマカオの中にございますのでそちらでなさってください。




食事はアスリートフードマイスターのスタッフにメニューを考えてもらいます。」




「結構。撮影クルーは?」




「万事抜かりなく。」




私が口を挟む間も無くことがどんどん大きくなり、様々なことが決定される。




「ちょっと待って!!!




ただの市民大会みたいなやつだから!!!」




「ねぇ、あきらくんの晴れ舞台なんだよ???




私絶対応援に行くから!!!!!!」




「そうです、ボス。




我らがボスが戦うとあっては、我々も決して手を抜くことはできません。




百獣の王ライオンはウサギを一匹狩るにも全力を尽くすといいます。」






2人の熱量に圧倒されていた。


しかし、自分も初めての大会ということもあり、準備しすぎて困ることはないだろうと思い、2人の厚意を受け取っておくことにした。




「う、うん、なんか納得できないけどありがとう。


よろしく頼むよ。」




「「任せて!!!」」




そうこうしているうちにベネチアンマカオに着き、スタッフが荷物を取り出し部屋にどんどん運んでいった。




私たちも、そのあとをついて行き、部屋に入る。




更衣室で服をスーツに着替え、リビングに出てくると幹部たちが勢ぞろいしていた。




そのまま部屋の会議室 (ではないが会議室として使っている)にひとみとエマも一緒に、全員で向かい、様々な報告を受ける。




その報告にその場で思いついた感想やアドバイスを乗せて返して行く。




2時間ほどで会議が終わり、リビングに戻るとエマは持ち場に戻り、ひとみと2人きりになった。




「あきらくん意外とちゃんと社長ぽいことやってるんだね!




なんかカッコよかった!」




「ぽいってなんだよ


ちゃんとそれなりに考えてやってるよ。




それよりひとみもなんかすごい的確なこと言ってたじゃん。」




「まぁ私はそれなりにお嬢様だし?


頭もいいし?


あきらくんの力になるためにそれなりに勉強したし?」




「ありがと…。


なんか照れるね、やめよやめよ、この話」


ひとみから少し嬉しいことを言われて笑いながらはにかむ。


苦し紛れに話を変えることにした。




「そ、そうね


というかゴルフの大会出るんだね!」


自分でも少し恥ずかしくなったのか、話題転換の提案にのるひとみ。




「そうなった。なんか話の流れで。」






「確かにあきらくんゴルフうまいもんね。」




「自分としてはあんまり実感ないけどね。


出るからには本気で頑張るよ!」




「よく言った!」




そうこうしているとエマが部屋にやってきた。




「ボス、コーチの手配が整いました。


早速明日から来てくれるそうです。




場所は毎年うちが冠スポンサーを務めるマカオオープンが開催される、マカオゴルフアンドカントリークラブを抑えておきました。


コース慣れする必要があるかと思いましたので。」




「結構。エマさん、私たちも見学に行くわよ。」




「かしこまりました、ひとみ様。」




私はただ頷くことしかできなかった。




エマは伝えることだけ伝えるとすぐに部屋を去った。




ひとみを連れてホテルのレストランに向かって食事をしつつこれまでの経緯や出来事を出来る限り全て話した。




「ほぇー。そんなことってあるんだね。びっくりだよ」




「俺もよくわかんないけど、よくわかんないままこのポジションについてる。




でも俺が目指そうと思ってる方向は定まってきたから、その方向に向かって進めてる。」




「何が目標なの?」




「このホテルとカジノを本物したいなって。」




「どういうこと?」




「このホテルって見た感じ豪華なんだけどさ、なんか安っぽくない?




だから本物志向に切り替えたいなって。


アメニティとか家具とか、部屋のインターネット回線とか部屋の家具とか。




だいぶ評判良くなってるらしいよ。


他の幹部もまさかそんなことで客足が更に伸びるとはって言ってびっくりしてる。」




「なるほどね。


どおりでこの部屋も廊下もロビーも、海外にしてはWi-Fiの電波強いと思った。




そういうことなのね。それすっごく良いと思う。」




「ありがとう。ひとみもなんか気づいたら言ってね。」




「もちろん!任せといて!」




ついつい話し込んでしまい、夜はすっかり更けていて、ちょうど日付が変わった頃に2人は部屋に帰った。




2人は久々に会うということもあり、その夜はだいぶ燃えたとかそうでないとか。

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