間話 10万PV突破記念 その頃一方清水は。
「なんかお前の博多弁おかしいばい。」
「うそぉ?どげんなっとー?」
「なんか言葉では表せん不気味さがある。」
「なーん!ばり失礼やん!」
俺は定期テストが終わったので福岡に帰ってきた。
そう、清水だ。
俺の家は古い家なので、しきたりとかなんだかんだと、いろんなことがとにかくうるさい。
特に俺は本家の長男ということもあってか、ことさらうるさく言われてきた。
特に大学入学の時なんかはまぁ揉めた。
田舎にありがちな話かもしれないが、
とにかく国公立。できれば九州大学か熊本大学。
福岡大学は例外で、私立だけど大歓迎。
謎だった。謎だったのでめちゃくちゃ勉強して大阪大学に行った。
レベルで言えば、学部にもよるけど大阪大学の方が上なのは、大体の人が理解していると思うが、うちの親族はそれを理解できてなかった。
唯一、東大出身の親戚や、周りにそういう人がいる親戚は理解してくれてて、他の親族を説き伏せてくれたが。
本家がこれじゃ終わってるなって面と向かって言ったら殴り合いの大喧嘩になった。
健闘の甲斐もあって、何とか進学の権利を勝ち取った。
そんな俺の風向きが変わってきたのはいつ頃だろうか。
2年に上がった頃だったかな?
なんか妙に風当たりが弱まった。
何でだろ?と思ったら、株だった。
最近色んな好調要因があって日本経済が上向いている。
俺が高校の時から自分で調べて、お年玉とかで少しずつ買ってた株が軒並み爆上げしていた。
大学入ってからもバイトや小遣いでちょこちょこ買い増ししたりしてたのも奏功した。
新興のIT株がメインだったが、増資や株式分割でとんでもない利益を出していたのだ。
ギリギリ億は超えるくらい。
まだ利確してないのでそこはウチの税理士と相談したいと思う。
九州の空気なのか、うちの家が変なのか。
とにかく結果を出した俺はだんだんと自分への風当たりが弱まるのを感じていた。
さすがに手のひら返して擦り寄ってくるなんてことはないけどね。
まだ、そんなことはないだけなのかもしれんけど。
結果が出せたおかげで、実家の居心地もだいぶ改善した。
時々経済誌とかにも俺の顔が載ってるからかもね。
自慢できて嬉しいんでしょう、ウチの親は。
まぁ、そんな俺が実家に帰ってくる理由なんてものはひとつしかない。
数少ない俺の趣味。
風当たりが強くても歯を食いしばって帰るほどの趣味。
釣りだ。
俺は釣りと名の付くものがとにかく好きだ。
ダム湖でバス釣りするのも好きだし、船を出して沖釣りするのも。
防波堤や海岸から投げたりするのも好きだ。
とにかく釣りが好きなのだ。
俺は九州で名前を聞けば大体の人はわかるくらいの家の出身。
だから学校では少し浮いてた。
ちょっとヤンチャだった時もある。
そんな時に数少ない昔からの友達に誘われて釣りに行った。
最初は全然面白くなかったんやけど、なんかだんだん面白くなってきて、気づいたらこんなにどハマりしてしまった。
今じゃ釣り仲間なんかもできて、かけがえのない時間を過ごせてる。
釣りは別に道具に金かかるわけじゃない。
沼にハマるとすごいらしいけど、幸い俺はまだまだ。
せいぜい餌代と竿と糸にくっつける針の仕掛け代くらい。
その代わり時間はめちゃくちゃ溶ける。
今日はその仲間の1人が船を出して釣りをするらしく、
もし夏休みでこっち帰ってるんだったら一緒にいこうぜ!ということになり、俺は今ここにいる。
場所は福岡県の
時刻は朝4:00ちょうど。
釣りならどんな朝早い時間でも起きれるから不思議だ。
主催と参加するメンバーを待っている。
「いや、博多弁変なことになりすぎやろ。」
「ほんまに?」
「ほんまに?やって。大阪弁やんほぼ。」
「まじかぁ。」
「俺まで変な博多弁うつりそうやわ。」
「そんなこと言うなや。」
散々に俺の博多弁をいじり散らかしてるのは今回の遊漁船をチャーターした犯人。
雄太郎だ。
若手の釣り師の中でかなり顔が広い。
この前はホークスの元選手と釣りに行ったらしい。
大学生のはずだが、勉強してる雰囲気は全くなく、釣りしかしてないはず。
「今日何人くるん?」
「残り2人。
いつもの龍太と沙優ペア。」
「あ、そう。」
龍太と沙優は幼馴染で、付き合い始めて15年というもはや熟年夫婦のようなカップルだ。
早く結婚しろ。
そうこうしてると、龍太の車らしき黒のハイラックスが漁港の駐車場に入っていくのが見えた。
ピックアップトラックになってて、まさに遊び車。
海に山に遊びまくるアウトドア派な2人にぴったりの車だ。
やはりさっきハイラックスは龍太の車だったんだろう。
程なくして2人が集合場所に現れた。
「悪い!謎にめちゃ混んどった!」
「ほんとにごめん!」
2人は集合時間に約15分ほど遅れた。
聞けば事故渋滞で時間を食われたらしい。
いつも集合の2〜30分前から来てる2人だけに珍しかったのはこういうことか。
俺は2人とは家の方向が違うため渋滞には巻き込まれなかったんだろう。
むしろ2人が事故に巻き込まれなくて良かった。
「じゃ、揃ったことですし、船に乗りますか!」
「「「おー!」」」
雄太郎はテキパキと手続きを済ませて、今回遊漁船を出してくれる船頭さんに挨拶をした。
俺たちも挨拶をしてライフジャケットを装備して各々の釣り道具を持って船に乗り込む。
今回は型の良い真鯛が目標。
でも釣れた魚で、小さいのは逃がすけども、大きいのは全部持って帰って食べる。
俺たち4人は釣るのも食べるのも大好きだ。
まだ日の出ない夜明けに、俺たちは出港し、
しばらくして沖の釣りスポットに着いた。
船頭さんがマイクで、スポットについたので開始してくださいとアナウンスをする。
各々が仕掛けを竿につけ、糸を垂らす。
よく掛かる時はすぐにヒットがあるのだが、今日はどうにも渋い。
こればっかりは魚任せなので、何とも言えない。
しばらくは餌を撒いたり手を替え品を替えして魚を待つ。
俺たちの中で1番最初にヒットしたのは沙優だった。
「あ!来た!重い!」
「お!がんばれ!」
「バラすなよ!」
久々の話題ということもあり、にわかに船上が活気付く。
「あれ、これもしかしてイカ?」
「お!」
「走りのイカかもしれんな。」
だいたい福岡では9月の1週目からイカが釣れ始める。
秋イカの始まりと言われる季節だ。
しかし、船でこの時期に釣れるとは珍しい。
是非ともサイズに期待したい。
「おぉ〜!」
「おめでとう!」
「良い型やね!」
そうこうしている間に沙優があげたのは大体1kgほどの大物のアオリイカ。
なかなか幸先の良いスタートと言えるのではなかろうか。
「こうしちゃおれん。」
沙優の大物ヒットに次こそは!とやる気が出る。
こういう自然相手の勝負って思い通りにならないから面白い。
次こそは俺がどでかい真鯛釣るぞ!
〜〜〜〜〜
「俺の休みって大体いつもこんな感じだけど需要ある?」
「あるある。結構面白そうなことしてんのな。」
「あ、ほんま?」
「今度俺も釣れてってくれよ。」
「もちろんもちろん!是非行こう!」
じゃあ今度行くときは霧島も誘ってみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます