第51話
夜遅くにホテルに帰りそのまま熟睡してしまった私はチェックアウト時間の30分前に起床した。
「え、今何時…
え、やばっ!!!は!?!?やば!!」
珍しく慌てて、急いでシャワーを浴び、髪を整え、荷物を持って部屋を飛び出しチェックアウトした。
チェックアウト時間ギリギリだったがなんとか間に合った。
間に合ったことに安堵して、ホテルの駐車場から車を出し自宅へと向かう。
ホテル日航大阪の駐車場には私のi8が止めてある。
車を走らせ、ほどなくすると大学が見えてきた。
自宅マンションの前にi8を止め部屋に向かう。
なんだかんだで忙しくて、昨日は確認する暇がなかったので、ポストを確認すると、幸い急を要する手紙など郵便物は届いていなかったが、宅配の不在連絡票が入っていた。
銀座でひとみとスーツなどを注文した際に出来上がり次第送ってくださいと頼んでおいた完成品が受け取れていないことにこのとき気がついた。
保管期限はたまたま今日まで。
「よっしゃラッキー!」と思わず口に出して呟き運送会社に連絡をし、今から窓口に取りに行く旨を伝えた。
部屋に入って、空の大きなリモワのスーツケースを持ってきて中にトラベルセットとパソコン、大学の課題図書などを思いつく限り突っ込んだ。しかしさすがはリモワの85L。まだまだ相当に余裕がある。
「これならまだスーツも靴も入りそうだな。」
マカオに持って行くスーツケースはこれでいいなと思って、その重いスーツケースを持ち車に向かった。
荷物が大きくなりそうなのでi8からLXに乗り換えた。
荷物はまだまだ乗るので空のリモワをもう一台積んでおく。
スーツケースを車のラゲッジスペースに積んで運送会社の配送センターに向かった。
窓口に着くと住所を伝え、身分証明書を提出し、スーツを受け取った。
約10着のスーツやコートと4足の靴を受け取り、スーツケースに入れた。しかしまだ余裕がある。
霧島は、その窓口で伝えられ気づいたがルイヴィトンのトランクケースも10個届いているらしい。
流石にLXといえども、トランクケース10箱を積むことはできないので、一旦ここで受け取り、そのまま空輸でマカオに送ってもらうことにした。
とりあえず日本でやることは全部終わらせ、エマに連絡を取る。
「エマ?霧島です。明日マカオに帰ろうと思いますが、飛行機はある?」
「かしこまりましたボス。
飛行機に関しては、伊丹に一機すでに常駐させています。
サンズの幹部専用機の短距離航空機ですので大きさは小さいですが、そちらをご利用ください。」
「わかった、いつもありがとうね、エマ。」
「礼には及びません、ボス。
飛行準備を整えておきますので、時間が決まったらご連絡ください。」
「じゃあ17時ちょうど発でお願いしようかな。」
「ありがとうございます。
でしたらその時間に出発するようにアレンジしておきますので30分前までにはご到着ください。」
「了解。」
エマに連絡をした後はひとみに連絡した。
しかし、電波が届かないところにいるらしく、連絡がつかない。
一応ラインで、連絡できる時間になったら連絡してくれと送信して携帯のホーム画面をロックする。
することを一気にこなした結果、やっと暇になったので、ウィンドウショッピングを開始することにした。
「エマやら他の幹部にお土産買っていこう。」
とりあえず梅田阪急に向かった。
阪急の地下には全国から選りすぐられた土産物が所狭しと並べられている。
まず私は一心堂に向かう。
一心堂はフルーツ大福で有名なお店で、私とひとみの大好物でもある。
とりあえず全種類買った。
続いて向かうのは大阪といえばこれ、バトンドール。要はポッキーの高級品なのだが、人気が高い。これも全種類買った。
そして続いては堂島ロールで有名なモンシェール。これは私の夜ご飯用だ。一つ購入。
最後はダメ押しとばかりに辻利兵衛本店に向かい抹茶大福を山ほど買った。
途中から阪急の外商部の人が寄り添ってくれて、次回はお家に伺いますのでご連絡くださいと言われた。そして阪急のクレジットカードをアメックスで契約させられた。
そのおかげか、大量の荷物を店員さん方が車に運ぶのを手伝ってくれた。
お土産も買い終え、新阪急ホテルの駐車場から車を出す。
ちなみに阪急梅田本店に駐車場はないため、近隣の駐車場を使うしかない。
なんとなく、気分が乗ってきて、そのままセントレジスホテル大阪に向かった。
私にとって、本町にあるそのホテルは、その存在は知っているが行ったことはないというホテルで、いつか行ってみたいと思っていたホテルの一つだった。
しかし、本町周辺にマンションを購入してしまったため、そのマンションに移り住むと、いよいよ行く機会がなくなるだろうなと思っていた。
たまたま時間もあるし、と思いそのホテルに泊まることにしたようだ。
セントレジスの車止めに着くとドアマンが華麗に車を停める。
「ご宿泊でございますか?」
程よく響く柔らかなバリトンボイスでそう告げられた私はモナコのオテルドゥパリを思い出した。
「いえ、まだ予約はしていないので今からです。」
そう告げるとドアマンはかしこまりましたと、インカムで何か連絡をやりとりし始めた。
「お部屋に空きがあるそうですので、そのままご案内いたします。」
ドアマンはそう告げると、他のスタッフに何やら合図をし大きなカートを持ってきた。
「お荷物お預かりいたします。お車は鍵をいただければそのままで結構でございます。」
私は日本では珍しくなってしまった久々のバレエパーキングサービスに感動し、鍵をドアマンに渡し、車を降り、荷物も降ろした。
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