第26話
熱海旅行最終日。
またしても2人は部屋で朝食をとっていた。
「なんか、大阪に帰りたくないな。今から四時間も車運転したくない。」
「私もこの暮らし快適すぎて。四時間も車に揺られて大阪まで帰りたくない。」
こういう話をしているともう帰らないでもいいんじゃないのか?という結論に達することはわかっていたので、霧島は話題を変える。
「お、そのロレックス、センスいいっすね!どうしたんですか?」
「でしょー?自慢の彼氏がプレゼントしてくれたんですぅー!」
もし何かあってもこの話題を振ればしばらくは気をそらせることができるなと確信した。
「とりあえずご飯食べたらチェックアウトして大阪帰りますかね!」
「気は乗らんがまぁ仕方ない。」
時々出るこの偉そうな人口調はなんだろうか。
ひとみの謎をまた一つ見つけた気分だった。
朝食を食べ終えた2人は、チェックアウトをし、伊豆、箱根に寄ってお土産を買い込んだ。
箱根森のバウムや、温泉まんじゅう、さがみやのナッツヴェセルをこれでもかというほど買い込み、2人を乗せたレクサスLXは、大阪へと駆けて行く。
「大阪帰ったら、今回の旅行で使った分ちゃんと稼がないとな。」
「むしろ節約しましょう。
旅行気分で同じようにお金使ってたら、いくらあっても足りないよ?」
「正論だけに、ぐうの音も出ないな。」
「多少の贅沢はいいけど、あんまり使いすぎちゃダメよ?」
「肝に命じます。」
「わかればよろしい。」
そんな益体も無い話をしていると、あっという間に4時間が過ぎて、車はひとみの家についた。
「よし、ついた。荷物おろすか。」
「ありがとう!」
そう言って、ひとみのマンションのエントランスに車を止め、ひとみのスーツケースを下ろした。
「泊まってく?」
「いや、ひとみも着替え洗ったり、部屋掃除したり、
親御さんに連絡したり色々忙しいでしょ?
だから、今日はやめとく。
俺も買ったもの片付けたり、服洗濯したり
ひとみを家に連れてこれるように綺麗にしないといけないから。」
「気にしなくていいのに!
じゃあわたしもあきらくん部屋に入れられるように綺麗にしとくね。」
「よろしく。」
とりあえずは一人で部屋にお土産や荷物を運びこむのは骨だろうということで
大量のお土産の大半をひとみの部屋まで運び、解散した。
私も手狭な自宅マンションの前に、車を止め、熱海土産と、ご自慢のリモワのスーツケースを下ろし、部屋に荷物を入れた。
スーツと靴で軽く1000万円以上使ったが、その大半はまだ出来上がっていないことは幸いだった。
もし出来上がって引き渡されていたら部屋はもはやクローゼットだけの機能しかなくなってしまう。
自分の部屋に着き、荷物を置いた私は、とりあえず株価のチェックをした。
「……軒並み爆上げしてる……。
最初ほどの倍近い爆上げでは無いけど、運用額がでかいぶん、上がり額がしゅごい……。」
霧島の運用額はもう500億円に届こうとしていた。
元はパチンコで稼いだ約100万円だと思えば、とんでもないことである。
「そろそろ違う投資先も考えてみるかな…。
ていうか、来年の税金がマジで怖い……。」
所得税や、府民税、健康保険、年金などの税金関係は、今年から親の扶養から外れたため、自身で支払う必要がある。
そんなことに戦々恐々といった感じで、パソコンのブラウザを閉じた。
「バイトもないし、毎日彼女と遊ぶわけにもいかないし、夏休みってなんか暇だな…。」
車でも買いに行ってみようかな…。
ひとみとの約束を、さっそく忘れかけている霧島であった。
手狭な我が家ではあるがインテリアをもっと充実させたい。そんな私だが来年の三月には新しい家ひ引っ越すため、なかなか新しい家具を買えないでいた。
「買うにしても広さの寸法がわからないんじゃあ買いようが無いよなぁ…。」
早く新しい家に引っ越したい私であった。
とりあえず明日はゆっくりしよう…
大学生の夏休みは長い。
霧島の夏休みはまだ始まったばかりだ。
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