第25話
着いた店はジョンロブ丸の内店。
「じょ、ジョンロブ…。
俺でも知ってる最上級の靴メーカー…。」
結城監督は大丈夫大丈夫と言いながら店に入る。
「おや、いらっしゃいませ結城様。今日はお父様ではなく、素敵な方をお連れで。」
またも店員と仲よさそうなひとみ。
「そうなんです。彼を一流の男にしてあげてくださいな。」
ここでも外行き笑顔。
すこいなぁ。
「なるほど!それでは腕によりをかけてオーダーを取らせていただきます!
それでは今日はよろしくお願いしますね。」
そう言って私の靴を脱がせにかかり、サイズを取り始める店員。
よろしくお願いしますと答えるのが精一杯だった。
結局私はジョンロブの店で靴を4足買った。
タキシード用の黒の内羽根ストレートチップのフィリップと呼ばれるモデル、そして、夏用のローファーであるロペス、モンクストラップのウィリアム2、そしてウィリアム2のブーツである。
後から知ったけど、タキシードに合わせるのはオペラシューズが正式なんだってな。
教えてくれた人ありがとう。
どの店の会計も100万円を超えたが、とてもいい買い物ができたと考えいた。
「前まではKUROのデニムやナイキのスニーカーでとんでもなく贅沢したつもりだったんだけどな。」
時間もすっかり遅くなり、夜の9時ごろに私たちはホテルに帰着した。
食事をフロントでお願いし、部屋に入ると、しばらくしてから食事が到着し、食事を始めたところで今日のことをひとみに感謝した。
「今日はとてもいい買い物ができた。ありがとうひとみ。」
「よくよく考えたら今日一日であきらくんのレクサス一台分くらい買っちゃったね。
私もあきらくん連れ回しすぎちゃったから、ちょっと反省…。
その代わりといってはなんだけど、私からプレゼントがあります!」
そう行ったひとみは一つの紙袋を霧島に差し出した。
「いや、いいのに。
てか、自分が買いたくて付き合ってもらったのに。」
「まぁまぁ、中みてよ、これ。」
霧島はひとみから渡された袋を開けると箱に入ったネクタイが出てきた。
「マリネッラが5本……!!
ちょ、おま、え?ちょ……まじ?」
「まじ。
ていうか、あきらくんブランドに詳しいよね。
付き合ってから何もプレゼントとかしたことなかったし、スーツ買ってたからいい記念だなって思って。」
思わぬ高級品のプレゼントに、驚くわたしと心底楽しそうに笑うひとみ。
説明しよう、マリネッラとは世界最高級のネクタイを作っている会社で、そのネクタイは世界三大ネクタイの一つと数えられるのだ。
価格帯は2万円台後半から3万円台後半といったところ。
ひとみがプレゼントしたネクタイは、今日購入したどのスーツにも合いそうで、ダンヒルでサロンに向かった時から、すでにひとみの手の内であり、まるで全て仕組まれていたことのような気になった。
さすがは名監督の上采配である。
ただやられっぱなしなのも面白くない。
ここいらで私は反撃を試みることにした。
「実は俺からもプレゼントがあるんだ。」
「え、ほんとー?嬉しい!」
まだ余裕の笑みを崩さないひとみ。
しかし、私がプレゼントの箱が入った緑の紙袋を取り出した時にその笑みは凍りついた。
「ま、まさか。」
「そう、そのまさか。俺とお揃いだよ。」
私はロレックスの紙袋を取り出した。
ひとみは震える手で時計を取り出し呟いた
「わ、私が欲しかったレディデイトジャスト28のピンクゴールド…」
「俺の腕時計見ていつもロレックスのいーなーとか言ってたから買っといた。
ほんとはお揃いにしたかったんだけど、俺のデイデイトってレディスモデルないんだよねー。と思って、探してて、これに合いそうだなって思ったのすぐ買っちゃった。」
実際デイデイトをそのまま女性がつけているのもごくたまに見かけるが、ひとみにはなんか違うと思ったので、レディスモデルを選んだのだ。
見つけたときに買っておいて、いつかプレゼントしようとタイミングを図っていたのだ。
実際見つかるかどうかは運しだい。
この旅行の日に間に合ったのは奇跡と呼ぶほかない。
「高かったでしょ…?こんなのもらっちゃっていいの…?」
「まぁ。それなりよ。
てかひとみの家だとロレックスとか珍しくないでしょ?」
「いや、私がつけてるのセイコーだし。
その価値がわかるようになった時に、必要があれば買ってあげるって言われてたんだけど、大学入った時アウディ買ってもらっちゃったから…。」
そう、ひとみはアウディに乗っている。
正にブルジョアジーである。
「…あぁ…あれね。
でもまぁ、喜んでくれてよかった!
実はこっそり腕のサイズも測って買ったから多分今つけてもぴったりなはずだよ。」
「あ、ほんとだ!
すごい!すごいすごい!
なんか、もう!すごい!」
こんなふうに喜んでくれてよかったな。
「また機会があればなんかプレゼントしよ。」
反撃は大成功で私は大満足だ。
霧島は仕返しができてほくそ笑んだ。
結城は喜びすぎて語彙力が低下した。
2人は大喜びのまま、興奮冷めやらずの夜を過ごした。
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