第44話
アフタヌーンティーを終えると、足として用意してもらった車を見てみようと思い外に出た。
外のドアマンに、もはや車の鍵らしくない、フェラーリの鍵を渡すとすぐに車を持ってきてくれた。
「488ピスタ…。」
私は運転席をドアマンと代わり、戦々恐々という感じで運転する。
「488ピスタって日本まだ未発売だった気がする…。
なんかこれ色々購入条件あったよね…。
しかもフェラーリ初めて運転するんだけど…。」
そんなことを思いながらモナコの街を疾走する。
モナコでは、ベントレーやベンツなどは全く珍しくない。
しかし、この488ピスタに限っては、物珍しさも相まって、多くの衆目を集めていた。
モナコっ子のよく肥えた目をしても唸らせるほどの名車であったこの車は、どこかに止まるたびに声をかけられた。
私としては自分の秘書の頑張りを褒められたようで嬉しくはあったが多少気恥ずかしさが勝つ。
運転にもだいぶ慣れたところで、首からカメラを下げたヨーロッパ人に声をかけられた。
どうやら写真を撮りたいということらしい。
「いいですよー」と言いながら写真を撮らせてあげる。
写真を撮ってもらった後、
「この写真を個展で使っても良いか?」ときかれたので、「もちろん。」と答える。
この時は、個展やるくらいのカメラマンさんなんだ、スゲーと思ったくらいだった。
そのカメラマンはじゃあこれ個展のチケットです。と名刺のようなカードを私に差し出し、その裏に何かを書いていた。
彼曰く、どうやら近いうちにニューヨークで個展をやるらしい。
素敵な写真を撮らせてくれたお礼にも、ぜひきてくれとの言葉を残し彼は去っていった。
のちにわかるが、
そのカメラマンこそ、自身の作品に世界最高額の値段がついたことで有名な風景写真家ピーターだった。
そのことをひとみにもエマにも話すと、たいそう羨ましがられ、ピーターのことを知らないセレブは大モグリだとバカにされた。ちなみに、誘われたその個展にはひとみが付いてくるということになった。
ひとしきりモナコを走り回ったところで、銀行を見つけたので、自身の持つキャッシュカードが使えるかどうかを確認しておく。
確認するとバンク・オブ・アメリカのカードも日本のカードも使えるようだったので一安心だ。
「さすがにまだいいか。」
なんとなく、この銀行に口座を作るのはよしておいた。
どうしても口座を作る必要に駆られたら開設しよう。
そうして一通り時間を潰したのち、程よく夕方になってきたのでオテルドゥパリに戻って着替えを開始する。
ブリオーニのタキシードとジョンロブのオペラパンプスに身を包み、ビンテージロレックスのデイデイトを改めて腕に巻き直し気合いを入れた。
私は万全の体制でカジノモンテカルロに向かう。
カジノモンテカルロはオテルドゥパリの目の前にある。
モナコ中を散々探し回って、最後ホテルに帰るときに、ホテルの目の前の建物がカジノモンテカルロだとやっと気づいた。
カジノモンテカルロには名前がいくつかある。
ある人はグランカジノと言ったり、またある人はカジノドモンテカルロと言ったりもする。
しかし私はカジノモンテカルロという名前がシンプルで好きだ。
いよいよ世界中のカジノの聖地、カジノモンテカルロに入場する。
オテルドゥパリのダイヤモンドスイートに宿泊する私は、それだけでVIPルームに入場する資格を持つ。服装もちゃんとタキシードを着ている。
入場する際、エントランスの係員にパスポートで身分証を確認されたときに、スタッフがニヤリと笑った。
「霧島様は随分カジノがお好きなようで。
ラスベガスの話もマカオの話も伝え聞いてますよ。」
「随分と話が早いんですね。
今日はたっぷりと遊ばしていただきますよ。」
負けじと私も余裕たっぷりにそう返す。
「霧島様はVIPルームと一般ルームどちらになさいますか?
一般ルームではもう物足りないのでは?」
「そんなことありませんよ。
どのカジノも楽しいです。
でも今日は大きな勝負をしようと思ってるのでVIPルームに。」
スタッフの額に一筋の汗が流れた。
「かしこまりました、それではご案内いたします。」
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