第74話
新造おじさんの絵の価値がすごいことになっているらしい。
なんやかんや色々あって、新造おじさんの絵がニューヨークの国連本部に飾られることになったらしい。それが決定したのが去年。
なんでも評判がとても良いらしく、新造おじさんの絵の値段はどんどん爆上げしているとのこと。
絵が飾られる前までは10号サイズの風景画で大体10万円前後だったが、今では100万円前後とのこと。
物によってはさらに価値が上がっているらしい。
そんな新造おじさんが、いつかめでたい日に世に出そうと思ってコツコツ描いた、100号サイズの大きな絵画を、今年こそがそのめでたい時だと思い届けてくれた。
それが届いたのが、1月2日。
今からその絵が一堂に会した親戚たちにお披露目される。
「これが…!」
親戚一同はその絵の迫力に圧倒された。
胸にくる苦しみや、悲しみ。
そしてその解放。
全てが絵を通して伝わってきた。
あきらには、すごい!ということしかよく分からなかったが。
その絵は、本家の玄関を入ったすぐ、1番目立つ壁に飾られた。
のちに、新造おじさんの絵はニューヨークのメトロポリタン美術館や、フランスのルーブル美術館、ロシアのエルミタージュ美術館にも収容され、存命の画家の中で1番絵の値段が高い画家と言われるようになる。
2日のお昼を過ぎて、昨日のビンゴ大会の商品をみんなで買いに行くことになった。
まずはスイッチとPS5。
近所の家電量販店に向かう。
当選した子供達を引き連れて、新造おじさんと重弘おじさんがゲームコーナーに向かう。
あぶれた大人たちは、各々好きなコーナーに向かった。
「あきら、お前家買ったんやろ。家電とかどうしたん?」
「家買った時に業者だけ決めて、内装が済んだら入れてもらうことにしとる。」
「そうなんや。」
「家具も営業すごかったけど、結局自分で決めて、イタリアのB&Bっていうメーカーに内装のデザインからなにから全部丸投げした。」
「最近はそんなんもできるんやの。」
「みたいね。」
そんな話をしながら、適当に家電を見て時間を潰した。
購入が終わったようで、ゲームコーナーの様子を見に行くと、ゲーム機だけを買ったにしては荷物が多い。
どうやらゲームソフトもせがまれて買ってあげたらしい。
正月だからといって、財布の紐が緩み過ぎている。
せっかく外に出たのだからということで、少し足を伸ばして、都会まで出て初売りを楽しみたいということになったらしい。
特にamazonギフト券をもらった子と、ギフト券100万円分を獲得した家庭。
車でさらに1時間ほど高速道路を走り、少し都会に出て、百貨店に向かった。
女組は化粧品やバッグ、靴などをみてくると言い、男組は時計や靴、スーツなどを見に行った。
あきらもそちらについていく。
聞いてはいたが、世間的に好景気らしく、高価なものがどんどんと売れているらしい。
そういえば、ここに来るのもみんな外車で来たなと思い返す。
遠方からの親戚はともかく、近所の親戚も外車に乗っている人が多い。
今日も、雄次兄さんとこはBMWの3シリーズ、由美子姉さんちはベンツのCクラス。唯一重弘おじさんちだけはランドクルーザーだったが、家にはベンツのEクラスがある。
そんなことを考えていると、由美子姉さんのお父さんの幸宏おじさんが時計を買った。
「ほんならわしこれにするわ。」
幸宏おじさんが買ったのはグランドセイコーのSBGR317。
すると、麻雀大会で優勝した新造おじさんは
「なら私はこれにしよう。」
購入したのはオメガシーマスターのダイバー300Mコーアクシャルモデル。豪華だねえ。
みんなは他にもイージーオーダーでスーツを注文したり、革靴売り場で靴を購入したりもした。
「じゃ俺はこれにしようかね。」
私が選んだのはパラブーツ。
フランスの革靴で雨の日でもへっちゃらなくらい革が強い。
シャンボード、ミカエル、ウィリアム3足まとめてお迎えした。
シューキーパーもクリームも替えの靴紐も併せて買ったので50万円くらいか。
副賞のギフト券ですべて賄うことができた。
みんなしてしこたま買い物をすると、時間になったので集合することにした。
集まった女性陣はここぞとばかりに服や化粧品を買い込んでおり、車に荷物が乗るか心配しなければいけない事態も起こったが、結局乗った。
「みんなよくそんなに買えるね。」
「うちもどこもやっぱり景気いいからねぇ。」
「うん、なんとなく景気がいいっていう実感はある。」
おじさんのところもおばさんのところも、うまく行っているようで何よりである。
家に着くと、子供たちは早速ゲームに夢中。
しばらくは静かにしているだろう。
大人たちは晩御飯ができるまで、子供とゲームをしていたり、テレビを見たりして時間を潰している。
「やっとひと段落ついたなぁ。」
「父さんも母さんも今年はだいぶ忙しかったね。」
「そうね、でも私は嬉しいよ。」
「大変なのに?」
「うん。ほら、パパも嬉しそうな顔してるし、あきらも楽しそう。そんな環境だから、私ももちろん嬉しいよ。」
「ママ…!」
もう1人弟か妹でもうまれそうな空気を感じ取ったので、そそくさとお暇する。
ぶらぶらしつつ、途中で灰皿を拝借して、二階の自分の部屋に行く。
ベランダでぼーっとしながらタバコを吸う。
「こんだけ稼いだらもっとエグいタカリとか来るもんだと思ってたけど意外とそんなことなかったな。
むしろあの女の方がやばかった。」
霧島は学祭の時の女の子を思い出した。
なぜかひとみに、怯えていたが今思うとよくわからない子だった。
「きっとこれからもっと繁栄していくのかな。
なんかそんな気がする。」
左腕のロレックスは同意を示すように一瞬きらめいた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「なんか父さんがフェラーリ買ってるの見たらまた車欲しくなってきたな。
対抗してランボルギーニでも買うかな。」
そんな独り言をブツブツ呟きながらタバコを吸っていると、早くも3本目のタバコが終わりに近づいていた。
「そろそろ飯食いに行こ。」
あきらはタバコを灰皿に押し付けて消すと自室のファブリーズをシュッシュとして食卓へと向かう。
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