第91話
そして翌日。
ひとみとダニエルの奥さんのマーガレットにはうまいこと言って別行動の時間をひねり出した。
決起集会の会場に選んだのはおなじみリッツカールトン。
BMW i8で車止めに乗り付け、鍵をドアマンに渡す。
「ここのフレンチで個室を取ってある。」
「リッツカールトンか。センスがいいな。」
リッツカールトンのフレンチにはドレスコードがある。
少しめんどくさいかもしれないが、今日は決起集会なので、2人とも少しカチッとした服装である。
私はダンヒルの春夏物の紺スーツにジョンロブの内羽根ストレートチップのCITY。
ロレックスも忘れずに。
ダニエルは聞いてみるとドルチェ&ガッバーナのフルオーダー品らしい。
ちょっと派手な生地なのだが悔しいほどにあっている。
靴はディオールのボタンブーツだった。
おしゃれだ。
ベルマンの案内に従いフレンチレストラン「ラ・ベ」の個室に到着する。
この個室はなんとなくハリーポッターの世界のような印象をうける。
雰囲気があって良い。
中に入ると既に2人は待機していた。
「こんにちは、ミスターダニエル。
私は清水隆一です。リューとお呼びください。」
初めて英語を話す清水を見たがとても綺麗な英語だ。
驚きすぎて違う人かと思った。
「リュー。はじめまして。
私のこともぜひダニエルでもダニーでも。
フランクに接して頂けると嬉しいね。」
「わかったよダニー。ぜひこれから一緒に頼む。」
「もちろんだ!」
2人はガッチリと握手した。
「はじめましてダニエル。これから仲間としてよろしく頼む。
私は中村義秀。ヒデと呼んでくれ。」
中村さんが流暢な英語を話しはじめたのには驚いた。
話を聞くと、小さな頃基地でアルバイトをしていたことがあるらしい。
そこで英語を学んだとか。
「ヒデ。こちらこそよろしく頼む。
私のこともぜひダニーと呼んでくれ。」
「わかったよダニー。よろしくな。」
「よし、自己紹介も済んだところで、もう一度計画について確認しておこう。
まず、私とひとみの式を挙げるに当たって、我々は南太平洋上の島を購入する。
その島にホテル、結婚式場等を建て、式を挙げる。
会場へのアクセスは船だ。
8万トンクラスの豪華客船をチャーターする予定だ。
まず大阪を出発して私とひとみとひとみの実家の親戚一同を乗せ、次は私の実家に寄港して親戚一同と会社関係者約20人を乗せ、次はマカオに寄港して会社関係者約100人を乗せ次はアメリカへ。
アメリカでダニエルを拾って現地到着という流れにしようと思っている。
船上ではパーティ、式と披露宴は島でという流れで考えているがどうだろう?」
「その点に関してなんだが、会社関係者は呼ばなくてもいいんじゃないのか?」
「確かに迷いどころなんだよな。」
「船も8万トンクラスの船を用意する必要はないと思うぞ。
いいとこ数百人しか乗らないのに定員2000人の船は大きすぎるだろう。」
「一応俺は船持ってるから、船は俺が出すよ。」
さすがはアメリカの大富豪。ヨットまで持っている。
「定員は?」
「20人ってところだな。」
「私も20人程度が乗るようなメガヨットを持っている。」
まさか中村さんまで持っているとは。
「あきらも買えばいいじゃないか。」
無責任な清水が言う。
「そうだな、購入しよう。」
もうここまでくると勢いでものをしゃべっている。
「だったら俺の知り合いが200億くらいでヨット売ってるから買うか?」
ダニエルはスケールがでかすぎる。
そろそろキャパシティをオーバーしそうだ。
「定員はどれくらいなんだ?」
「それも20人くらいだな。映画館とか庭園もついてるぞ。」
「よし。買おう。」
「じゃあ俺からのプレゼントにするよ。」
「…えっ。」
「さすがダニエルだな。スケールが違う。」
「アメリカの大富豪は見ていて気持ちがいいですね!」
清水と中村さんが頷いている。
「いや、流石に悪いよ。」
「大丈夫だ。そいつにはだいぶ儲けさせてやってるんだから。
多分タダでくれるよ。」
切っ風の良さが桁違いのダニエル。
「知り合いまでスケールがでかい。」
「じゃあ船は中村さんとダニエルと俺でなんとかすると。」
「おう。クルーを含めて、俺のとあきらので2台送るから好きに使ってくれ。」
「私の港がありますんでそこに停泊させておきましょう。」
「プライベートポート…。」
結局、招待客は両家の親戚一同 (合計35人程度)
清水や中村さんなど友人達 (合計10人程度)
マカオや資産管理会社の関係者 (15人程度)
と言うことでまとまった。
20人の定員の船が3席あれば足りる。
実際の両家の親戚は80人程度は存命だが、海外挙式ということもあり実際の式に参加するのは、父と義父の調査によると船に乗ってでも行きたい親戚は今のところ両家の合計で35〜40名程度。
場合によっては増えることもありうるがその場合は近くの最寄り島まで日本から飛行機を飛ばし、船に乗り換えで対応するつもりだが、まだ未定である。
また、参加できない親戚達のためにも、あきらの実家の庭でも披露宴は開催する予定である。
そう、庭で。
あのご立派な日本庭園で。
加えて式はあの正月に長い祝詞をお見舞いされた神社で、正月よりも長い祝詞をお見舞いされる予定だ。
「じゃあ後は島だな。」
「それなんだけど。」
清水が言う。
「うちの実家と中村さんとこと、霧島とひとみちゃんの実家で合弁企業作らないかなと思って。」
「お、面白そうな話じゃないか。俺も出資するぞ。」
ダニエルは抜け目ない。
「なんの合弁?」
「リゾート開発。この四社で土地取得から建設、ホテル、レジャー開発、旅行会社全部揃うんだよね。」
「なるほど。ダニエルも出資してくれるなら資本の心配もないしな。」
「うちはカジノもホテルもあるからな。ぜひ出資させてくれ。」
ダニエルも乗り気だ。
「よし、じゃあ計画はこれで進めよう。」
それぞれが実家に連絡を取り合い、会社として動き出すことが決まった。
これで霧島、結城両家の結束はさらに強まり、清水家も仲間に入った。
代表が霧島。中村さんは専務、清水とダニエルは常務という扱いになった。
この会議で決まったことを一応報告しておこうと思い、結城の本家に連絡した。
『おうあきら。久々だな。フイユモルトも会いたがってるぞ。』
『先週行ったばっかりですよ。でもまた近いうちに行きますね。』
『おう。で?今日はどうした。』
『実は…』
あきらはかくかくしかじかと決めた話をした。
『つきましては、一枚噛まないかと思いまして。』
『そんな面白そうな話してるのになんで俺を呼ばないんだ。』
『いやぁ、式のために式場作るなんてサプライズの方が面白いじゃないですか。』
『たしかに。
いいぞ、うちも噛む。あとで代表をそっちに送るから話しさせてやってくれ。』
『わかりました。お待ちしております。』
『あいよ。』
「ひとみちゃんの実家も協力してくれるってさ。」
「うちも大丈夫って。清水の総力を挙げて協力してくれるらしい。」
「楽しみになってきましたね。」
「あぁ。こんなにワクワクした仕事ができるのは何年振りだろうか。」
大成功を収めた2人は久々に心が湧き上がるのを感じていた。
自分のためだけでなく、他人のために仕事をする面白さを初めて感じていた。
「ダニー、成功させましょうね。」
「あぁ。もちろんだ、ヒデ。」
こうしてウエディング計画は走り出したのだった。
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