第15話

お誘いラインを送ったその翌日、結城ひとみ嬢と一緒に授業を受けた後は




「俺今日車で来てるから、車で行こうか。」


と、私の隣でちょこんと座って真面目に授業を受けている結城ひとみ嬢に伝えた。




ひとみ嬢は


「お、車?飲めないけどいいの?まぁ私はもともとお酒飲めないからいいけど。」


と返事をした。




ここでひとみ嬢について説明しておく。


彼女は酒があまり得意ではない。


ひとみ嬢と知り合った後、同じ授業を取っている仲間たちとみんなで飲み会をしたところ、ひとみ嬢は一切酒に手をつけていなかった。




話を聞くと、父はともかく母は酒が強くなく、自分もそうであろうとは思っていたが、調べてみるとアルコールに対して軽度のアレルギーを持っているらしく、酒を飲んでも得することはないとわかったためよほどでない限り飲まないと決めたとのこと。




その話を聞いたときは、ほんとかよとも思ったのだけど、たまたまその場に同席した他の女友達が、ひとみ嬢は酒を一口飲むと、すぐに両腕に蕁麻疹のような赤い斑点が出て具合が悪くなり帰宅したと言う話をしてくれた。

その話を聞いたときには、人によって体質があるから大変だなぁと思っていた。





ひとみ嬢の了解の返事を聞くと



「1人で飲んでもお互い楽しくないし、そもそも私は酒好きじゃないからね」




と返事をした。




そんな世間話をしていると駐車場に着き、私はいよいよ車の鍵を開けた。




「俺の車これね。乗って乗って。」




何でもないようなふりをして、結城ひとみ嬢に乗車を促した。




「え、でっか!てか、いかついなぁ!あの噂になってた車って霧島くんの車だったのね」



私から乗車を促されたひとみ嬢は

そう笑いながら返事をし、楽しそうな様子を隠さず車に乗った。




「中も豪華やねぇ。しかも意外に綺麗に乗ってるね。」


ひとみ嬢は車の中を見回し、そう感心していた。




「意外にとは失礼だな。てかあんまみんなよ恥ずかしいから。


こう見えても自分の道具は綺麗に大事に長く使う派なの。」




「車の乗り方とか、車の中って、その人の人となりが出るよねー」


ひとみ嬢はからかうような口調で霧島との会話を楽しんでいた。




「せいぜい失望されないように、丁寧な運転を心がけまーす。」




ひとみ嬢は、それでよろしい。と満足げな返事を返し、二人を乗せた車は出発した。



ここでひとみ嬢について補足説明をしておく。




ひとみ嬢は一言でいうならかなりの美人である。話を聞くと芸能事務所にスカウトされた回数も一度や二度では効かないらしい。




そして背が割と高い。身長はだいたい160cm後半といったところで、霧島とは20cm弱ほどの差がある。ちなみに霧島は183cmと高身長だが、猫背のためそれほど圧迫感はない。




さらに、胸が大きい。服を着ていてもその大きさがわかるほど胸が大きい。本人はそのことがコンプレックスであるらしく、胸の大きさがわかるような服を着ることは少ない。背の高さも相まってか、胸が強調されることはほぼないが友人の清水曰く、最低でもFはあるとのことである。




そのような高スペックをお持ちの結城ひとみ嬢は、自分の容姿の見せ方をよくわかっており、派手な装飾の服装を好まず、シンプルな服装をしている。






以上のことから結城ひとみ嬢はさぞかしモテるのだろうとお思いだろうが、その推察は100パーセント正しいとは言えない。




たしかにモテるし、人付き合いもいいが誰かと付き合っている、誰かと付き合ったという話は霧島も清水もきいたことがない。


自称阪大の情報屋の清水でさえ聞いたことがないというとおそらく本当に誰とも付き合ったことがないのだろう。




清水曰くおつきあいをお断りするときの決め台詞は毎回、「気になっている人がいる」とのことであるらしく、清水はその結城ひとみ嬢の気にしている人が誰なのかを探すことに躍起になっているようだ。




私は清水が話していた、この話を思い出しながら、阪大のマドンナ結城ひとみ嬢を助手席に乗せ和食店に向かっていた。




「そういえば今日行くのはなんて名前の店?」


ひとみ嬢にそう問いかけられた霧島は




「いわいっていうお店だけど知ってる?」


と答えた。




「知らないなぁ。でも多分、店の名前に店主さんが自分の名前使うってことは自信あるんだろうね。」とひとみは霧島に返事をした。




「そう考えたことはなかった。笑


でも、たしかに自分の名前だろうし、そうなんだろうな。俺も相当期待してる。」




そう返事をした私に結城ひとみ嬢は満足げに頷いていた。



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