第17話

家に帰る帰りの車中でひとみは霧島に尋ねた。




「せっかく恋人になったんだから呼び名変えてもいい?」




私は運転しながら答える。


「お、いいねぇ、なんかアイデアある?」






「きっくんとか?」




「バカにしてる?」




「うそうそ。


じゃああきらくんって呼んでもいい?」


ひとみは、私の下の名前であるあきらという名前で呼びたいようだ。




「その呼び方初めてだわ。


大歓迎よ!じゃあ俺もひとみちゃんのことひとみって呼んでもいい?」




「いいねぇ、いいねぇ!!私彼氏できたことないからその呼び方新鮮!!!」






結城ひとみ嬢はしれっと大きな爆弾を投下してきた。






「嘘!?!?できたことないの!?!?こんな見た目しときながら?!?!」




「私中高一貫の女子校の私立で、大学は京大目指してたからそんな暇なかった。


言い寄ってくるやつはいくらでもいたけどね。


結局受験の時はビビってワンランク落として阪大入ったんだけどね。」




「あったまいー…すごーー…。


でもそれなら仕方ないかもな。」




「でしょ?


んで大学入って、生活にも慣れてらちょっと物足りないかもなーって思ってた時に霧島くんと出会って、この前なんかすごいこと質問してたじゃん?


それきいて、あ、この人頭いいと思って仲良くなりたいなって。」




私はロレックスに心から感謝した。




「なるほどねー。


あ、ひとみ家まで送るけど、家どの辺?」




「さらっと呼び捨てにすんなし、照れるじゃん。」




ひとみは照れながら霧島に家の住所を教えた。




「ごめんごめん。


かしこまって言うのもなんか恥ずかしいから。


なんか、いいね、こういうの。」




「なんかきもい。」




そんなやりとりをしてるとひとみの家に到着した。




「めっちゃ豪華じゃん…。」




「別に私が建てたわけじゃないし、親がすごいだけよ。


ほんと親にはご迷惑おかけしてますって感じ。」




「金銭感覚しっかりしてそうだし、価値観も俺と合いそうだな。改めてこの子が彼女になってくれてよかった。」




霧島はそう思い、しっかりしてるなぁと感心していた。

「いや心の声全部出てるから。」


「えっ。」


「えっ?」


どうやら全部出ていたらしい。



「じゃあ今日はありがとうね、あきらくん!


また明日学校で!!」




「はい。」


それはもう私は満面の笑みで、デレデレしながらひとみに答えた。




「その顔キモい!


じゃあおやすみー!」




「おやすみなさーい」




ひとみを送った後、自らの家に向かう道中で、




「なんだかんだでひとみと付き合うことになってしまった。まぁこれで夏の予定は決まったし文句なしだな。ありがとうロレックス。」




と心の中でつぶやいていた。




しかし、またロレックスが輝くかと思ったが、今度はロレックスは輝かなかった。






「ロレックスが、光らないってことは運じゃないってことなのかな…?」


また新たな疑問も生まれたが、

まぁでも何にせよ感謝をすることは大事だから感謝をしておこう。




私はそう結論づけて帰宅した。




「家に帰ると、人生何があるかわからんな。」などと考えつつ、風呂に入り就寝した。



~~~~~~~~



結城ひとみ嬢と付き合うことになった翌日、大学に行くと、自称阪大の情報屋清水に捕まった。






「ときに霧島くん。何か私に隠し事があるのではないだろうか」




霧島は心当たりがありすぎて挙動不審になってしまった。




「え、あ、え?なんのこと?え?」




「ネタは上がっとっちゃん。心当たりがあろうもん。」




自分の胸に手を当てて聞いてみたが、心当たりといえば昨日のことしかない。


「えっとー、結城ひとみちゃん?」




清水の顔が険しくなる。




「認めるっちこつでよかね?


まだあるやろ?」




霧島は恐る恐る切り出した。


「車…?」




顔がさらに険しくなる清水。


「そいも認めるっちこつでよかね?」




「…はい。


てかなんで清水そんなに情報早いんだよ!!」




途端に清水は得意げになった。


「阪大の情報屋なめたらいかんってことたい。


ていうか車は多分お前のやろなって思いよった。


で?なんか言い残すことは?」




「車に関しては、うまいこと、なんとか話が広まりすぎないようにお願いします…」




清水はニヤニヤしながらこう言った。


「まぁ俺らの仲やけん、その件に関してはうまいことしといちゃー。」




感極まって清水にすがりつく。




「清水さん…!」




清水は霧島を払いのけると


「気持ち悪いったい。


そがんばれたくなかったら、最初から俺にいうとけばよかったっちゃん。なんで言わんかったとや?」


と言った。






「いや、あんまり詮索されても俺も言いにくいし、お互い変な感じになるかなって」






「どーせ株かなんかで当てたっちゃろ?」






「鋭すぎるやん。なんで?」






「そもそも俺らみたいな大学生が車買うほど儲けるとか株くらいしかなかろうが。

最近なんか社長と知り合ったっていいよったやん。それでなんか教えてもらったんかなって。」






「まぁそんなところよ。法的にグレーだからあんま言いたくなかったんよ。」

まぁ実際にはグレーでもなんでもなく、勘で買った株がたまたま当たっただけなので圧倒的にホワイトなのでがそうぼかしておく。

それにしても清水の推理力はすごいな。





「まぁそんなとこやろな。そんなことより結城さんよ!


なんでそんなことになっとーとや!?!?!?」






ひとみの話を思い出した清水は突然ヒートアップした。






「いや、なんか、向こうが興味持っててくれたらしくて…。


そのよく断り文句に出てた例の『気になる人』って俺のことだったみたい。」



私がそういうと、清水はなるほどねと言った感じで




「やっぱりそーったいねー。


結城さん見よったらわかるもん。


まぁ俺は貧乳派やけん結城さんに興味ないけど。」


と。



清水は貧乳派らしい。こいつとは一生分かり合えないかもしれない。と霧島は思った。




「知ってたんなら教えてくれよ!」




「いや、そういうのって情報得てするものやないやん?」




「まさにその通りで…。」


正論を返されぐうの音も出ない。






「まぁ、上手くやれや。


俺は応援しといちゃー。


困ったことあったら格安で相談乗っちゃーけん、またね!」




「ありがとう清水…!」


今後清水との付き合いは長く続いていくのだが、

この時ほど清水のことをかっこいいとは思ったことはないの秘密である。






私は清水と一通り茶番を演じた後自分の授業に向かった。


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