第65話

三日目の朝がきた 。


昨日と同じ、とても清々しい朝だ。

寒いので息を鼻から主追いっきり吸うと鼻の奥がジーンと痛む。




「あきらくん、おはよう。」




「おはようひとみ。」




2人は朝の挨拶をすると早速着替え始めた。




「私たちって、朝に強いよね。」


「なんで?」


「だっておはよって言ったら、もう、すぐ行動するやん?」

言われてみると確かにそうか。

寝起きが良い二人だと思う。



「まぁそうだね」


「それってなんかいいよね。」




「なんだそれ。」


朝から2人はいつも通りのテンションで会話を楽しんでいた。

準備が終わると、朝食のバイキングを楽しみにしながら、2人はオールデイダイニングに向かった。




「今日はバイキングなんだね!」




「そうだね。なんかすっごい美味しいらしいよ。

みんなオススメしてた。」




「へぇ、そうなんだー。」

今日は何しようかという話をしていたらすぐに朝食会場についた。

「とうちゃーく!」

「着きましたー!!!」




朝食会はwild flowerというオールデイダイニングスタイルのレストラン。

雰囲気も何もかもイギリスの田舎っぽくてかわいい。

なんか友達の家に来た感すらある。



「ほんとイギリスの洋館みたいな作りだね。」


「俺こういう雰囲気超好き。」




「知ってる。私知ってるよ。マカオのカジノもこんな感じに作り変えてるの。

今はまだ一部みたいだけど、お客さんの反応次第で全部作り変えるか新しいの作るつもりなんでしょ。」




「な、なんでそれを…?」




「知ってる?私あきらくんの秘書なんだよ?」




「それはそうだけど…」




「ま、改装済のエリア、お客さんとかスタッフから評判良いから良いんだけどね!」


「怒られるのかと思ったわ!!!」


朝から変な汗をかいた霧島だったが、気を取り直して空いている席に案内されるのを待つ。

ほとんど待つこともなく、窓際の外が見える席に案内された。




「景色よくて良いね。」


「ほんとね。とりあえずご飯とりにいこ!お腹ぺこぺこ!」


「そうしましょ。」




2人はナプキンで離席中の合図だけ残して料理を取りに行く。




「種類めっちゃ多いね!!!興奮してきた!!!!」


「ひとみ、落ち着きなさい。」


「はっ…!!!」




正気に戻ったひとみと仲良く料理を選んで、お皿にとっていく。




「種類めっちゃ多いね。」


と、霧島がつぶやくと


「うん、すごい、フルーツもたくさん!」


と、ひとみ。


似たようなことを思っていたらしい。


「全制覇は難しいかもしれない…。」


「2人で全制覇でもきついかも…。」


美味しそうで、たくさんの料理を前に、自身で食べる量をコントロールできるかが心配な2人であった。








「「満腹だ・・・。」」


結局、朝から動きにくくなるほどの量のご飯を食べてしまった2人は、少し食休みしようということになった。




「今日どこ行く?」




「スキーもいいけど、ビレッジの方のお買い物とか行ってみようよ!」




「それ良いね。ビレッジまでは歩いて15分くらいらしいけど、どうする?」




「歩いてみようよ!」




「よっしゃ、わかった。」




今日の予定をざっくりと決めた2人は、少し体が動きやすくなるまで益体もないことを話し続けた。




「じゃあ、そろそろ行きますか。」


「りょうかーい。」




2人は一度部屋に戻って、持ち物を準備してホテルを出る。




「ホテル出て左の道をずっと行くとビレッジらしいよ。」


「へぇ、そうなんだね。」




2人は手を繋いでビレッジの方へと向かう。


道中は雄大な山々とヨーロッパ調の建物が、異国情緒を更に引き立てる。


目に映る一つ一つの映像が気持ちを盛り上がらせる。




「はい、着きました、ウィスラービレッジ!!」

私は大げさに到着を宣言する。




「おぉー!!!エキゾチック。」




「「エキゾチーーーック」」




「カナダだけどね。」


「そうだね、ジャパンではない。」




「まずどこいく?」


「片っ端から面白そうなとこ全部行く。」


「俺もそれ良いと思う。」




2人は爆買いするようだ。




まずは手始めに、ヘリーハンセンに入った2人。


アウトドア用の服やギアがよく揃う。


日本では見たこともないような珍しいものもたくさん置いてあり、2人のテンションはうなぎ登り。


私はスキーウエアにも使えそうな防水の派手なアウターと、アンダーウェアを三枚、パンツもセーリングで使われるようなあたたかいものとスキーウエアとして使える防水パンツ、冬用の厚手の靴下などなど、合わせて4000ドルあまりを使用した。アウターが一番高かった。




会計はもちろんダイナースクラブプレミアム。

北米ではダイナースがちゃんと使える。




「結構使ったね。あきらくん。」




「そういうひとみこそ。」


ひとみもアンダーウェアや、靴下、ニット帽などたくさん買い込んでいた。




「夏物も買った?」


「夏物も買った。」


「俺より買った?」


「俺より買った。」


「じゃあ人とのこと言えねぇじゃねぇか。」


「バレてしまった!」




お店の人の厚意で、買ってしまったたくさんの荷物をホテルに送ってくれることになった。

感謝の意味を込めて、チップをさらに多めに払っておいた。




「次はお土産屋さん行こうか。」


「よっしゃ。」




2人は手当たり次第お土産屋さんに入り爆買いを繰り返し、現地から宅配を依頼した。


酒、お菓子、服、置物、人形などなど。


最終的に送料込みでトータル5万ドルほど使った。


会計はもちろんダイナースクラブプレミアム。


なんだかんだ言ってダイナースの使用頻度が一番高いのかもしれない。


ダイナースにはANAのスーパーフライヤーズも付帯させており、何より券面がカッコいい。


カードが家に来たばかりの頃は何枚も持って眺めて悦に入っていたが今はカードも数枚しか財布に入れていない。






親や、マカオのメンバー、ロレックスをくれた中村翁には特に多めにお土産を送っておいた。特に中村翁には感謝を絶対に忘れてはいけない。




「今度の誕生日、両親には旅行券でもプレゼントしよう。」

なんとなくそんなことを思った。




「店の商品少なくなっちゃったね。」


「まぁそういう日もあるだろうよ。」


「うん、そうだね。」




2人は、少し小腹が空いたので、cowsのアイスクリームを食べに店に入った。




「ここが、赤毛のアンが世界一と評したcowsです。」


「赤毛のアンってそんなこと言うのね。」




「難しくない話だから読んでみるといいよ。」


「帰ったら読んでみよう。」




「なんの味にする?」


「バニラで。」


「じゃあ俺チョコレート。」




「あとではんぶんこしよ?」


「いいでしょう。」




2人はアイスクリームを受け取ると店の中にあるちょっとしたイートインスペースに腰かけた。




するとTシャツがたくさん売られているのが目に付いた。




「みて、あきらくん、牛舎のアン」




「ぶふっ!!」




「これシャレ効いてていいやん!!買おう!!!」


「俺も買う!」




2人とも、パロディTシャツのMサイズを全種類買って日本でばら撒くことにした。

少しお茶してからはゆっくりと回ることにした。




年が明けて、春が来ると大阪本町の新居は完成し、いよいよ入居することになる。

車庫証明も最初に登録した実家から、家の近くの駐車場に、そして車が二台になった時には、ひとみの家にちゃんと移してあるがまたすぐに新居の駐車場に移さなければならない。


大変面倒なことであるが仕方がない。




入居するにあたっての家具の選定は既に終わっているが小物類はまだまだである。

そこで、せっかくなので皿やコップ、カナダらしいかわいらしいものをひとみと選ぶことにした。




いろいろと意見の衝突はあったが、最終的に、木でできたおしゃれなお皿と、cowsのコップで決着が付き、先ほどのcowsにまた戻ることになった。




「そろそろいい時間ですね。」

と、ひとみ。




「ホテル帰りましょか。」

私がそう返すと、ひとみはだいぶ歩き疲れた様子で、頷いた。




「今から歩くのめんどくさいからシャトルバス乗りませんか。」


「賛成。」




ビレッジを出てすぐのところで、シャトルバスに乗り、ホテルに帰ると、すぐにドアマンがやってきて荷物を部屋まで持ってくれた。

とても疲れていたのでありがたい。

チップは弾んでおいた。






「あーーー、疲れたーーーん」




「疲れたねーーー。」




「シャワー浴びてゆっくりしよ。」




「スパ行ってきたら?」




「それいいね!!行ってきてもいい?」




「もちろん!案内するよ。じゃあ俺はその間バーにいるね。」




「ありがとう!!」




2人は手を繋ぎながらウキウキしつつ、スパに向かう。






「着きましたー。」




「おー!!」




「ちょっと話つけてくるから中で待っててね。」




「はーい!」






「こんばんは。今から1人、うちの奥さんの施術をお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」




「もちろん。宿泊のお客様ですか?」




「そうです。」

そう言ってルームキーを提示する。




「ありがとうございます、霧島様。




それではコースはいかがされますか?」




「コースはとりあえず最高のコースで。時間は本人が満足するまでしてあげてください。


でも、施術が終わる30分前くらいには部屋まで連絡してください。


あと。料金はお部屋につけといてください。」




「かしこまりました霧島様。」




「おねがいします。」




話をつけてひとみのもとに向かう。




「話ついたよ。ゆっくりしといで。」




「わー!ありがとう!!!


じゃあ行ってくるね!!」




「もっと綺麗になって来いよー」




「任せてー!」




最高のコースでひとみがどんな反応をするのかが楽しみであった。


何時間かかるかわからないのでバーに行くとは言ったが、とりあえず部屋に戻った。


終わる30分前には連絡してくれるように伝えておいたので、終わる頃に迎えに行くことにする。




どんな完成形になるか、わくわくが止まらない。

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