第12話 霧島 大きな買い物をする。

税理士さんの指示通りの書面を集めて、奔走を続け、

無事会社も設立することができた。


継続して株式投資を続けていた私は一ヶ月ほどで、総資産50億円を突破した。






「一カ月で運用資金が100倍とかもう理解できない…」

運用高を見て私は、もう理解することを諦めていた。




そこまでいくと、もはやただの数字の羅列にしか思えないので、5億円ほど現金化し銀行口座に預け、残りの45億円と端数は長期で運用する株式ということにした。




中村さんと出会ってから一ヶ月と少しがたったある日、私は梅田に来ていた。

もちろん車を買いに行くためである。






「いよいよ資金も50億円を突破したし、そろそろ引越しと車だな。」

そう考え、五月の終盤のある日曜日である今日、満を持してカーディーラーに来たのだ。




かねてより車のことを考えていた頭の中はもう車のことでいっぱいだった。




大学生が乗ってても、大きく顰蹙を買うような車ではなく、なおかつ、自身の趣味に合致する車となると、ほぼほぼ車種は限られてくる。






そこで考えたのは、まずメーカーで絞ること。


そうなると

メルセデスベンツ、BMW、アウディ、レクサスの四つに絞られた。


その中から一つを選ぶことに大変苦労したが、とうとう決めた。

思い立ったが吉日とばかりに大阪市中央区のあるメーカーのカーディーラーを訪れていた。



「ついに来たな。」

目の前に輝くショールーム。

自身の目に美しく映るLEXUSの文字。



そう、私が決めたメーカーはレクサス。

それもSUVのフラッグシップLXシリーズの570である。




トヨタのランドクルーザーの輸出モデルがこの車の祖であるが、私はその無駄に大きな車体に心が惹かれ、購入を決意した。




ちなみに、今日はレクサスの店舗を訪れる前に、ちゃんと店に連絡しており、LXの試乗車を用意してもらっている。






店に着くやいなや販売員の方に、電話で連絡しました霧島ですが。と伝えた。




「か、かしこまりました。霧島様でございますね。」

少々驚いて慌てたような店員さんに申し訳なさを覚える。



「こんな若造がレクサス様の店に来てしまってすいません。」


と内心で恐縮していたが


対応していただいた、レクサスの販売員の方は、最初こそ驚いておられたものの、すぐに持ち直し懇切丁寧に解説してくださり、私は素直にありがたいと感じていた。



ややあって担当営業の方がやってきて、どんな車なのか、懇切丁寧に教えてくれた。



「以上がレクサスLXの説明でございます。」

もちろん試乗はしっかりと済ませた。

思たよりもよほど運転しやすいことに驚いた。





「じゃ買います。現金一括で買うので、オプションサービスして下さいね?」




試乗の際に、担当してくれた営業の方と打ち解ける事ができ、このレクサスという店に非常に好感を持っていた。


販売員にも多少のフェイクをこめつつどうしてこの若造がレクサスを買うに至ったのかを説明しており、それを聞いた営業さんからは尊敬の眼差しを送られていた。




「はい、かしこまりました霧島様。それではすぐに手続きいたします。」



この時私は知らなかったのだが、どうやら車を購入するとき、車庫証明というものが必要らしい。

確かにどこで保管してどこで運用する車なのか証明する必要があるのは間違いない。


ちなみに私は車庫証明など、全ての実家の住所で登録した。

なので一旦は実家で車を運用することになる。

もちろんこちらで新しい車庫を契約したら車の登録を変更して、正しい居住地に戻すつもりである。




こうして、私は納車まではまだ日があるものの新たな足を手に入れた。




私は車を購入した、その足で、大阪にマンションを購入するためにショールームに向かった。

読者諸兄には、ご存知の方も多いと思うが、レクサスLXとは、かなりでかい車である。




おそらく、国産車の中でトップクラスにでかい。




まず普通の立体駐車場に停めることはできない。




そのこともあり、とりあえず大阪で一番高級なマンションのショールームに来た。

車がちゃんと止められて、新大阪にアクセスが良く、住みやすい設備の整った家に引っ越したいから。




ショールームにつくと

もともと内見を予約していたということもあり、スムーズに案内される。



そこには実際の間取りと同じ広さのモデルルームが用意されており、

販売員のセールストークを聞き流しつつ、立地や価格、広さなどは申し分ないということを改めて実感する。




「ほんの一ヶ月前はまさか自分がこんなことになるなんて思いもしなかったなぁ」

というありきたりな感想を胸に浮かべつつ、改めてしみじみと実感する。




「生意気なことを言って申し訳ないんですが、駐車場の広さはどれくらいのものですか?」



「とんでもありません、霧島様。当マンションは大規模な自走式の地下駐車場を備えており、ランボルギーニやフェラーリ、ロールス・ロイスなど、おそらく全ての車が駐車可能です。」




「(レクサスLXごときで、うちでかい車なんですよみたいなドヤ顔晒してすいませんでした)なるほど、ここにします。」




「はい、かしこまりました霧島様。すぐに手続きの書類をお持ちいたします。マンションの完成は来年3月を予定しておりますので、入居予定日はまた追ってご連絡差し上げます。」




こうして私はとうとう大阪に家を購入した。


もちろん現金一括で会社名義の事務所兼自宅として買うので、ローンの審査などはない。

ニコニコ現金一括払いの男。






「レクサスは最近人気ってこともあって早くても数週間くらいで納車って聞いたからとりあえず、それまでは我慢だな。」

またワクワクする楽しみができたと思い、早くも期待に胸を膨らませている。






せっかく大阪の難波のあたりに来たということもあり、なんだか久々な気がして、買い物をして帰ることにした。




といっても、実際にはこれといって特に欲しいもののないため、結果として何も買わずに家に帰宅することになるが、それがわかるのはもう少し後の話。




家を購入したので、家具やら食器やらを物色したいと思って、店をめぐるが、よくよく考えてみると入居は来年のため、今買ってもしょうがないなと思いとどまり、近くのカフェや、セレクトショップをめぐり時間を潰すのであった。




途中の本屋で買った車の雑誌を眺めながら、レクサスをどんな風に自分の快適空間にしようかと、ニヤニヤしながら思いをはせる。


周りから見れば、不気味極まりないが、それを注意する人はどこにもいない。






そうこうしているうちに夕方を過ぎ、霧島は難波で食事を済ませ自宅に帰った。


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