第131話 2034年1月中旬頃〜



 澄んだ陽の光がさしている。見上げると雲ひとつ無い青々した空の中を小鳥たちがピッピと囀りながら飛んでいる。

 視線を戻すと、中世を思わせるような平穏な町並みが続いており、そこを幸せそうに人々が歩いている。


 日用品を売る露店や串焼きやもつ煮込みの様な食べ物などを売る露店など様々な店が並んでいる。


「……千葉とは、大違いだな。」


「……秋田とも……全然違う。」と春香さん。


「2人共そんなにテンション下げなくても良くない!?ここでくよくよしてても仕方が無いし、前向きに考えましょう!」と夏。


 俺、春香さん、夏の3人で並んでガマズミ町を歩いている。俺達だけではなく、前後には配下達も歩いている。


「確かにそうだが、まざまざと違いを見てしまうと、過去の千葉の事を思い出してしまうよ……。小中学生の頃の……」俺の記憶は、引きこも……インドアになる前の体験だよな。


「小中学生の頃って……いつの記憶よ。まあ…それは良いわ。それにしても、ここ1ヶ月程来れなかったけど、本当に町並みは変わって無いわね」と夏。


「俺の話は良いのかよ…。まあ、確かにキーシャ達からモンスターの侵略が本格的にあったと聞いていたが、全然そんな感じがしないな。」


「そうそう。キーシャさん達からは、ガマズミ町に私達以上の数のモンスターが押し寄せたと聞いているわ。それを金板(上級)冒険者達が主体となって退けたのよね…。多分、冬夜以上の実力を持っているわよ」と夏。


「それは、そうだろうな。今回のモンスターの襲撃は、上手く策を立てて、且つ、ジーニャ達の力を借りたから、ほぼ無傷でモンスター達を退けられただけだからな……。ガマズミ町を守った冒険者達がどの程度の数いたかは不明だが、少人数で数百ものモンスターを退けるのは容易じゃないはずだ。」


「……私達の拠点(秋田の事)は、他拠点と連携が取れてた。けど……数の暴力には敵わなかった……」と春香さん。


 春香さんの頭をポンポンと軽くヨシヨシした。


「忘れろとは言わないけど、今は俺達と一緒だから大丈夫だよ。安心していいよ」


 ニコッと微笑むと、春香さんの顔がちょっと赤くなって、伏せてしまった。


「冬夜……あまり、変なことしていると秋実さんが……」と夏。


 何故か、夏が怒っているようだ。


「冬夜は優しいだけ。変なことはしてない、はず……」と春香さん。


「そこは、変なことしてないって、言い切ってよ!!」


「やっぱり、イヤらしい目で春香さんを見てるんじゃないの!?」と夏。


「そ、そんな訳あるかい!確かにだと思っているけど、その前に春香さんが俺のことなんて相手にしないだろう」


「……そんなことは無い」春香さんが囁いたが聞こえなかった。


「!!……い、いきなり、美人とか変なこと言わないでよ」と夏。


 夏もちょっと顔が赤くなって……る?両手の平を両頬に当てて、ちょっとクネクネしてる……夏も意外とかわいいな。


 ガマズミ町でダンジョンに関しての情報収集を始める前なのにちょっと変な雰囲気になってしまった。



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